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ダイナムジャパンHD Research Memo(6):2018年規則への対応は順調に進捗(1)

2019/12/25 15:06 FISCO
*15:06JST ダイナムジャパンHD Research Memo(6):2018年規則への対応は順調に進捗(1) ■中長期成長戦略と進捗状況 ダイナムジャパンホールディングス<06889/HK>の事業は基幹事業であるパチンコホール事業と、新規事業の大きく2つから成る。現状はパチンコホール事業の収益に占める割合が圧倒的に大きく新規事業の収益貢献は極めて限定的な状況だ。しかしながら数年後には新事業の収益、特に利益の貢献割合は、それなりに存在感を持つ規模に成長すると想定される。したがって、パチンコホール事業のみならずと、新規事業についても現時点から事業の状況を把握しておくことは極めて重要だと弊社では考えている。 1. パチンコホール事業の成長戦略と取り組み状況 (1) 事業環境と成長戦略の概要 パチンコ市場の長期縮小トレンドは現時点でも大きな変化はない。公益財団法人日本生産性本部がまとめた「レジャー白書2019」によれば、2018年はパチンコ・パチスロ参加人口が950万人と前年の900万人から50万人(5.6%)ほど盛り返したものの、パチンコホールの市場規模(貸玉収入の総額)は20兆7,000億円と前年から3.3%減少した。 こうした状況を反映して、パチンコ・パチスロの店舗数も右肩下がりが続いており、2018年末の店舗数は10,060店と前年比536店(5.1%)減少した(数字は警察庁調べ)。そうしたなか、同社はグループ全体の店舗数が449店(2019年9月期末)で前期末比横ばいを維持した。 パチンコホール事業に関する同社の成長戦略は、従来から一貫している。すなわち、店舗数の拡大による成長という軸と、既存店客数の拡大という軸の、2つの軸の掛け算による成長だ。店舗数の拡大については、オーガニック出店(自社出店)とM&Aによる拡大の2つが選択肢としてあるが、ローコストオペレーションに強みを有する同社にとっては、オーガニック出店のほうがより効率的だと弊社では見ている。M&Aについては案件ごとに精査した上で、明確なメリットが得られる場合には踏み切ることになると推測される。 既存店売上高の成長については、単価より客数の確保により力点を置いて臨んでいる。パチンコを時間消費型レジャーとして浸透させようという同社の取り組み姿勢とも整合性が取れるスタンスと言える。業績動向の項で述べたように、個店ごとの特性を活かして地域密着型の地道な集客努力を行っているが、業界全体を覆う逆風が強く、客数の伸長という点では一進一退が続いている状況だ。 (2) 2018年規則への対応状況 パチンコホール業界及び同社を取り巻く状況は前述のとおりだが、前述のような顧客要因に加えて規制要因がパチンコホール経営に大きな影響を与えようとしている。 パチンコ業界に対しては2018年2月に、出玉率及び出玉数についての新たな規則(以下では「2018年規則」と称する)が施行された。大まかな内容は、1)出玉率の上限を現行の約3分の2に規制、2)大当たり1回当たりの出玉数が現行の約3分の2に規制、というものだ(2018年規則の詳細については2018年12月25日付レポートを参照)。 2018年規則がパチンコホールの経営に与える影響は非常に大きい。射幸性低下による集客への影響もさることながら、それ以上に影響が大きいのは、現在保有する遊技機をすべて2018年規則に適合した新型のものへと入れ替えなければならないことだ。具体例を示すと、400台のパチンコ台が稼働している店舗では、400台すべてを入れ替えるのに140百万円(新型機を1台35万円と仮定し、35万円×400台で計算)必要となる。そうした店舗数が100店あれば140億円が必要ということだ。 2018年規則に対しては、3年間の移行期間が設けられている。2018年2月1日から2021年1月31日までの3年間は従来規則に基づく遊技機について、認定を取得することで継続利用を認めるというものだ。同社も含めて多くのパチンコホール事業者はこれを選択しており、現状は旧規則機と2018年規則に基づいた新型機が混在している状況にある。しかし新型機は出玉規制がゆえに消費者への訴求力(魅力度)が低いため、その導入率は非常に低い水準にとどまっているとみられる。 パチンコホール事業者は今後、移行期間の残りが1年半弱(決算期で言えば2020年3月期と2021年3月期)しかないなかで、2021年2月以降も営業を続けるべく多額の投資を行うのか、あるいは見切りをつけて廃業するか、そうした究極の決断を迫られることになる。この状況はまさに、業界大再編の扉が開いた状況と言えるだろう。 同社はチェーンストア理論に基づくローコストオペレーションを実践してきており、これが同社の最大の強みとなっている。同社にとっても遊技機の入れ替え費用は決して軽くはない。しかしこれに対する備えや体力は十分に整っていると弊社ではみている。 資金面では、同社は2020年3月期中間期末時点で現金及び預金残高48,140百万円に対して有利子負債残高が4,639百万円と、差し引きで43,501百万円のネット・キャッシュとなっている。こうした豊富な手元資金に加え、自己資本比率49.2%(2020年3月期中間期末時点。当期から適用になった新リース会計基準の影響を除いた実質ベースでは76.7%)という強いバランスシートを活かして外部からも十分な資金を調達可能と考えられる。 より重要なことは、遊技機入替に投じた資金をいかに回収するか(回収できるか)ということだ。この点については、ローコストオペレーションに裏付けられた高い店舗収益力を活かして入替費用を着実に回収・返済していくことが可能だと弊社ではみている。詳細は今後の見通しの項で述べているが、同社は通常の年でも年間200億円前後を機械費として投じている。2018年規則への対応は最終期限が決まっている(2021年1月31日まで)ため、2020年3月期と2021年3月期の2期間は通常よりも機械費が膨らむことになる。その超過分(通常に比べて膨らむ分)の総額が2年間で200億円というのが弊社なりの大まかな試算だ。これは現在の同社の年間営業利益と同水準の額であり、遊技機入替費用の回収が可能だと弊社が考える理由はここにある。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之) 《MH》