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シュッピン Research Memo(5):当面のゴールである売上拡大のためのプラットフォーム完成に大きく近づく

2020/1/9 15:15 FISCO
*15:15JST シュッピン Research Memo(5):当面のゴールである売上拡大のためのプラットフォーム完成に大きく近づく ■中長期の成長戦略 1. 中長期の成長戦略の全体像 シュッピン<3179>の中長期成長戦略は、事業モデルの特色と合わせて理解することがポイントだと弊社では考えている。改めて同社の事業モデルの特長、強みを整理すると以下のようになる。 同社はeコマース(EC)特化型の小売企業であり、その商材は“価値あるもの”に限定している。そして、それらの取扱商材については、新品のみならず中古品の販売も行っている。 同社の事業における中古品の取扱いをどう理解し、位置付けるかによって、同社への評価が変わるだろう。中古品を取り扱うことに着目して同社をリユース事業者と捉える向きもあるが、その理解の仕方は同社の実力や価値を見誤る恐れがあると考える。同社において中古品の事業は、新品の販売を加速するためのカタリストの役割を担っているというのが弊社の理解だ。新品の販売には(一品モノが基本の中古品とは異なり)限界がないためだ。 一方、同社において、中古品ビジネスは新品のビジネスと同様に、重要な収益源かつ成長エンジンと位置付けられている。収益性(粗利益率)という点では中古品が新品をしのいでいる。また、新品のモデルサイクルの谷間を埋めて安定成長を実現する役割も担っている。中古品ビジネスは単なるカタリストにとどまらず、新品と並ぶ収益の柱と成り得るものであり、同社においては現にそうなっている。 新品と中古品のビジネスはそれぞれ特徴や収益モデルが異なる。まったく別の個性を持つ2つのビジネスを有機的に結び付け(上記のカタリスト関係と同じ意味)、全体としての収益成長を極大化させることを目指している点に、同社の事業モデルの独創性や強みがあると弊社では考えている。 このように書くと、他社にも簡単にまねできそうにも思えるが、決してそうではない。同社も創業以来、様々な施策を積み重ねて今日に至っている。ここで言う“施策”とはキャンペーンや一時的な販売促進策などではなく、収益成長のための仕組みづくりだ。すなわち、前述したように、ECの枠組みにおいて、“価値あるもの”の新品と中古品とを、化学反応させながら相乗的に収益を成長させるための施策ということだ。同社の中長期の成長戦略とは、まさにこのことにほかならない。 同社が現在取り組む中長期成長戦略の当面のゴールとして目指すのは“売上拡大のためのプラットフォーム”の完成だ。プラットフォームとは売上高を拡大するための仕組みのことで、顧客を引き寄せ、あるいは囲い込むための様々な仕組みの総称と考えればよいだろう。その具体的な取り組みの内容がOne-to-OneマーケティングやCGMマーケティングということだ。 One-to-Oneマーケティングについては、同社はここ数年、販売力強化に向けた重要施策としてその構築に取り組んできた。2018年3月期までにフェーズ3に当たる“パーソナルレコメンド”の仕組みを完成させ、一応の完成を見た。2019年3月期からは、One-to-Oneマーケティングの運用を本格させると同時に、新たなプロジェクトとしてAIMDの稼働に向けて取り組んでいる。これは収益性改善を目的としているが、中古品の買取強化策は売上拡大にも直接的につながる点で、トップライングロースへの取り組みでもあると言うことができるだろう。 CGMマーケティングでは、主力商材のカメラにおいて取り組みが進められている。現状は消費者からの画像やコメントなどのコンテンツが順調に増大・充実しつつある状況だ。具体的な進捗例として、カメラ機材購入後の愉しみの場としての「EVERYBODY×PHOTOGRAPHER.com」(略称「エビフォト」)への投稿数が2019年9月末で64,875枚と1年前の35,953枚から順調に増加していることを挙げることができる。同社自身はこのペースに決して満足しているわけではなく、定期的なフォトコンテストの実施などを通じて投稿数の増加ペースを加速させるとともに、総数のさらなる増加を目指している。こうした消費者からの画像・コメントの充実が進めば、同社が狙う“循環”が構築され、収益拡大ペースの加速に貢献すると期待される。 AIMDは開発の最終段階にあり、2020年3月期第4四半期に運用開始の見込み 2. AIMDの導入と進捗状況 AIMDはAIを活用した中古カメラの買取価格・販売価格の自動アシストシステムだ。同社は現在、人手によって買取価格・販売価格を決めている。同社の取扱品目は約20,000アイテムに上るが、タイムリーな価格決定ができているのは、一部に限られ(約400~500アイテム程度と推定)、結果的に機会損失になるケースも多い。AIMDは人手による作業をアシストするもので、適正かつタイムリーな価格決定となる品目数を増やし、機会損失を減らすことが期待される。 具体的な効果としては、まず第1に、ミスプライシング(値付けの失敗)が減少することで、中古品取引の総平均粗利益率の改善につながることが期待される。第2としては、適正価格での取引は消費者を引き付けると期待されるほか、セールや販促に際しても、最適なセール対象アイテムの選出などにより、売上の確保すなわちトップライングロースへの貢献が期待される。さらには3つ目として、優先販売在庫の選定といった在庫管理機能の面での貢献も期待される。これらの効果は、AIMDにノウハウやデータが蓄積されて精度がアップするにしたがって徐々に大きくになってくるものと考えられる。 AIMD導入のスケジュールは第4四半期(2019年1月−3月期)になりそうだ。2019年11月の時点において、ソフトウェアの開発が最終段階にある。導入後、しばらくはテストランという形での運用開始となるため、本格的な稼働は2021年3月期になると弊社ではみている。 本格稼働に入った段階でも中古カメラの買取価格・販売価格の決定のすべてをAIMDに委ねるわけではない。AIMDは自動アシストシステムであり、言わば“従”の存在だ。“主”は言うまでもなく現状と同じく担当者が担うことになる。精度の向上度合いに従って自動アシストの活用割合を徐々に高めていくことになる。こうした運用方法は、事業リスクを低減するうえでは非常に有効だと弊社では考えている。 具体的な数値を挙げると、AIMD導入後にタイムリーに価格決定されるのは2,000アイテム程度に増加すると見られる。総アイテム数(約20,000)の10分の1ではあるが現行の約5倍であり、実際の取引量を考えれば(上位10%のアイテムで取引数量・取引額のかなりの部分を占めると考えられる)、機会損失はかなり削減され、中古品取引の総平均粗利益率向上の効果は大きいと期待される。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之) 《ST》
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