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ソーバル Research Memo(2):新規技術分野では、自動車と医療分野が着実に進展

2016/10/7 15:32 FISCO
*15:32JST ソーバル Research Memo(2):新規技術分野では、自動車と医療分野が着実に進展 ■2017年2月期第2四半期連結決算 (1)概要 ソーバル<2186>は、ファームウェアという、デジタル機器の性能向上に不可欠な上、参入障壁が高く、カスタマイズ性の高い特殊なソフトウェアの開発受託を主力業務にしている。同分野で数少ない上場企業でもある上、極めて高度な技術力と品質管理能力が顧客から評価され、同分野では盤石な地位を確保していると言ってよい。また、近年は、業務系やWeb系のソフト開発にも力を入れるとともに、M&A、新規事業領域にも積極的に取り組み、事業領域の多角化を着々と進めている。一方で、事業の選択と集中も進め、現在のセグメントはファームウェア及び業務系・Web系ソフト開発などのエンジニアリング事業だけとなっている。 ファームウェアの強固な基盤を一層、強化しながら、多角的な収益構造の構築を進めることによって、「安定成長の継続」を実現する。同社は非常に分かりやすい基本戦略を掲げ、これを着実に進めている。17年2月期第2四半期も、この基本戦略に基づいて運営された。 連結決算は、売上高が前年同期比7.2%増の4,008百万円、営業利益が同24.0%減の252百万円、経常利益が同28.3%減の245百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同13.7%減の173百万円と、増収減益となった。同社予想に比べ、売上高はほぼ想定どおりの着地となったものの、営業利益は15.9%、経常利益は20.3%、親会社株主に帰属する四半期純利益は12.4%の下振れとなった。しかし、予想未達の要因は、同社の基本戦略どおりの事業運営が行われた結果であり、一時的なもので懸念する必要はない。以下、売上高と利益に関して分析する。 (2)業績の分析 a)売上高 増収要因は主に以下の3点が挙げられる。 ○新規技術分野への進出 まず、新規技術分野への進出が挙げられる。新規技術分野には自動車、医療、航空・宇宙、金融サービス、ロボット(介護・災害向け)分野がターゲットに掲げられているが、自動車と医療分野が着実に進展した。自動車分野では、2015年5 月に買収が完了した、車載システム・生産ライン及び物流搬送設備の制御システム開発・製造に強みを持つアンドールが第2四半期でフルに貢献した。アンドールには、トーヨーカネツ<6369>、椿本チエイン<6371>といった大手企業の顧客もあり、新規顧客獲得という側面でも大きな効果が出たと言える。さらに、2016年3月から、日立製作所グループとの新規取引もスタートした。具体的には、自動運転に必要な統合ECUの開発及びデバック(プログラムや電気機器のバグや欠陥を見つけて修正する作業)を受注した。 医療分野は、2016年3月に医療事業推進部を20人規模で新設。最大の既存顧客であるキヤノン<7751>の眼底測定機器の付随ソフトの開発や、治験の統計解析分野(SASプログラミング)などに取り組んだ。同分野は、キヤノンが東芝<6502>から買収した東芝メディカルシステムズ(株)からの新規受注も期待できる分野と言えるだろう。 他にも、CTCより公共関連の統合管理システムの設計・開発を新規に受注した。CTCとは以前から取引があったものの、今回の受注で取引が大きく拡大した。 さらに、受注元の企業は明らかにされていないものの、I o T向けのクラウドプラットフォームの設計・開発、衛星等に関わるシステム開発・設計、ドローン搭載カメラの制御設計・開発、ビッグデータの解析・開発などを新規に受注した。 これら新規技術分野は、今まで培ってきた技術との親和性が高い上にこれから市場拡大が見込まれる分野ばかりであるメリットがある。ただ、市場拡大が見込まれるからこそ、ライバルも少なくない。例えば、自動車の自動運転関連では世界中で開発競争が激化しており、米国グーグルも日本勢にとって大きなライバルになると想定される。したがって、同社では、大手企業を顧客にし、しっかりと手を組みながら事業拡大を進めるとともに、足元では利益よりも技術の着実な蓄積に取り組む姿勢を取っている。 これら新規技術分野が売上高に占める割合は明らかになっていないものの、増収への貢献のほかに、同社が経営課題の1つに掲げる特定顧客への売上依存を解消するのに大きく貢献している点は明確になっている。新規顧客の獲得が進んだ結果、取引金額が上位5位以下の「その他」の顧客からの売上高比率が前期末比5.0ポイント増の22.9%に拡大した。ソニーグループの比率も同1.1ポイント増の11.9%となった。一方、受注額トップのキヤノングループは同5.0ポイント減の53.4%と過去最低となった。ただし、キヤノングループからの受注金額の絶対額はほぼ横ばいで、取引規模が減少しているわけではない。新規分野の取引先の増加で比率が低下しただけである。 なお、取引先3位の富士通<6702>グループは前期比0.9ポイント減の8.9%、4位のNTT<9432>グループは同0.2ポイント減の2.9%となった。これら2社に関しても、キヤノングループ同様、取引金額の絶対額に変化はない。 ○受託開発業務の拡大 受託開発業務の拡大も増収に大きく貢献した。同社の受注形態は、顧客ニーズに合わせた技術提供業務と受託開発の2通りがあり、今までは売上構成比が6対4の割合だった。2017年2月期からは、受託開発の割合を引き上げる取り組みを始めた。具体的には、割合を2018年2月期中に5対5にすることを目標にしており、第2四半期では受託開発を45%程度まで引き上げた。受託開発は成果に対して売上が計上されるため、失敗した場合のリスクはあるが、売上への貢献と同時に、プロジェクト管理を徹底すれば利益率を高めることができるという。そのため受託開発業務の拡大は、売上と利益の向上の両方に貢献する。これは、同社のすべての事業の収益拡大に当てはめることができるが、特に主力のファームウェアに関しては、もともと強固な事業基盤をさらに堅固にする効果がある。 また、受託開発の拡大は、技術者育成にも役立つ。受託開発では、自社内での共同作業となるため、技術継承も円滑にしやすい。高度な技術力を強みとする同社にとって、この効果は非常に大きい。 なお、受託開発業務の拡大という戦略は同社の意思だけでできるものではないことを留意する必要がある。顧客にとって重要なプロジェクトを丸々任せることができる高度な技術力と信頼があるからこそ可能なのである。 一方、受託開発のリスクである不採算案件の発生の恐れに関しては、同社の高度な品質管理能力によって回避できると考えている。2014年6月の本社の移転に伴い、今まで分散していた技術者が本社オフィスに集約されたことによってノウハウの共有化がさらに進み、工数が削減され、より多くの受注を効率的にこなせるようになった。ソーバル単体内はもとより、子会社を含めたグループ全体としても受注案件を相互に融通し合うといった柔軟な作業体制も実現している。その成果として、例えば、不採算案件は極めて小さな案件で年に2~3回程度しか発生しないという。 ○戦略的な技術者育成 増収要因としては、上記のようなノウハウの共有といった技術者の育成が戦略的に進んだことも挙げられるほか、4月入社の新卒社員が予想以上の早さで売上に貢献できる育成戦略が確立されている点も見逃せない。ここ数年、第2四半期までに約3割、通期終了までにはほぼ全員が売上貢献できるまでに成長している。本来はコスト要因となるはずの新卒社員が早期に戦力となっているのである。 b)利益 減益の主な理由は、増収要因となった受託開発業務の拡大にある。受託開発を拡大するには、他のプロジェクトに従事している技術者を受託開発のチームにシフトする必要があるが、シフトの際にタイムラグが生じ、人員確保が間に合わず、同社が得意とする効率的な作業が十分にできなかった。 ただ、これは、一時的な問題であり、シフトが完了すれば、効率化も元に戻る。同社は、2017年2月期下半期にはシフトに伴うタイムラグも一段落するとしており、利益率も上がるとコメントしている。 注目すべきは、2018年2月期中に受託開発の売上比率を50%まで引き上げるという目標を達成できた場合の売上と利益率だろう。同社は、2017年2月期第2四半期の利益が計画を下回ったにも関わらず、通期業績予想を据え置いた。その大きな理由が受託開発拡大による利益率の向上であると推測される。同社の業績予想は、非常に保守的であることを考慮し、実際の着地も予想どおりになると仮定した場合、タイムラグが解消される下半期の売上高営業利益率は9.2%と、売上高・利益ともに過去最高を更新した2016年2月期に比べ1.3ポイント上昇することになる。2018年2月期にもシフトに伴う一時的な減益が起こる可能性はあるが、受託開発の売上高構成が2017年2月期に比べてさらに5%上昇することを想定した場合、売上・利益率ともにさらに拡大することが期待できるだろう。 このほかの減益要因として、新規技術分野の事業化のために利益確保よりも技術の蓄積や新規顧客の獲得にコストをかけたことも挙げられるが、これは想定内のことであり、後にも述べるが、同社は全社の利益拡大を犠牲にしてまで新規技術分野にコストをかける方針を取っていないことから、大きな懸念材料にはならないと考えていいだろう。 c)財務状況 財務状態は相変わらず、極めて良好である。創業者である推津順一(しいづじゅんいち)代表取締役会長の「借り入れは極力避ける」経営理念から、第2四半期末における金融機関からの借入はゼロで、完全な無借金経営を維持している。総資産は16年2月期末比2.3%減の3,710百万円となった。現金及び預金が69百万円増加した一方、受取手形及び売掛金が116百万円減少したことが主な要因である。一方、純資産は、自己株式の取得により62百万円の減少要因となったものの、利益の蓄積により、利益剰余金が増加し、の2,782百万円となった。その結果、連結の自己資本比率は前期末比2.5ポイント増の75.0%と高まり、極めて高い水準を維持している。 キャッシュ・フローも潤沢である。キャッシュの期末残高は2016年2月期末比4.9%増の1,473百万円となった。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 柄澤 邦光) 《HN》
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