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ダイナムジャパンHD Research Memo(9):2018年規則対応機への入替に伴い約200億円の費用増加の可能性

2019/12/25 15:09 FISCO
*15:09JST ダイナムジャパンHD Research Memo(9):2018年規則対応機への入替に伴い約200億円の費用増加の可能性 ■今後の見通し 1. 2020年3月期及び2021年3月期の業績の考え方 ダイナムジャパンホールディングス<06889/HK>は業績予想を開示していないため、弊社は業績予想を行う上でのポイントや視点などを整理した。 (1) 営業収入の考え方 ネット売上高に相当する営業収入は、2020年3月期中間期は前中間期比0.5%増収となったが、2020年3月期下期も決して楽観はできない。営業収入はグロス売上高に相当する貸玉収入から景品出庫額を引いたものであるが、その貸玉収入は2020年3月期中間期は前中間期比2.0%の減収となった。これはパチンコの客数減による影響とみられている。 その一方で、足元のパチスロ人気は2020年3月期下期も続くとみられる。同社もそれに対応して上期同様、パチスロへのシフトを強化する方針だ。 こうした外部環境のなか、ネット売上高に相当する営業収入は、2020年3月期下期も横ばい圏~微増収で推移するとみている。前述のように営業収入は顧客への還元率との関係で決まるため、貸玉収入が多少上下に変動しても還元率がクッション役を果たし、増収を確保することが可能と考えられるためだ。 (2) 利益の考え方 営業収入に比べて、営業利益の考え方は難しい。基本的な考え方の構図は前回レポート(2019年6月25日付)で述べたところと同じだが、以下改めてポイントを示す。 2020年3月期中間期決算で同社は、現状の厳しい環境下にあっても営業利益、EBITDA(営業利益+減価償却費等の非資金的費用)ともに、同社にとってのベースラインの数値を達成できることを証明した。もちろん、これらの数値は自然体のままで達成できたわけではなく、トップライングロースとコストコントロールの両面で様々な工夫・努力を重ねた結果だ。ポイントは、そうした工夫・努力の随所に、国内最大の店舗数(ダイナム本体で405店舗、グループ全体で449店舗。2019年9月末現在)を保有する同社ならではの強みが活かされている点だ。同社のまねをできる同業他社は極めて少なく、事業環境が厳しい状況がゆえになおさら、同社と同業他社との間で、差が拡大していると考えられる。 そうした同社も2020年3月期と2021年3月期の2年間は一時的に大きな利益圧迫要因を迎える可能性がある。2018年規則に適合した新型機への入替問題があるためだ。 前述の2018年規則によって、同社は2020年3月期と2021年3月期の2年間で173,000台の既存遊技機を撤去し、新型機に入れ替える必要がある。新台と中古機を取り混ぜることになるだろうが、その総額は約600億円と弊社では推計している。過去のパターンを見ると同社は年間約200億円の機械費を計上している。すなわち、本来であれば2年間で400億円の機械費で済むところ、今後の2年間は保有する遊技台を一気に更新しなくてはならないため600億円の機械費がかかり、200億円の費用増加が見込まれることになる。営業収入がぐんぐん伸びる状況であれば、こうした費用の増加をある程度吸収することもできるだろうが、現状の事業環境ではこうした費用の増加がそのまま利益圧迫要因(減益要因)となる可能性が高い。 この200億円の費用増加分は2020年3月期と2021年3月期の2年間に配賦されることになるが、年ごとの割り振りを正確に予想することは難しい。同社自身もまだ決定していない可能性が高い。理由は機械メーカーの新型機投入のタイミングやその人気度合いによって、同社の機械購入タイミングや購入台数の判断が変わってくるためだ。 現実味は低いと考えるが、現有の旧型機の入れ替えがすべて2021年3月期になる可能性もゼロではない。その場合は上記の200億円の費用増加が2021年3月期に集中するため、当該期の業績は大きなダメージを受け、営業利益がトントンにまで縮小することが想定される。投資家の立場としてはそうした最悪のシナリオも視野には入れておくべきだろう。 遊技機入替完了後は、2019年3月期以前の収益水準に戻せるかどうかが注目点 2. 2022年3月期以降の業績の考え方 新規則準拠の遊技機への入替は2021年1月31日が期限となっているため、2022年3月期には新規則導入前の2019年3月期と同様の経営環境に戻ると考えられる。 この時、業績面でも2019年3月期の水準(営業利益200億円、EBITDA300億円)に戻るかどうかは不透明だ。“不透明”と考える理由は、出玉規制強化によってパチンコの魅力が薄れたとしてコアなファン層が離れる可能性や、パチンコ愛好者の平均年齢が全般に高齢化するなかで、パチンコ人口の減少が加速する可能性などがあると考えるためだ。 現状では、2022年3月期の業績が2019年3月期の水準に戻る可能性は半分以上あると考えているが、仮に上記のように業績が戻らない状況が起こった場合でも、それは同社にとって別な意味での大チャンスということができるだろう。そうした状況になれば、パチンコホール業界のほとんどの企業が深刻なダメージを受け、事業撤退の判断を迫られるところが続出することが想定されるためだ。リーディングカンパニーである同社にとっては、残存者利益による新たな成長ストーリーの始まりとなり、成長軌道を回復できる可能性が高いと弊社では考えている。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之) 《MH》