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ジョージア通貨の行方【フィスコ・コラム】

2023/12/10 9:00 FISCO
*09:00JST ジョージア通貨の行方【フィスコ・コラム】 ロシアと国境を接する親欧米のジョージアの欧州連合(EU)加盟に向け、通貨ラリの底堅さが鮮明になっています。ウクライナ戦争の思わぬ「特需」は一巡したものの、脱ロシアが好感されているもよう。世界的分断の狭間で「政治通貨」は大きく揺れ動きそうです。 11月に発表されたEU拡大に関する方針で、欧州委員会はウクライナとモルドバの加盟交渉開始をEUに勧告。今年6月時点で加盟候補国の認定を保留されたジョージアは、複数の改革を進める条件付きの候補国認定を取り付けました。同国は昨年、ウクライナ戦争をきっかけにEUと北大西洋条約機構(NATO)への加盟を正式に表明しており、先行きは不透明ながら実現に一歩踏み出したことになります。 それを受け、ジョージアラリはドルやユーロに対し下げ渋る展開に。ロシアや欧米との交易関係から同国経済は大きなダメージが予想されていましたが、逆に急成長を遂げます。ロシアから経済制裁や予備役を逃れようと、10万人を超える人々がジョージアに流入したことが背景にあります。消費の増大が寄与し、2022年の成長率は2ケタ台になるとの予想も出ていたほどです。 予想外の好景気を背景にラリは今年4月まで上昇基調を強めますが、その後は一転して下落基調に振れました。政権与党「ジョージアの夢」の親ロシア寄りの政策が問題視されて7EU加盟が遠のき、反政府デモなどで社会が不安定化した時期と一致します。フランスの外交官としてのキャリアを持つズラビシビリ大統領は与党と対立し、方向感を失った国家の通貨に売りが強まりました。 ジョージアをEU加盟候補国に承認するかどうかは近く開催のEU首脳会議で決議される見通し。ジョージア国民の9割が加盟を希望しているものの、政治の混乱で長い年月を要する交渉に耐えられない危険もはらんでいます。国内情勢が不安定化するリスクを考えれば、ラリへの買いは続かないでしょう。EU内でも、来年3月のロシア大統領選で再選確実のプーチン氏をジョージアの加盟により刺激したくないようです。 NATO参加に関しても、ウクライナ同様、ジョージアも「長期的な課題」とされる可能性が指摘されます。国際政治で欧米の影響力が低下するなか、旧ソ連の構成国でありながら親欧米路線を取り続ける国家の先行きは不透明になってきました。2024年10月に予定されるジョージアの大統領選と議会選は、将来の方向性を定める重要な選挙になりそうです。 (吉池 威) ※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。 《TY》