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為替コラム:金融ジャーナリズムの正体見たり

2016/1/30 17:03 FISCO
*17:03JST 為替コラム:金融ジャーナリズムの正体見たり 日銀は28-29日の金融政策決定会合で、当座預金に0.1%のマイナス金利導入を盛り込むなどの追加的な金融緩和政策を賛成5、反対4の賛成多数で決めました。年初からの市場の混乱で日銀への期待は高まっていたとはいえ、市場には「サプライズ」をもって受け止められました。 現在は金融市場の実体経済への影響が大きいため、中央銀行が打ち出す政策の意図が市場に伝わらない場合には政策効果を反映できないだけでなく、むしろ意図しない方向に市場が向かう可能性があります。こうした事態を回避するため、中銀は市場に向けて政策の意図や目標などを事前に発信し、過度な不安や期待を取り除いて金融政策の効果を高める「フォワード・ガイダンス」という手法が採られています。黒田日銀の「インフレ率2%が定着するまで金融緩和を継続する」という声明もそうです。 ところが、このところ中央銀行と市場との対話に食い違いが生じるケースが散見されます。今回の日銀の政策についても、実は市場との理解にギャップがあります。邦銀のある外為ディーラーは「従来通りの質的・量的緩和だと理解していたので、日銀が金利に回帰したことは驚きだ」と指摘しています。 マイナス金利導入によって、日米の金利差拡大でドル高・円安に振れやすくなる一方、金融株を中心に売りが強まるなど副作用が大きいため、これまでのような株高・円安の展開は見込めない可能性があります。日本株の上昇が期待できなくなればドルの上昇は限定的になってしまうでしょう。 日銀と市場の認識にこうした齟齬(そご)が生じたのは、どこに問題があったのでしょうか。筆者は、あるメディアが掲載した記事こそ日銀と市場の関係を歪めた原因だと思います。その記事は、匿名を条件にした「首相側近」が、「日銀が追加金融緩和に踏み切る条件はそろっている」との内容です。日銀への圧力であることは明白です。 市場からみれば、「政府が求めている以上、日銀は緩和を実施するだろう」という市場コンセンサスが形成されていきます。日銀はこの記事に突き動かされ、間に合わせ的にマイナス金利を打ち出したわけではないでしょうが、何か唐突感があります。決定会合での評決が5対4と接戦だったことにも、委員の間で事前の意思疎通が図れていなかったことが表れています。 欧米とは異なり中央銀行の独立性が不十分な日本で、この記事は安倍政権内の上意下達に一役買ったようです。最近のメディアは権力の監視だけでは飽き足らず、権力側の片棒をかつぐサービスを始めたのでしょうか。