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千葉銀行 Research Memo(6):計数目標をおおむねクリアするとともに、将来を見据えた基盤作りでも大きな成果
2017/8/3 15:29
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*15:29JST 千葉銀行 Research Memo(6):計数目標をおおむねクリアするとともに、将来を見据えた基盤作りでも大きな成果 ■前中期経営計画の総括 千葉銀行<
8331
>は、2017年3月期を最終年度とする中期経営計画「ベストバンク2020−価値創造の3年」に取り組んできた。先進性のあるサービスで個人や中小企業を始めとした地域の顧客に、最高の満足と感動を提供する「リテール・ベストバンク」グループの実現のため、「新たな企業価値の創造」、「人材育成の一層の充実」、「持続可能な経営態勢の構築」の3つの課題を推進。マイナス金利政策の導入など想定外の影響を受けたが、計数目標をおおむねクリアするともに、将来を見据えた基盤作り(戦略的アライアンスの締結、新たな価値創造への布石など)でも大きな成果を残すことができたと評価できる。 1. 計数目標 最終年度である2017年3月期の目標として、「親会社株主に帰属する当期純利益570億円(当初目標500億円)」、「貸出金残高9兆円程度」、「預金残高11兆円程度」、「グループ預かり資産残高2兆4,000億円程度」、「連結ROE6%台」、「連結普通株式等Tier1比率13%台」を目指してきた。その結果、「グループ預かり資産残高」、「連結普通株式等Tier1比率」が未達となったが、その他の項目では計画を上回る結果となった。特に、マイナス金利政策の影響により貸出金利回りが大きく低下するなかで、「中小企業向け貸出金」や「住宅ローン」などを中心に「貸出金残高」を伸ばしたことや、「役務取引等利益」の強化により収益の落ち込みをカバーしたところは高く評価できる。一方、「グループ預かり資産残高」が伸び悩んだのは、株式相場の低迷により投資信託が減少したことが要因である。また、「連結普通株式等Tier1比率」が若干未達となったのは、貸出金残高の拡大や株主還元の強化などが影響したものであり、健全な水準は維持している。 2. 主要施策の成果 (1) 法人取引 事業性評価に基づく取引先の本業支援※1を軸とした活動により、中小企業向け貸出金残高は4兆1,416億円(3年間の平均伸び率7.0%)と計画を上回る結果となった。また、年間融資新規件数(5,075件)や設備資金融資実行額※2(4,101億円)でも過去最高を更新した(2017年3月期実績)。 ※1 事業性評価に基づく融資を行っている与信先数は10,380先(2016年3月末)と地銀トップレベルにある。また、帝国データバンクによるメインバンク調査では、同行をメインバンクと回答した企業数は2万社を超え、調査開始以来8年連続で地方銀行の1位を記録している。 ※2 1億円以上の設備資金融資(統計を開始した1998年以降)。 また、地方創生に向けた取り組みとして、2015年より取り扱いを開始した「地方創生融資制度」や「地方創生私募債(みらいはぐくみ債)」※でも多くの実績を上げ、貸出金残高や法人ソリューション関連取引収益(役務取引等利益)の拡大に貢献してきた。 ※発行企業が支払う手数料の一部で物品を購入し、発行企業が指定する学校等に寄贈する仕組みとなっているもの(2016年6月から200件/201億円の実績) (2) 不動産賃貸業向け貸出 中小企業向け貸出金残高の約48%を占める不動産賃貸業向け貸出も好調に推移している。同行の場合、賃貸物件に対する融資取引については、従前より事業者向け貸出※1として取り扱ってきたところに特徴がある。すなわち、融資実行後も入居率や収支の状況をモニタリングすることでデータベースを蓄積し、それを与信判断やリスク管理に生かせることが強みとなっている。その結果、同行の融資対象物件の入居率は、政府公表の都道府県平均値※2を上回っており、デフォルト率も低い水準※3にある。 ※1 他行の場合は、アパートローンのような制度融資にて対応し、融資実行時の入り口審査しか行わないのが一般的である。 ※2 総務省「住宅・土地統計調査」(2013年)より推定。 ※3 同行の不動産賃貸業向け貸出金のデフォルト率は0.09%(貸出金全体のデフォルト率は0.69%)と圧倒的に低い水準にある(2017年3月期実績)。 (3) 店舗戦略 マーケットポテンシャルの高い東京23区を「戦略的営業地域」※と位置付け、積極的な営業展開を行ってきた(店舗数も14店舗に拡大)。最近では、池袋、恵比寿、品川エリアに拠点を新設。新設店舗の貸出残高合計は793億円にまで増加している。 ※金融ジャーナルによると同行の東京都における貸出金シェアは約1.0%(2兆円)と推定されている(2016年3月末)。市場全体の大きさに比べると拡大余地は大きい。 (4) 住宅ローン 好調な外部要因(千葉県におけるマンション供給戸数の伸びなど)及び内部要因(インターネット受付など利便性の向上など)により住宅ローン実行額は順調に増加傾向にあり、2017年3月期は過去最高を更新している。住宅ローン残高も3兆2,817億円(3年間の平均伸び率4.4%)と計画を上回る結果となった。 (5) 無担保ローン 適切な審査態勢の構築や顧客ニーズへの対応により、教育ローンやマイカーローンなどの無担保ローン残高も1,263億円(3年間の平均伸び率17.9%)と計画を上回って大きく伸びた。 (6) グループ預かり資産 グループ預かり資産残高は2兆100億円(3年間の平均伸び率0.8%)と増加したものの、計画には届かなかった。株式相場の低迷により投資信託が減少したことが要因。ただ、預かり資産専任担当者の設置やタブレットを活用した営業手法の変革、ちばぎんラップの取扱開始など、初心者でも取引しやすい商品や環境の整備を進めており、体制面では今後に向けて成果を残すことができたと言える。 (7) グループ会社 グループ会社との連携強化による総合金融サービスの充実を図ってきた。特に、ちばきん証券では紹介型仲介業務における金融商品販売額が881億円(3年間の平均伸び率19.5%)と計画を上回ったほか、ちばぎんアセットマネジメントの運用残高も684億円となり、2015年2月に投資信託委託業務へ参入以降、着実に伸びてきた。 (8) 信託・相続関連業務 相続・資産承継・事業承継ニーズが拡大するなか、地銀では唯一取り扱いが可能であることの優位性を生かし、信託・相続関連業務も大きく成長している。相続関連業務の年間取扱件数は878件(3年間の平均伸び率43.4%)、関連収益でも478百万円(同48.8%)と順調に伸びてきた。遺言信託受託先の資産規模※でも2,227億円(同33.5%)に拡大している。 ※期末までに受託した先の資産規模(既に執行済のものも含む)。 (9) 国際業務 地銀最大級の拠点網や現地金融機関との提携等により、貿易取引の支援や海外の最新情報の提供、販路拡大を目的とした商談会の実施など、顧客の海外ビジネス拡大を積極的にサポートしてきた。また、武蔵野銀行やTSUBASAアライアンス加盟行からのトレーニー受け入れも行っており、戦略的アライアンスにおいても重要な業務となっている。 (10) 働き方改革・業務改革 急速なデジタル化の進展やライフワークバランスへの意識の高まり、将来的な労働力不足等を見据え、働き方改革による長時間労働時間の是正や生産性向上にも取り組んできた。2016年9月には、「次世代営業店モデル」の実証実験を開始。タブレット端末等を活用することで、顧客の利便性を高めると同時に、店頭及び後方の事務量削減を目指している。2016年10月には、ITを活用した業務の抜本的な見直しやワークスタイル変革を進めるため、「働き方改革推進部」を設置した。 (11) フィンテック 将来に向けた布石として、フィンテックを活用したサービスの開発や実用化にも取り組んだ。2016年7月にはフィンテックの調査・研究のための共同出資会社「T&Iイノベーションセンター」※を設立。TSUBASAアライアンス加盟行との連携により、地域の抱える様々な課題をフィンテックの活用により解決に結び付けることを目的としたビジネスコンテストを開催するなど、実用化に向けた検討を進めている。 ※出資比率は同行40%を筆頭に、第四銀行、中国銀行、伊予銀行、東邦銀行、北洋銀行、日本IBMが各10%となっている。 (12) 戦略的アライアンス 基幹系システムの共同化に向けた「TSUBASAプロジェクト」は、当初予定どおり、2016年1月より同行にて安定稼働を開始(第四銀行、中国銀行も順次導入)※。また、さらなる金融システムの高度化を目指し、2015年10月に「TSUBASAアライアンス」を発足すると、2016年7月には日本IBMとの共同出資により「T&Iイノベーションセンター」を設立し、フィンテックを活用した金融サービスの企画・開発などに取り組んでいる。また、人材交流や国際業務などにも連携分野を広げている。 ※新たに北洋銀行も本格的検討に合意している。 一方、2016年3月には埼玉県を主要な地盤とする武蔵野銀行との包括提携を締結。ノウハウ共有・共同開発、グループ会社活用、人材交流などによるシナジー創出に取り組んでいる。これまでに両行が合意した施策によるシナジー効果は、5年間累計で100億円(両行合算)が見込まれている。2017年5月には、共同出資会社「千葉・武蔵野アライアンス(株)」を設立。中長期的な戦略や組織横断的な施策などの検討を行い、両行に提言する役割を担う。 弊社では、1)ほかの地銀との戦略的アライアンスを進めたこと、2)相続関連業務や法人ソリューションなど、強みを生かしたサービスで役務取引等利益を伸ばすことができたこと、3)ポテンシャルの大きな戦略的営業地域への足掛かりを築くことができたこと、4)デジタルバンキングやフィンテックなど、今後の金融サービスを見据えた新たな分野への布石を打つことができたことについて、今後の成長性や方向性を判断するうえで非常に重要であると捉えている。特に、1)については、アライアンス各行が地域へのコミットメントを維持しながら、スケールメリットの享受(特に、基幹システムや新たなサービスへの投資等)や経営資源の相互補完によるシナジー創出が期待できる上、地銀連携の新しい形を示した点においては、大きなインパクトを残したと評価してよいだろう。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫) 《MW》
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