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戸田工業 Research Memo(3):2023年に創業200周年を迎える老舗の化学素材メーカー(2)

2023/7/28 14:43 FISCO
*14:43JST 戸田工業 Research Memo(3):2023年に創業200周年を迎える老舗の化学素材メーカー(2) ■会社概要 この数年で数量を大きく伸びてきたのがハイニッケルを中心とする車載用LIB用材料で5,800百万円(セグメント内での構成比29%)となっている。戸田工業<4100>は1990年代の磁気テープに代表される磁性酸化鉄市場の黄金時代からの急激な市場縮小に対し、既存事業の技術を生かしLIB用正極材料の研究に着手、2000年に四酸化三コバルト(Co3O4)を出発原料としてコバルト酸リチウム(LiCoO2)事業を開始した。その後、買収等で2002年にニッケルコバルトアルミン酸リチウム(LiNiCoAlO2)、2007年にNi(OH)2/CoOx、2008年にはスピネル型マンガン酸リチウム(LiMn2O4)を事業化、同時にArgonne National Labからリチウムリッチのニッケルコバルトマンガン酸リチウム(Li-Rich NCM)のライセンスを取得し、LIB用正極材料3成分系の事業化を迅速に行った。また米国ミシガン州に工場建設を始め、2010年に伊藤忠商事<8001>と前駆体・正極材料製造のJV、2015年には欧州化学大手BASFと日本を拠点にLIB用正極材料を展開するBASF戸田バッテリーマテリアルズ(同)(以下、BTBM)を立ち上げ、NCA、NCMなど様々な正極の研究開発、製造、販売を行うこととし、2017年にはハイニッケル系正極材料生産設備を大幅増強した。LIB用材料事業は、BASFとの合弁会社であるBTBM(BASFジャパン66%、同社34%出資、持分法適用会社)により運営、BTBMの2022年12月期の売上高は21,644百万円(前期比28.1%増)であった。なお、2022年7月20日には、年間45GWhのバッテリーセル製造に必要な生産量を確保するために、ハイニッケル正極材料の生産能力を2025年までに6万トンに引き上げることを発表している。2022年12月19日にはドイツBASF本社がBTBMからトヨタ自動車<7203>とパナソニックホールディングス<6752>の合弁会社であるプライムプラネットエネルギー&ソリューションズ(株)(以下「PPES」)へ納入を開始するとの開示があった。LIB用材料事業は車載対応で多額の先行投資を必要とし、減損処理、投資損失、市況の乱高下などから収益推移の重しとなっていたが、ここに来て投資効果が現われ、収益を稼ぎ出す事業に変わってきている。 2023年3月期の売上高は10億円と小さいが、今後の期待が大きいのがMLCC向け誘電体材料事業である。コンデンサーは3大受動部品の1つで、ほとんどの電子機器に使用され、能動部品(供給された電気エネルギーを増幅、変換、整流等が可能)を正しく作動させるために必要不可欠な部品である。この中でセラミックコンデンサーはコンデンサー全体生産額の8割近くを占める。現在、スマートフォン、自動車、家電など、あらゆる電子機器で利用され、2021年度は7,700億円の生産額を誇る。セラミックコンデンサーの主原料はチタン酸バリウムで、産業化で先陣を切ったのが村田製作所<6981>である。その後、太陽誘電<6976>、TDK<6762>など日系企業が続いて基幹事業化に成功、サムスンが2000年代に入って本格参入するまで日本の独断場製品であった。同社は2004年にチタン酸バリウムの製造設備を新設し、同分野へ本格参入したが、特徴はその製造方法にある。チタン酸バリウムは従来、固相反応法といわれる原料を焼成する製法が主流で、村田製作所なども大半はこの製法で内製化している。なお日本化学工業<4092>、富士チタン工業(株)などは湿式反応と焼成を組み合わせた製法であるシュウ酸塩法を利用し、固相法に対して細かい粒度が得られることが特徴である。これらに対し同社は独自の湿式合成技術によって原料を高温・高圧下で反応させ、100nm未満の微細な粒子の粒度を均一に制御できる水熱合成法を利用している。現在、セラミックコンデンサーでは、小型化、大容量化、高誘電率を求められ、既に0603サイズが1005サイズを抜いて最大比率となり、さらに0402サイズの比率も高まり、0201サイズも通信モジュールやウェアラブル機器などの特定用途での利用が始まっている。現在、スマートフォンの不振から足元の生産が低迷しているものの、今後、超微粒子チタン酸バリウムの需要が急速に高まると見られる。 (2) 機能性顔料事業 機能性顔料事業の2023年3月期売上高は14,723億円となっている。主に塗料、複写機・プリンター、環境市場を事業フィールドとして製品展開を行っている。これまで塗料用顔料、複写機・プリンター向けトナー・キャリア用材料などを中心に拡大してきた事業である。顔料は、創業以来の事業であるが、塗料市場では建築物や構造物の建設向けの着色材料などで着実に用途が拡大するも、複写機・プリンター市場では、ペーパーレス化、電子化などの影響があった。但し同社はシェア拡大に努め、化粧品顔料、透明酸化鉄など新製品群の拡大や環境市場向けの土壌・地下水浄化材などで補い、売上を確保してきた。利益面では原材料・エネルギー価格高騰の影響などで利益率の低下を余儀なくされてきたとみられるが、コロナ禍による影響から回復、収益が改善している。 事業展開を最終用途別で示すと、5つの事業フィールドとなる。なお、「環境」、「複写機・プリンター」、「塗料」が機能性顔料事業領域、「家電・通信機器」、「自動車」が電子素材事業にほぼ属している。2023年3月期では「自動車」が最大部門となっており、売上高は12,300百万円(構成比35%)、次いで「塗料」8,600百万円(同25%)、「家電・通信機器」7,100百万円(同20%)の順となっている。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘) 《SI》
関連銘柄 8件
4092 東証プライム
2,839
10/4 15:00
-7(%)
時価総額 25,332百万円
無機化学製品や電子セラミック材料、電池材料等を手掛ける化学メーカー。1893年創業。チタン酸バリウムの設備能力増強進める。アジア地域中心に販売体制の強化図る。中期経営計画では27.3期売上490億円目標。 記:2024/06/13
4100 東証スタンダード
1,812
10/4 15:00
+2(%)
時価総額 11,051百万円
金属化合物素材メーカー。磁性粉末材料や顔料、環境材料の機能性顔料と、磁石材料や誘電体材料等の電子素材を提供する。二次電池正極材も手がける。今期3Q累計は機能性顔料の需要回復が遅れた。電子素材も足踏み。 記:2024/04/14
1,299
10/4 15:00
+15(%)
時価総額 3,187,820百万円
電機大手のパナソニックを中核とする持株会社。1918年創業。家電や住宅設備、AV機器、デジカメ、電子部品、産業電池・車載用電池等を手掛ける。配当性向30%目安。車載電池、空質空調等を投資領域に位置付け。 記:2024/09/02
6762 東証プライム
1,898
10/4 15:00
-17.5(%)
時価総額 3,689,446百万円
大手電子部品メーカー。1935年創業。二次電池などエナジー応用製品が主力。スマホ内臓バッテリーで世界トップシェア。海外売上高比率は9割超。高収益事業の強化図る。中計では27.3期売上高2.5兆円目標。 記:2024/08/29
6976 東証プライム
2,957.5
10/4 15:00
-69.5(%)
時価総額 385,120百万円
電子部品メーカー。積層セラミックコンデンサ等のコンデンサが主力。インダクタや通信用デバイス、アルミニウム電解コンデンサ等も。自動車、情報インフラ・産業機器が注力市場。インダクタや複合デバイスは売上順調。 記:2024/06/11
6981 東証プライム
2,797
10/4 15:00
-28.5(%)
時価総額 5,670,758百万円
大手電子部品メーカー。コンデンサやインダクタ、EMI除去フィルタ等を手掛ける。チップ積層セラミックコンデンサ等で世界トップシェア。海外売上高比率が高い。コンデンサはモビリティ向けなどで販売増を見込む。 記:2024/06/04
7203 東証プライム
2,586
10/4 15:00
-15.5(%)
時価総額 42,190,556百万円
自動車メーカー最大手。カローラ、クラウン、プリウスなど人気車種多数。ダイハツ工業、日野自動車等を傘下に持つ。海外販売台数比率は7割超。グローバル生産累計3億台超。ソフトウェア、AIなどへの投資を加速。 記:2024/08/01
8001 東証プライム
7,877
10/4 15:00
+13(%)
時価総額 12,484,179百万円
1858年創業の大手総合商社。繊維、金属、食料、機械、エネルギー・化学品、住生活分野などで事業展開。伊藤忠エネクス、伊藤忠食品などを傘下に持つ。総還元性向50%目途。川下ビジネスの開拓・進化等に取り組む。 記:2024/08/30