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トルドー退陣に思惑【フィスコ・コラム】

2019/9/15 9:00 FISCO
*09:00JST トルドー退陣に思惑【フィスコ・コラム】 来月のカナダ総選挙に向け、トルドー首相率いる中道左派、自由党への支持が揺らいでいます。政権の大手建設会社への司法介入疑惑で失った信頼を取り戻せず、選挙戦での苦戦は必至の情勢です。政権発足当初の絶大な人気を考えると、意外な展開と言えそうです。 10月21日の総選挙(定数443議席)は、2015年に発足したトルドー政権への審判となります。今日選挙が行われた場合どの政党に投票するかを問う地元メディアの調査で、先月は保守党が35%、自由党が33%と、野党にリードを許しました。別の調査ではともに33%で拮抗。この数カ月の支持率の推移をみても両党はほぼ互角で、その都度トップが入れ替わる混戦もようになっています。 一方、党首別の支持率調査で、トルドー首相は市民政党の「緑の党」党首の後塵を拝しています。さらに、「自由党に次期政権も任せたいか」との質問に「いいえ」は51%と、30%の「はい」を大きく引き離しました。昨年行われたオンタリオ州とケベック州の議会選で自由党がいずれも敗北する波乱がありました。カナダは長期政権が当たり前ではあるものの、このままいけば政権交代もありえます。 2015年10月の総選挙で自由党が圧勝し、トルドー首相が就任すると知的で容姿のすぐれたリーダーとして世界中で人気が沸騰。隣国アメリカのトランプ政権が差別的で、力任せに保護主義へ突き進んでいったのとは好対照でした。トルドー首相の寛容な政治姿勢は、ますます好感度を上げているように見えましたが、発足当初のそうした人気はどこへ消えたのでしょうか。 政治家の家庭で育ったトルドー首相には、もともと金持ちのボンボンという嫉妬(しっと)に近いイメージもあり、就任以来、様々な面でそれが露呈されてきたようです。昨年2月に訪問先のインドで、民族衣装を着てはしゃいでいた姿は有名です。北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる新しい枠組みの策定に際してのアメリカへの追随姿勢にも、国内では不満があったのでしょう。 また、贈賄の疑いのあった建設大手SNCラバラン社を不起訴とするよう政権側が圧力をかけたとされるスキャンダルも発覚。支持率低下に拍車をかけています。トルドー首相はその疑惑を大筋で認めつつ、カナダ人の雇用を守ったとの正当性を主張しています。ただ、クリーンさを前面に押し出しているものの、失った人気を挽回するまでには至っていないようです。 トルドー政権が評価されるとすれば、カナダ経済が好調であることでしょう。米中貿易戦争を背景とする景気の先行き不透明感から、米連邦準備制度理事会(FRB)をはじめ欧州中銀(ECB)など世界の主要中銀はいっせいに緩和的な金融政策に舵を切っています。他方、カナダ経済は安定的な拡大を維持しているため、中銀が利下げを急がない方針を打ち出し現時点では金融緩和に距離を置いています。 もっとも、カナダのような成熟した国では政権交代によって経済が急激に低迷する事態はあまり考えられず、選挙への影響は限定的かもしれません。世襲政治家の政権が短命である方が、リベラル国家らしい気もします。 (吉池 威) ※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。 《SK》