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カドカワ Research Memo(8):IPの「創出力×展開力×体験力」を成長エンジンへ(2)

2020/1/6 15:38 FISCO
*15:38JST カドカワ Research Memo(8):IPの「創出力×展開力×体験力」を成長エンジンへ(2) ■中期経営戦略について 2. 基本戦略 KADOKAWA<9468>は成長を実現していくうえでの基本戦略として、強みであるIPの「創出力」「展開力」「体験力」を融合したグローバルなメディアミックス戦略を掲げている。例えば、有望なIPをアニメ化やゲーム化し、グローバル展開していくほか、海外のプラットフォーマーとの連携(コンテンツの共同制作等)も強化していく。また、IPの世界観をリアルイベントやグッズ展開、Webでのファンコミュニティなどで体験してもらうことで顧客との接点拡大を図っていく。さらには、DXへの取り組みを推進していくことで、これらの展開スピードを加速していく方針となっている。 成長サイクルの流れを簡単に示すと、同社は毎年、出版で5,000点、映像作品で80点のIPを創出しており、これらIPを自社アーカイブ(紙書籍で11万点、電子書籍6万点、映像作品2千点)とともに、自社プラットフォームや他社プラットフォーム等を通じて販売していく。これらビジネスモデルを進化(サブスクリプション、ダイナミックプライシング等)させ、またグローバル化(国際合作やアライアンス等)して展開していくことで、デジタルコンテンツ市場を拡大していく。また、自社プラットフォームの進化だけでなく、プライシング効果や作品露出効果、非在庫拡販効果などによって、自社アーカイブの収益力アップと自社プラットフォームの成長を目指していくことになる。 (1) DX改革 同社はDXを推進していくため、DX戦略本部を立ち上げ、領域ごとに目標を設定して取り組みを進めていく方針となっている。具体的施策と目標は以下のとおりとなる。 a) ID・データ活用領域 マーケティング部門の組織横断連携を進めることで、「カスタマー・エクスペリエンス強化」を図り、デジタルマーケティングにより宣伝販促コストを2019年3月期比で10%の効率化を目指す。(対象部門:営業/マーケティング) b) 製造・物流改革領域 書籍の製造・物流プロセスのデジタルショートラン/適時適量生産・出荷を可能とする新工場を2020年7月に稼働(倉庫の稼働は同年12月29日)させることで、「返品率」を2023年3月期に20%台まで引き下げていくことを目標とする(2019年3月期は30%台)。(対象部門:書籍事業/生産管理) c) EC・ネットサービス領域 ストア運営のノウハウ共有と課金モデルを強化することで、「売上の最大化」と「EC会員350万人の更なる拡大」「越境ECの強化」に取り組んでいく。(対象部門:MD事業/PF事業/書籍事業/Webメディア事業/映像・アニメ事業) d) 雑誌・Webメディア領域 KPIの設定・分析やビジネスモデル改革を推進していくことで、「雑誌返品率の改善」と「MAUの向上」を図っていく。「ザ テレビジョン」では平均返品率20%台前半を達成し、Web版ではPV数を2年で8倍に拡大することに成功しており、このノウハウを横展開していく。(対象部門:雑誌事業/Webメディア事業) f) ABW・オフィス改革領域 サテライトオフィスやリモートワーク制度の導入に加え、ICTルール導入支援や全社のDX実行支援に取り組むことで、「労働生産性向上」と「AI、RPA等による業務効率化」を実現していく。労働生産性については、2020年7月に所沢キャンパスがオープンすることで、現在、飯田橋や銀座エリアに点在している5千坪分の賃貸スペースを順次返却し、2023年3月期には2019年3月期比で家賃等の固定費12億円の削減を見込んでいる。また、AIやRPA等の導入を進めることで、システム費や外注費等も2019年3月期比で20%の効率化を図る。(対象部門:システム/バックオフィス) (2) グローバル展開 書籍やアニメ、ゲーム等のIPを北米や中国などを中心に世界各国へ展開し、現在、10%以下の海外売上比率を2023年3月期には10%以上の水準に引き上げていく。事業戦略としては、新規IPの創出に加えて、国内外の有望なコンテンツIPを集約し世界展開を進めること、業界全体のDXを推進しプラットフォームのグローバル展開を進めていくことなどを挙げている。特に、アニメやゲームなどは海外でも評価が高く、ライセンス販売だけでなく大手プラットフォーマーとの共同制作などを今後積極的に進めていく方針だ。 3. 中期経営目標と個別戦略 (1) 経営目標 2023年3月期の中期経営目標として、売上高2,400億円、営業利益150億円、営業利益率6.3%を打ち出した。2020年3月期業績見込みからの年平均成長率は、売上高で5.1%、営業利益で14.5%となる。「基幹事業の規模拡大」×「ESG/SDGsを意識した経営」×「収益力の向上」に取り組むことで目標を達成していく考えだ。 売上高については、出版事業と映像・ゲーム事業が成長を牽引することを見込む一方、Webサービス事業については現状は保守的に見ている。また、2020年7月の「ところざわサクラタウン」のオープンによって、インバウンド事業(各種イベント収入やホテル事業など)が本格的に立ち上がる見込みで、2023年3月期で年間数十億円規模の売上を見込んでいる。一方、利益面では2021年3月期に利益が一時的に落ち込む可能性がある。新工場の稼働や「ところざわサクラタウン」のオープンによって減価償却費が増加するためだ。 出版事業については減価償却費の増加分を「返品率」低下によるコスト削減効果でカバーするほか、電子書籍・電子雑誌事業や版権収入の成長を見込んでおり、2023年3月期の営業利益率は2020年3月期見込みの5.5%から上昇する見込み。同様に、映像・ゲーム事業についてもグローバルIPの成長やオリジナルゲームの拡大、アニメの版権収入拡大により、営業利益率で2020年3月期見込みの10.1%を上回る見通し。その他事業についても教育事業の拡大やインバウンド事業の本格化によりトップライン上昇を見込むことで、赤字額の縮小、eスポーツ事業の収益化等を見込んでいる。 (2) 個別戦略 a) 出版事業 出版事業の重点戦略として、ボーンデジタルとUGCの強化(カクヨムロイヤルティプログラム等)、紙以外発の新規IP創出(Vtuber、WEBTOON※の開発、映像やゲームの原作開発)、海外現地制作及び海外企業との合作推進、電子書籍展開/世界展開(コミックの世界同時立上げ、ブックウォーカーの世界展開)等を推進していく。 ※WEBTOONとはデジタルコミックの一種。 b) 映像・ゲーム事業 映像・ゲーム事業の重点戦略として、グローバル作品の開発(グローバル人材の招聘やグローバル企業との連携)、海外OTT※との連携(大型ライセンスや共同制作、自社アニメスタジオの設立/出資等)、海外マーケティング強化(新規海外拠点設立、マーケティング人員強化)、アニメとゲームの連動(アニメIPゲームの開発等)に取り組んでいく。 ※OTT(Over the Top)とは、動画・音声などのコンテンツをインターネットを通じて配信するサービスプロバイダーを指す。 c) Webサービス事業、その他事業 その他では、製販文化発信一体型施設となる「ところざわサクラタウン」の立ち上げ、リアルイベント&グッズ展開(グローバル展開を視野に入れた企画開発、アニメデッキ・ハレスタ等の顧客接点強化)、Webサービスのファンコミュニティ強化(ニコニコチャンネル拡大、作家サロン展開)、新たなデジタル体験の取り組み(教育事業の成長、サブスクリプションサービスの開発等)に注力していく。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲) 《ST》
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出版大手。旧KADOKAWAとドワンゴが経営統合して発足。映像制作やゲーム開発、グッズ販売なども手掛け、コアファンを抱えるIPを多数保有。出版セグメントで国内市場縮小の影響もあり、3Q累計は利益足踏み。 記:2024/02/09