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翻訳センター Research Memo(1):2021年3月期は減収減益。機械翻訳の活用が進捗し利益率が向上

2021/7/13 16:01 FISCO
*16:01JST 翻訳センター Research Memo(1):2021年3月期は減収減益。機械翻訳の活用が進捗し利益率が向上 ■要約 翻訳センター<2483>は、翻訳業界の国内最大手。医薬分野の専門翻訳会社として創業し、工業・ローカライゼーション、特許、金融・法務など専門性の高い産業翻訳分野で領域を拡大してきた。現在は翻訳だけでなく通訳、派遣、国際会議運営(コンベンション)、通訳者・翻訳者教育などに多角化し、顧客企業のグローバル展開における幅広い外国語ニーズに対応する。多数の中小プレーヤーがひしめく分散業界において、組織化・システム化された営業・制作機能を整備し、品質・スピード・コストのバランス、大規模案件対応などで他社の一歩先を行く。機械翻訳技術の取り込みにも積極的であり、(株)みらい翻訳と資本業務提携するとともに、社内の翻訳業務にも機械翻訳を活用し、生産性を向上させている。国内翻訳業界1位はもちろん、世界の語学サービス企業でも上位のポジションである。 1. 事業内容 主力の翻訳事業では、分野特化戦略を推進しており、「特許」「医薬」「工業・ローカライゼーション」「金融・法務」の4分野ごとに組織が分かれ、専門化してノウハウを蓄積している。グループネットワークを生かしたサービスの提案、ICTによる登録者マッチングシステムも強みである。現場で制作を担当するのは3,000名以上の登録者であり、機械翻訳や翻訳支援ツールを使い効率的かつ品質の高い翻訳サービスの提供を行っている。大規模プロジェクトや多言語対応などに機動的に対応できることも同社の強みである。連結子会社(株)アイ・エス・エスが行う、派遣事業、通訳事業、コンベンション事業はそれぞれの分野でポジションを築いているが、相互に関連していて翻訳事業を含めたクロスセリングが行われ、グループのシナジーが発揮されている。 2. 2021年3月期業績動向及び2022年3月期業績予想 2021年3月期通期の連結業績は、売上高が前期比14.1%減の9,910百万円、営業利益が同48.5%減の418百万円、経常利益が同43.4%減の465百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同61.4%減の117百万円と減収減益となった。売上高に関しては、新型コロナウイルス感染症の拡大(以下、コロナ禍)の影響を受けて、主力の翻訳事業をはじめ通訳事業、コンベンション事業の減収が重なった。唯一、翻訳事業の医薬分野では、外資製薬会社からの受注が好調に推移し、国内製薬会社との取引も堅調なことから同126百万円増となった。全体として、上期はコロナ禍の影響により顧客企業の業務がストップした影響で大きな減収となったが、第4四半期単独では前年同期の水準近くまで回復し、底打ちは確認された。営業利益は、減収のインパクトが大きく同48.5%減となった。セグメント利益では、翻訳事業(前期比190百万円減)、通訳事業(同129百万円減)、コンベンション事業(同73百万円減)の影響が大きかった。そのほか各段階利益においても、第4四半期単独では前年同期の水準まで回復している。 2022年3月期通期の連結業績予想は、売上高が前期比2.9%増の10,200百万円、営業利益が同55.4%増の650百万円、経常利益が同39.7%増の650百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同282.3%増の450百万円となった。2021年3月期のコロナ禍の影響による大幅減益から復調する予想だ。翻訳事業の売上高は前期比で109百万円増を予想。コロナ禍の影響で売上高が半減した通訳事業及びコンベンション事業では、2021年3月期水準に近い売上予想となった。営業利益は前期比231百万円増(同55.4%増)と大幅に改善する。中核事業である翻訳事業において、引き続き機械翻訳や翻訳支援ツールなど最先端技術の積極的な活用を推進し、生産性を上げ、原価率を低減させる計画だ。2022年3月期の業績予想は2021年3月期の下期の経営環境が続くことを仮定して堅実に計画されているが、現時点(6月初旬)では、ワクチン接種の進展やオリンピック開催の方向で準備が進められるなど翻訳・通訳業界にとっての環境がさらに改善する可能性もあることから弊社では、業績の上振れの可能性もあると考えている。 3. 成長戦略 同社は、中期経営計画の基本戦略として「ニューラル機械翻訳(NMT)に本格的に取り組む事業モデルへの転換」を実行してきた。NMT化を図る戦略のターニングポイントとなったのは、2017年10月に行われた機械翻訳エンジン開発会社であるみらい翻訳への資本参加(持分比率11.3%)である。2016年11月にGoogle LLC(グーグル)が発表した翻訳ツールがNMTを採用したことで翻訳精度が格段に向上し、企業が保有する翻訳データを効果的に学習できるNMTが必要不可欠であると判断したことが資本参加の目的だった。現在同社は機械翻訳エンジン「Mirai Translator ®」の代理店として外販活動も行っている。 NMT及びポストエディット(略して「PE」。機械翻訳で翻訳した文章を校正し、人手翻訳に近づける作業)を翻訳工程に取り入れ、主要4分野で作業時間の短縮を図る取り組みを開始してから4年間が経過し、成果は売上総利益率の向上という形で明らかになっている。先行導入した特許分野を筆頭にいずれの分野でも利益率が向上した。価格競争において一部の改善効果は顧客への値引きに割かれるものの、これは大きな成果と言えるだろう。同社ではまだ全ての案件でNMTを活用できているわけではないため、今後も継続して売上総利益率の向上が期待できる。 4. 株主還元策 同社は、企業の利益成長に応じた継続的な還元を行うことを方針としている。2021年3月期は、コロナ禍の影響で減益となったため、配当金年間20円(22円減)、配当性向56.5%となった。2022年3月期は、配当金年間35円(15円増)、配当性向25.8%を予想する。2022年3月期は同社の利益の復調が鍵となるが、まずは2019年3月期の配当金の水準まで戻す計画である。 ■Key Points ・2021年3月期はコロナ禍の影響で減収減益。第4四半期単独では前年同期水準近くまで回復し、底打ちを確認 ・2022年3月期の業績予想は主力の翻訳事業、通訳事業が復調し増収増益。機械翻訳など最先端技術活用を推進。一部コンベンション事業などでコロナ禍の影響が残る ・機械翻訳の活用が進み生産性が向上 ・足元の取り組みとして、ウィズコロナに対応した新たなデジタルサービスを開発 ・同社におけるESGへの取り組みは、本業を通じた国際的な経済・文化交流のサポート(一例として大阪府門真市へ「多言語版ごみカレンダー」を無償提供) ・2022年3月期は配当金35円(15円増)、コロナ禍以前の水準へ回復予想 (執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫) 《EY》
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時価総額 6,219百万円
翻訳業界国内最大手。特許分野、医薬分野、工業・ローカライゼーション分野、金融・法務分野で翻訳事業を展開。派遣事業、通訳事業等も手掛ける。配当性向35%目標。翻訳事業では専門性の深化、顧客シェア拡大に注力。 記:2024/09/01