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オンコリス Research Memo(6):「OBP-702」についてはテロメライシンと異なるがん種で開発を進める方針

2019/10/7 15:06 FISCO
*15:06JST オンコリス Research Memo(6):「OBP-702」についてはテロメライシンと異なるがん種で開発を進める方針 ■開発パイプラインの動向 2. 次世代テロメライシン (1) OBP-702 オンコリスバイオファーマ<4588>は次世代テロメライシンとして、テロメライシンに強力ながん抑制遺伝子であるp53を組み込んだアデノウイルス製剤となる「OBP-702」の開発も進めている。2017年度のAMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)の研究プロジェクトとして採択され、現在、ヒト型骨肉腫細胞株をマウスに移植した前臨床試験を岡山大学にて進めている。投与後28日目の腫瘍の大きさをテロメライシンやp53の単独投与と比較して、約半分に抑えることが実験データから明らかとなっている。また、2019年4月に米国で開催された癌学会においても、膵管がん細胞の増殖に対して強力な抑制効果があること、膵管がん細胞の組織浸潤と転移も抑制できる可能性が動物実験モデルにより示されたこと、さらには神経芽腫細胞に対してがん関連遺伝子やテロメラーゼ活性を抑制し、非常に強い増殖抑制作用が示されたことなどが研究報告として発表されている。 「OBP-702」に関しては、テロメライシンとは異なる領域で開発を進めていく方針で、対象となる疾患は膵管がんや骨肉腫※、肛門がんなど局所固形タイプの稀少がんを想定している。現在、GMP製造に入っており、岡山大学での前臨床試験をサポートしながら、2021年頃を目途に国内または米国での臨床試験開始を目指している。 ※全身の骨や軟部組織(脂肪、筋肉、神経など)から発生する悪性腫瘍の総称で希少疾患。 (2) スーパーテロメライシン また、同社はさらに薬効の高いスーパーテロメライシンの開発も進めている。免疫力を高めるT細胞を活性化する刺激分子と腫瘍殺傷能力を高めたウイルスを組み合わせたもので、全身への転移がんや肺がん、乳がんなどを対象に開発を進めていく予定にしている。現在、独自開発品のほか、2018年2月に資本提携した米バイオベンチャーのUnleash Immuno Oncolytics,Inc.(以下、アンリーシュ)※で開発する候補品等があり、今後1年以内に開発候補品を1つに絞って前臨床試験を開始する予定にしている。 ※アンリーシュはアデノウイルス研究の専門家であるワシントン大学医学部教授が2015年に設立したベンチャーで、全身投与による転移性腫瘍への適応を目指した遺伝子改変アデノウイルスの開発を進めている。同社が現在、進めているスーパーテロメライシンの開発と方向性が合致することから資本提携に至った。同社はアンリーシュの転換社債3百万米ドルを引受けており、全て転換した場合の議決権比率は約27%となる見込み。 テロメスキャンは生産性の改善を進めながら、アカデミアと共同で臨床試験を進めていく予定 3. テロメスキャン (1) 概要 テロメスキャンは、アデノウイルスの基本構造を持ったテロメライシンにクラゲのGFPを組み込んだ遺伝子改変型アデノウイルスとなる。テロメラーゼ陽性細胞(がん細胞)に感染することでGFPが発現し蛍光発光する作用を利用して、がん転移のプロセスに深く関与するCTC(末梢血循環腫瘍細胞)を高感度に検出する。検査方法としては、患者の血液を採取し、赤血球の溶血・除去を行ってからテロメスキャンを添加しウイルスを感染させる。感染により蛍光発光したGFP陽性細胞を検出、CTCの採取といった流れとなる。これまでPET検査などでは検出が難しかった直径5mm以下のがん細胞の早期発見や、転移・再発がんの早期発見のための検査薬としての実用化を目指しているほか、検出したCTCを遺伝子解析することによって個々の患者に最適な治療法を選択する「コンパニオン診断」※のツールとしても将来期待されている。 ※患者によって個人差がある医薬品の効果や副作用を投薬前に予測するために行なわれる臨床検査のこと。薬剤に対する患者個人の反応性を遺伝子解析によって判別し、最適な治療法を選択できるようにする。新薬の臨床開発段階でも用いられる。 テロメスキャンF35はテロメスキャンに違う型のアデノウイルス遺伝子を組み込み、感染率の向上とがん特異性を高めた改良型のテロメスキャンとなる。それぞれの特性には一長一短があり、テロメスキャンは蛍光体の発光輝度が高く検出がしやすいものの、白血球にも反応し若干発光するため、前段階で白血球を取り除く工程が必要となる。一方、テロメスキャンF35はがん細胞のみを発光させるため、白血球を取り除く工程は不要となるが、発光輝度が若干弱いといった難点がある。 テロメスキャンに関しては2015年11月にペンシルベニア大学発のベンチャーであるLiquid Biotechと北米市場でのライセンス契約を締結、テロメスキャンF35については2014年12月に韓国WONIK CUBE社と韓国市場におけるライセンス契約を締結している。 (2) 開発状況 テロメスキャンの開発に関しては、子宮頸がん、膵がん、非小細胞肺がんの3領域でアカデミア等と共同で進め、検査薬としての販売承認取得を目指す方針となっている。 子宮頸がんはHPVウイルスの感染が発症原因となるが、HPVはCTCにのみ存在するため、テロメスキャンで血液の中から採取したCTCを調べることで、子宮頸がんの診断が可能となる。従来、子宮頸がん検査は子宮頸部の細胞を採取する必要があったため患者の負担も大きく、受診率が低い要因となっていた。テロメスキャンによる血液検査で診断が可能となれば、受診率の向上による子宮頸がんの早期発見や術後再発予測が可能となり、医療費全体の削減にもつながる効果が期待されている。米国でもニューヨーク大学と共同で2019年にも臨床試験を開始する予定となっており、2020年には結果が判明する見通しだ。 膵がんでは、PTC※検査薬として大阪大学消化器外科/大阪警察病院と共同で臨床研究を行っており、テロメスキャンの精度の高さが確認されている。現在、本試験に向けて評価項目についての協議を進めている段階にある。また、米国でも検査ニーズがあり現在協議を進めている段階にある。 ※PTC(Peritoneal Tumor Cell)…腹腔洗浄液から検出されるがん細胞 非小細胞肺がんでは、ペンシルベニア大学の臨床研究により、アーリーステージ、及びステージ1の患者で約90%以上と極めて高いCTCの検出率が得られている。他の検査薬の検出率はアーリーステージで約10%程度、ステージ1で約20%強程度の水準となっており、今後、テロメスキャンを用いることで肺がんの早期発見や治療後のフォローアップ、過剰な治療の抑制等の効果が期待されている。また、がんに関する臨床試験グループであるNRGにおいても肺がんのモニタリング用として利用が進んでいるほか、米Decipheraが乳がん及び消化管腫瘍の臨床試験におけるがん抑制効果を調べるための評価用としてテロメスキャンを利用している。なお、米国でのテロメスキャンのアッセイ及び受託検査についてはライセンス供与先であるLiquid Biotechが担当している。 そのほか、2017年11月に順天堂大学呼吸器内科とテロメスキャンの実用化を目的としたCTCの検出法開発及びシステム構築のための共同研究契約を締結しており、テロメスキャンの課題であったCTC検出工程の時間短縮(従来比10分の1)に取り組んでいる。従来は顕微鏡で目視によりCTCを採取しており、1回の検査で2~3時間を要していたが、これを短縮できれば検査薬としての利便性も格段に向上する。現在は1時間程度まで短縮しているが、今後はAIによる画像認識技術も活用することでさらに時間短縮を図り、同プロセスでCTCが採取できることを確認できれば、臨床試験を実施した上で薬事承認を目指していくことにしている。 ライセンス契約先の動向としては、韓国のWONIK CUBE社がテロメスキャンF35の臨床試験の準備を進めている。また、中国や欧州でのライセンス活動も継続して取り組んでいるが、検出工程における生産性が課題となっているようで、現在進めているAIによる自動化プロセスが確立されれば契約締結の可能性も高まるものと期待される。 (3) 競合状況 テロメスキャンのターゲット市場となるCTCの検査市場では、現在米VeridexのCellSearchシステムが唯一欧米市場で販売承認を受けており、乳がん・大腸がん・前立腺がんのCTC検出において使用されている。また、同業他社もCTC検査機器の開発にしのぎを削っており、開発競争が激しい市場となっている。しかし、これらの検査システムはEpCAM(上皮細胞接着分子)と呼ばれる細胞表面マーカーを検出する方法を用いており、その細胞表面マーカーの発現が低いと言われている肺がん細胞等の検出が困難であるという欠点がある。 一方、同社のテロメスキャンでは肺がん細胞を始めとするほとんどのがん種において、CTCの検出が可能なほか、生きているCTCや悪性度の高い間葉系がん細胞を捕捉することも可能となっている。また、がん転移後のCTCを分析することで患者ごとに最適な治療法を選択できるといった長所も持つ。ペンシルベニア大学で実施したCTCの検出率比較においても、7種のがん疾患のうち5種において検出率に顕著な優位差が出ているとの調査結果が発表されている。今後、臨床試験により更なるデータを蓄積し、日本、中国、欧州での新たなライセンス契約の締結や、テロメスキャンの販売拡大を目指していく方針となっている。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲) 《YM》
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ウイルス遺伝子改変技術を用いてがん治療薬を開発する「ウイルス創薬」バイオベンチャー。テロメライシンは富士フイルム富山化学と国内販売提携契約を締結。研究開発費は増加。23.12期通期は米国売上が増加。 記:2024/02/25