ケネディクス Research Memo(7):新中期経営計画では「ケネディクスモデル」の更なる発展を目指す
2019/9/6 15:17
FISCO
*15:17JST ケネディクス Research Memo(7):新中期経営計画では「ケネディクスモデル」の更なる発展を目指す
■成長戦略
ケネディクス<4321>は、2015年に定めた長期ビジョン「Kenedix Vision 2025」のもと、2018年12月期からは、新たな3ヶ年の中期経営計画「Partners in Growth, Next 2020」をスタートした。
1. 長期ビジョン
同社は、2025年の長期ビジョン「Kenedix Vision 2025」として、AUM4兆円、グループ時価総額2兆円(2019年6月末時点では8,317億円)、ROE15%を掲げている。特に、AUMは、過去8年間(2009年から2017年まで)で1兆円から2兆円に倍増してきたペースをさらに加速し、2017年からの8年間で2兆円から4兆円へ倍増させる計画である。これまで同様、「メインスポンサーREIT」と「私募ファンド」の2つの柱に加えて、新たな成長軸である「アウトバウンドファンド」及び「デジタルセキュリタイゼーション」(クラウドファンディング事業との連携を含む)の推進により、投資対象及び投資家層の拡大を図りながら安定的・持続的な成長を実現する方向性と言える。また、AUM拡大に向けたM&A機会も模索する方針である。注目すべき点は、総資産の規模や財務レバレッジ(有利子負債比率)を現状から大きく拡大することなく、AUMを積み上げることで収益性(資本効率)を高める方向性が示されているところであり、まさに「ケネディクスモデル」ならではの独自の成長シナリオとなっている。
2. 中期経営計画
2018年12月期よりスタートした新たな中期経営計画「Partners in Growth, Next 2020」は、前中期経営計画の方向性を継承し、「ケネディクスモデルの発展期」と位置付けられている。すなわち、同社の強みである投資案件の組成力と運用力を高め、顧客投資家層を拡大し、「ケネディクスモデル」を多方面に発展・深化させることで、同社の収益基盤を一層強化する。また、機動的な投資と健全な財務体質を維持しながら、資本の有効活用と株主還元の充実を図り、不動産アセットマネジメントのリーディングカンパニーとして企業価値の一層の向上を目指す方針である。定量計画として、ROE(3年平均)10%以上、総還元性向(3年平均)50%以上を掲げている。
基本方針と重点施策は以下のとおりである。
(1) 不動産アセットマネジメントを中心とするビジネス領域の拡充
a) AUMと安定収益の拡大につながる多様な投資機会の創出
b) 国内外における顧客投資家層の拡大と投資家リレーションの深化
c) 投資案件の組成力と運用力を向上させる運用体制の強化
d) アセットマネジメントの付加価値を高める関連サービスの強化
e) ビジネス領域の拡充に資する戦略的M&Aや事業提携の模索
(2) 機動的かつ戦略的な投資の推進
a) 顧客投資家との共同投資の推進
b) 同社グループ運用ファンドの成長につなげる機動的な投資の実行
c) 海外や成長分野でのビジネス拡大に資する戦略的な投資の実行
d) 分散と規律の保たれた投資ポートフォリオの維持とモニタリング体制の強化
e) 財務の健全性と透明性の堅持
(3) 時代の変化を捉えた新たな成長分野の開拓
a) アジア市場における事業の拡大
b) 米国市場でのアウトバウンド投資ビジネスの推進
c) ホテル、民泊、サービスアパート等の滞在型施設運営ビジネスの推進
d) 「不動産×金融×テクノロジー」に焦点を当てた新ビジネスの立ち上げ
(4) 持続的成長と社会的責任の両立に向けた経営基盤の強化
a) 組織と個人の生産性を高める社内インフラの進化
b) ケネディクスモデルの礎となる多様な人材の確保・育成
c) 社会の変化に応じた柔軟な働き方の追求
d) ESG(環境、社会、ガバナンス)への取り組み推進
弊社でも、外部要因(好調な投資家ニーズの継続)や内部要因(ケネディクスモデルの進展)の両面から判断して、同社が持続的な成長を実現することは可能であるとみている。最大の課題は、AUM4兆円の達成に向けていかに拡大ペースを引き上げていくのかにあるだろう。特に、「アウトバウンドファンド」や「デジタルセキュリタイゼーション」(クラウドファンディング事業との連携を含む)がどのように業績に寄与してくるのかに注目している。また、M&Aによる規模拡大も選択肢に入っており、今後の動向に注意する必要がある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
《YM》