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安田倉庫 Research Memo(8):2019年3月期は増収、大幅増益。物流の順調増に不動産の新稼働がオン

2019/8/5 15:08 FISCO
*15:08JST 安田倉庫 Research Memo(8):2019年3月期は増収、大幅増益。物流の順調増に不動産の新稼働がオン ■業績動向 1. 2019年3月期の業績動向 安田倉庫<9324>の2019年3月期の業績は、営業収益46,155百万円(前期比7.4%増)、営業利益3,557百万円(同55.0%増)、経常利益4,369百万円(同48.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益2,791百万円(同44.0%増)となった。堅調な経済環境を背景に雇用情勢が着実に改善し、景気が緩やかな回復基調で推移するなか、倉庫物流業界では、大型の物流センター投資や企業間競争の激化などはあったが、国内貨物・輸出入貨物ともに荷動きは堅調に推移した。不動産業界は、都市部オフィスビルの空室率は引き続き低い水準だったが、賃料水準は小幅な上昇にとどまった。こうした環境のなか、物流事業では国内外において物流施設増強による事業基盤の強化を図り、不動産事業では既存施設の稼働率の維持・向上に努めた。2018年3月期に新設した物流施設やホテル、商業施設ビルが本格稼働した上、先行的費用の発生も少なかったため、物流事業、不動産事業とも前期比で増収増益となった。その結果、当期が最終年度となる「中期経営計画2018」の業績目標に対して、営業収益は若干の未達にとどまったが、営業利益は大幅に上回ることができた。 セグメント業績に関して、物流事業は、既存顧客の取引拡大や2018年3月期に新設した物流施設の稼働により陸運料や倉庫作業料などが増加し、営業収益39,632百万円(前期比5.6%増)、セグメント利益3,159百万円(同32.5%増)となった。不動産事業は、2018年3月期に竣工した横浜鶴屋町のホテル及び商業施設ビルの稼働などにより不動産賃貸料が増加、施工工事受注も増加し、営業収益7,219百万円(同20.6%増)、セグメント利益2,125百万円(同24.0%増)となった。 ちなみに、物流事業を科目別で見ると、儲け頭の保管料が新設拠点の寄与で順調に売上げを拡大、倉庫作業料は流通加工の強化で既存顧客、新規顧客ともに伸びた。陸運料は原価高に対して料金改定が進展、企業の引越需要の増加も取り込んだ。国際貨物取扱料は大型機械などの輸出が鈍化傾向で減収となり、物流賃貸料には大きな変化がなかった。海外では、1号倉庫が好評だった上海で間を置かず2号倉庫を稼働し、大口客を確保するなど順調な立ち上がりとなった。そのほか、国内物流サービスでは顧客に代わって製品を買う購買代行が順調に拡大した。メディカルは、2019年3月期にフル稼働となった九州が好立地で好評、北海道でも医療機器向けの業務を新たに開始した。また、特殊医薬品や組み立てオフィス家具、化粧品・定温物流(安田物流)、宅配ロッカー(IT機器キッティング)などの新規取引も開始した。 2020年3月期に向け事業基盤は改善している 2. 2020年3月期の業績見通し 2020年3月期の業績見通しについて、同社は営業収益46,900百万円(前期比1.6%増)、営業利益3,150百万円(同11.4%減)、経常利益4,000百万円(同8.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は2,760百万円(同1.1%減)を見込んでいる。経済環境や業界環境は2019年3月期と同様の動きが予測されている。 事業基盤の強化により増収を見込むが、一部顧客の契約終了による入れ替えを想定し伸びをやや低く見積もったもようである。一方、2019年3月期の大幅増益の反動に加え、中期経営計画「YASDA Next 100」達成へ向けて、施設の保守や物流施設の拡充、システムの更新など経営インフラ強化に伴う先行的費用の増加が見込まれ、減益計画となった。手持ち資金が潤沢となってきたため設備投資を厚くする可能性は残されているが、営業収益やコストの考え方にやや保守的な印象を持っており、最終的な減益幅が縮小する可能性もあると考えている。なお、一部顧客の入れ替わりを見ているもようのメディカルは、2020年3月期の伸びが一旦鈍化するイメージである。しかし、来期以降へ向けて新たな仕込みもしており、その1つとして北海道札幌市において医療機器の保管業務と洗浄業務を始めるなど、新分野をさらに拡大していきたい考えである。 利益は3年目に大きく伸びそう 3. 中期成長イメージ 現状、大規模な不動産の再開発や新規の開発が想定されていないことから、不動産事業は当面、既存不動産のメンテナンスが中心となると思われる。したがって、中期経営計画「YASDA Next 100」は、物流サービスがけん引する前提になっていると想定している。また、物流サービスの中でも、国内物流サービスはもちろんのこと、メディカルやITサービスといったソリューション色の強いサービスが成長をけん引することになると思われる。特にメディカルは、医療機器で新たな製品の取扱いが始まり、医薬品メーカーからの取扱要請も少なくないもようで、増収の増加率が最も大きくなるジャンルと考えており、2020年6月には、東京都江東区に、メディカル物流サービスの拡大に資する倉庫拠点の開設を予定している。この施設は、鉄骨造地上4階建て、延床面積は約22,100平方メートル。予定地は、りんかい線東雲駅より徒歩5分、首都高速道路湾岸線有明IC至近に位置しており、湾岸地区や羽田空港へのアクセスが良い立地となっている。同社ではメディカル物流に最適な立地を生かし、高い利便性と付加価値の高いロジスティクスサービスの提供でメディカル物流サービスの更なる拡大を図る。同社の実績とノウハウ、受け入れ態勢を考えるとシェアアップの可能性もあるが、大手物流企業も参入してきている様子で、同社としても危機感は持って臨むことになりそうだ。一方、IT機器キッティングは同社の独自性が強い分野であることから、今後も安定的に伸びると予想される。国内物流サービスでは長く良好な関係を続ける顧客が多いため、精密機器や食品、日雑品などを含め全般的に伸長することが予想される。需要のボラティリティに対しては、物流施設を賃借することで機動的に展開することを検討している。利益面では、新たな「長期ビジョン2030」の始まりでもあるため「次」へ向けた施策が多くなることから、各分野とも当初は先行的に投資や費用が嵩み、3年目に大きく伸びるというイメージを持っている。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光) 《YM》
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1919年創立の総合物流企業。首都圏地盤。倉庫業、運送事業・利用運送事業、通関業・港湾運送事業等を展開。好立地にある物流拠点、所有不動産が強み。物流事業では倉庫・輸配送ネットワークの拡充などを図る。 記:2024/10/07