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北京五輪ボイコットできない岸田政権の対中友好がクワッドを崩す(2)【中国問題グローバル研究所】
2021/12/9 16:21
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*16:21JST 北京五輪ボイコットできない岸田政権の対中友好がクワッドを崩す(2)【中国問題グローバル研究所】 【中国問題グローバル研究所】は、中国の国際関係や経済などの現状、今後の動向について研究するグローバルシンクタンク。中国研究の第一人者である筑波大学名誉教授の遠藤 誉所長を中心として、トランプ政権の ”Committee on the Present Danger: China” の創設メンバーであるアーサー・ウォルドロン教授、北京郵電大学の孫 啓明教授、アナリストのフレイザー・ハウイー氏などが研究員として在籍している。関係各国から研究員を募り、中国問題を調査分析してひとつのプラットフォームを形成。考察をオンライン上のホームページ「中国問題グローバル研究所」(※1)にて配信している。 ◇以下、「北京五輪ボイコットできない岸田政権の対中友好がクワッドを崩す(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。 ◆親中まっしぐらに突き進む岸田政権 そもそも岸田首相は11月16日の時点で、ウイグル問題など人権侵害に関与した外国当局者らに制裁を科せる「日本版マグニツキー法」の制定を当面見送る方針を固めていた。G7の中でマグニツキー法を制定しない方向で動いているのは日本一国だけである。習近平への配慮からであることは言うまでもない。 そこへさらに林芳正氏を外相に充てたということは、もう親中まっしぐらで行くことを示唆している。 私は林氏と何度かテレビ対談をしているが、林氏は人格的には威張ってなく、フランクな感じで好感が持てる。ところが対談を始めてみると、驚くほどの親中ぶりを発揮し、私はナマ放送で思わず「あり得ない!」と言ってしまったという経験がある(2018年10月)。 それもそのはず、林氏はそのとき日中友好議員連盟(日中議連)の会長だった。 2019年5月5日には日中議連の代表として訪中し、北京でチャイナ・セブンの一人である汪洋(全国政治協商会議主席)と会見している(※2)。 汪洋はこの時、日中議連の長年にわたる中国への貢献を讃え、特に「去年は習近平主席と安倍首相が何度も会い、一帯一路プラットフォームを通して協力と友好を深めている」と礼賛した。 さすがにこのまま外相を務めるのはまずいと思ったのだろう、今年11月11日に外相就任と同時に林氏は日中議連の会長職は辞任したものの、際立った親中派であることに変わりはないだろう。 今年11月18日には中国の王毅外相と電話会談(※3)しているが、林氏の方から「来年は日中国交正常化50周年記念なので、日中友好を一層深めたい」と申し出、日本の報道によれば「王毅外相も賛同した」とある。林氏の方が日中友好に積極的なのだ。 また中国側報道では、王毅が林氏に訪中を要請したとは書いてないが、林氏自らが、11月21日に「王毅外相から要請があった」と明らかにしてしまった(※4)。 ◆中国はクワッドを骨抜きにする狙い 中国は東京五輪を支援し参加してきたのだから、日本が北京冬季五輪をボイコットするなどということはできないと思っている。 事実11月25日の外交部定例記者会見(※5)で趙立堅報道官は以下のように述べている。 ——中国と日本は、互いの五輪開催を支援するという重要なコンセンサスがある。 中国は、東京五輪の開催にあたり、既に日本側を全面的に支持してきた。日本側には基本的な信義があるべきだ。(引用ここまで) 「重要なコンセンサス」が出来上がっていたということは即ち、日本は「こっそり」=「水面下で」、「すでに中国と固く約束を交わしていた」ものと解釈することができる。それを気性の荒い趙立堅がばらしてしまったことになろうか。 したがって岸田首相や林外相がどんなに言葉を濁しても、日本が外交的ボイコットをする可能性はないと言っていいだろう。閣僚のレベルを下げるくらいのことはしても、「政府高官」を誰一人派遣しないということはないということだ。 実はインドにしても同じことなのである。 11月26日、「中国・ロシア・インド(中露印)外相第18回会議」がオンラインで開催され、35か条に及ぶコミュニケが発布された(※6)。 その第34条には「外相たちは中国が2022年に北京冬季オリンピック・パラリンピックを開催することを支持する」と明示してある。 すなわちインドは、決して北京冬季五輪の外交的ボイコットをしないということだ。 念を押すように、ロシアのプーチン大統領が12月6日インドを訪問しモディ首相と対面で会談した(※7)。このコロナの中でわざわざインドまで行くというのは、よほどインドを重んじているためと解釈される。 これまで何度も書いてきたが、プーチンとモディは個人的に非常に仲良しだ。 プーチンと習近平の親密さも尋常ではない。 8月15日のコラム<タリバンが米中の力関係を逆転させる>(※8)や9月6日のコラム<タリバン勝利の裏に習近平のシナリオ —— 分岐点は2016年>(※9)などでも書いたように、習近平は肝心な分岐点になると、必ずと言っていいほどプーチンに前面に出てもらって中国に有利な方向に国際社会を持って行くべく動いてもらう傾向にある。 今般もまたプーチンに前面に出てもらってインドを中国側に引き付けるべく水面下で動いていると解釈される。 このたびのプーチン訪印では、露印間で99条に及ぶコミュニケが出されたが(※10)、それらは軍事やエネルギー面などでの連携を強化する内容になっている。特に軍事領域における両国間の強化は、アメリカに対して非常に不愉快なものだろう。 プーチンにしてみればウクライナがNATO側に付くことだけは許さないという強烈気持ちがあるので、その意味でも中印との連携を強化したい。 クワッド(日米豪印)からインドが実質上抜け、日本がマグニツキー法や外交的ボイコットにおいてアメリカに同調しないとすれば、中国から見れば、クワッドは骨抜きになったに等しいのである。 岸田政権には中国が世界中で最も親中的だと位置付けている公明党が与党として入っており、中国が最もコントロールしやすいとみなしている日中議連の会長を務めていた自民党きっての親中派である林芳正氏が外相を務めているので、岸田政権は親中満載だと見ているだろう。 特に12月3日のコラム<習近平、「台湾統一」は2035年まで待つ>(※11)で述べたように、習近平はあくまでも経済で各国・地域を中国側に引き寄せておけば安泰という外交戦略で動いている。 もともと親中親韓的傾向の強いハト派である宏池会出身の岸田文雄氏が首相を務める岸田政権は経済連携において中国から離れることはない。 習近平にとって、こんなにありがたい政権はないのである。 日本はこのことに目を向けなければならない。 写真: 代表撮影/ロイター/アフロ (※1)https://grici.or.jp/ (※2)http://www.xinhuanet.com/politics/2019-05/05/c_1124453709.htm (※3)https://www.fmprc.gov.cn/wjbzhd/202111/t20211118_10449989.shtml (※4)https://www.asahi.com/articles/ASPCP4W02PCPUTFK002.html (※5)https://www.fmprc.gov.cn/fyrbt_673021/jzhsl_673025/202111/t20211125_10453188.shtml (※6)https://www.fmprc.gov.cn/wjbzhd/202111/t20211126_10454095.shtml (※7)http://en.kremlin.ru/events/president/news/67287 (※8)https://grici.or.jp/2483 (※9)https://grici.or.jp/2521 (※10)http://en.kremlin.ru/supplement/5745 (※11)https://grici.or.jp/2799 《FA》
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