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トレードワークス Research Memo(2):金融知識を併せ持つエンジニアによる低コスト・短納期開発が強み

2020/9/28 16:02 FISCO
*16:02JST トレードワークス Research Memo(2):金融知識を併せ持つエンジニアによる低コスト・短納期開発が強み ■会社概要 1. 会社沿革 トレードワークス<3997>は、現代表取締役社長の浅見勝弘(あさみかつひろ)氏によって、証券会社のシステム開発を目的に1999年に設立された。浅見氏は元々、外資系IT企業のエンジニアとして、金融系ネットワークシステムのコンサルティング業務に携わっていたが、1990年台前半の国内の証券取引システムが米国よりも大きく遅れていたことから、国内でも先進的な証券取引システムが普及していくことを予見し、同社を立ち上げた。金融業界向けに特化していくことを決めたのは、常に先進的なITシステムが求められる業界であり、エンジニアとして一生涯、システム開発に関わっていくだけのモチベーションを維持していくことが可能と考えたためだ。 会社設立後、初めての顧客は現在も主要取引先の1社であるインターネット専業の証券会社で、インターネット証券取引システムを開発し納品した。1990年代までの証券会社の取引システムは、その大半が大手証券会社系列のシステム開発会社で開発されたものを利用していたが、2000年以降、インターネット専門の証券会社が相次いで設立され、インターネット取引が急速に普及していくなかで、同社はこれら新興の証券会社を中心に受注を獲得し、業績を伸ばしてきた。 提供する製品としては主力のインターネット証券取引システムのほか、ディーリングシステムや取引所売買端末、不公正取引監視システムなど証券会社のディーリング(自己売買取引)やインターネットトレーディング(委託売買取引)に関わる情報システムとなり、各種システムをオールインワンで提供できることから、顧客の多様なニーズに対応可能となっている。また、2007年には事業領域を拡大するため、FX取引システムを開発するワークステクノロジー(株)に資本参加し、子会社化した(2016年4月に解散、同社が事業を継承)。2015年以降は、従来の売り切り型に加えて、SaaS型サービスでの提供も開始している。初期導入コストを低く抑える代わりに、月額利用料及び保守料で安定した収入を得るストック型に近いビジネスモデルであり、今後はSaaS型サービスの方に軸足を移し、収益の安定性を高めていく方針となっている。2017年11月に更なる業容拡大と認知度向上による採用力強化を目的に、東証JASDAQ市場に株式上場を果たした。 2. 事業内容 同社は金融ソリューション事業とFXシステム事業及びセキュリティ診断事業を展開しており、2020年12月期第2四半期累計の売上構成比で見ると、金融ソリューション事業が89.0%を占める主力事業となっている。 金融ソリューション事業の主な製品は、インターネット証券取引システム、ディーリングシステム、証券取引所売買端末、不公正取引監視システムなど証券会社向けのシステムで、なかでもインターネット証券取引システムが売上高の大半を占める主力製品となっている。同社はこれら製品を顧客のニーズに合わせてカスタマイズして開発し、保守・運用までを行っている。ここ最近はクラウドサービス(SaaS型サービス)形態での利用が増えてきているが、初期導入費用と月額利用料、保守料等のバランスについては、開発案件ごとに異なっている。現在の主な顧客は、auカブコム証券(株)、(株)DMM.com証券などで、設立来、40社超の証券会社及び投資運用会社の取引システムを開発してきた。 FXシステム事業では、FX会社向けに主にFX取引システム及びFXチャートシステムを開発・提供しており、売上構成比はここ数年、1割前後で推移している。ヒロセ通商<7185>やDMM.com証券、SBI証券などが主要顧客で、取引社数は15社程度となっている。クラウドサービス形態での提供を行っており、売上高の大半はストック型収入で占められる。このため、売上高は取引社数の増加とともに着実に拡大する傾向にある。 セキュリティ診断事業では、事業会社のWebサイトやネットワークにアクセスし、セキュリティ上の問題点(脆弱性)の有無を検出する診断サービスを提供している。診断サービスはオンサイトまたはオンラインでの手動診断で行っているほか、自動診断ツール「SecuAlive」の提供も行っている。「SecuAlive」は、指定したURLに定期的に自動アクセスし、脆弱性の有無を診断するサービスとなる。顧客企業は人材派遣会社やEC事業者、サービス業などを中心に多岐にわたり、契約社数は30社弱となっている。 3. 市場動向と同社の強み 同社が主力市場としている証券業界のシステム投資額(ハードウェア除く)は年間1,900億円規模で推移しており、今後も年率1%程度の安定成長が続く見通しとなっている。提供形態別で見ると、クラウド利用での提供が全体の7割弱を占め、残り2割強がスクラッチ開発※、1割弱がパッケージ製品といった構成となっており、クラウド利用の構成比が年々上昇していく見通しだ。 ※製品を開発する際に、既に存在する何かを土台とせずにゼロから新たに作り上げること。 また、証券業界の情報システムに関しては、従来から大手証券会社系列のシステム開発会社がシェアの大半を握る構造となっており、トップベンダーの野村総合研究所<4307>、2位の(株)大和総研のグループで全体の7割弱を占めている。同社がこれら大手証券やその系列子会社の取引システムを受注する可能性は低いものの、過去には総合証券会社の取引システムをリプレースした実績もあり、可能性はゼロではない。また、新興のインターネット専門証券会社もここ数年は増加傾向にあり、同社にとっては受注獲得の好機となる。 同社の強みは、証券に関する深い知識を持ったエンジニアを自社で多数抱えていることで、顧客ニーズに最適なシステムを競合大手よりも短期間、かつ低コストで設計・開発できる点にあり、証券システムの開発に関しては精鋭集団とも言える。また、証券業界では新たな金融商品の開発や法規制の改正などにより、システムの改修ニーズが頻繁に発生するが、こうしたニーズに対しても低コスト・短期間で対応可能となっている。これは同社がエンジニアに対して金融知識を深めるための研修などを行っていることに加え、システム開発を完全オブジェクト指向※で行っていることも要因と考えられる。 ※オブジェクト指向…ソフトウェア開発技法の1つ。あるデータの処理をオブジェクト(モノ)にまとめて部品として扱い、部品の組み合わせでシステム全体を構築していく開発手法。部品の再利用や分類がしやすく、開発工程を効率化できる利点がある。 一方で弱みとしては、重大なインシデントが発生した場合の補償などに関しての信用力が、競合大手と比較すると劣る点が挙げられる。これは同社がまだ創業20年余りの新興企業であり、財務基盤が盤石ではないためだ。このため、相見積もりで競合より受注見積額が低かったとしても、相手側に案件が流れるケースもある。ただ、将来的には開発実績を積み重ねて財務基盤の拡充を図り、機能・サービス面での優位性を発揮していくことで、こうした問題も解消していくものと弊社では見ている。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲) 《EY》
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