ケネディクス Research Memo(7):新中期経営計画では「ケネディクスモデル」の更なる発展を目指す
2018/9/14 15:07
FISCO
*15:07JST ケネディクス Research Memo(7):新中期経営計画では「ケネディクスモデル」の更なる発展を目指す
■成長戦略
ケネディクス<4321>は、2015年に定めた長期ビジョン「Kenedix Vision 2025」のもと、2018年12月期からは、新たな3ヶ年の中期経営計画「Partners in Growth, Next 2020」をスタートしている。
1. 長期ビジョン
同社は、2025年の長期ビジョン「Kenedix Vision 2025」として、受託資産残高4兆円、グループ時価総額2兆円(2018年6月末時点では7,709億円)、ROE 15%を掲げている。特に、受託資産残高は、過去8年間(2009年から2017年まで)で1兆円から2兆円に倍増してきたペースをさらに加速し、2017年からの8年間で2兆円から4兆円へ倍増させる計画である。これまで同様、メインスポンサーREITと私募ファンド(コア)、私募ファンド(オポ)の3つの柱に加えて、機動的な私募ファンド(ブリッジ・開発等)の取り組みや不動産クラウドファンディング、海外など新規領域の開拓により、ファンド層の多角化を図りながら安定的・持続的な成長を実現する方向性と言える。また、AUM拡大に向けたM&A機会も模索する方針である。
特に、3つのプラットフォーム(メインスポンサーREIT、私募ファンド、不動産クラウドファンディング)をそれぞれ強化するとともに、そこに同社の競争力(物件のボリューム感やソーシング力、ファンド組成力・運用力等)を足し合わせることにより、AUMの成長と投資家層の拡大を目指す戦略である。注目すべき点は、総資産の規模や財務レバレッジ(有利子負債比率)を現状から大きく拡大することなく、受託資産残高を積み上げることで収益性(資本効率)を高める方向性が示されているところであり、まさに「ケネディクスモデル」ならではの独自の成長シナリオとなっている。
2. 中期経営計画
2018年12月期よりスタートした新たな中期経営計画「Partners in Growth, Next 2020」は、前中期経営計画の方向性を継承し、「ケネディクスモデルの発展期」と位置付けられている。すなわち、同社の強みである投資案件の組成力と運用力を高め、顧客投資家層を拡大し、ケネディクスモデルを多方面に発展・深化させることで、同社の収益基盤を一層強化する。また、機動的な投資と健全な財務体質を維持しながら、資本の有効活用と株主還元の充実を図り、不動産アセットマネジメントのリーディングカンパニーとして企業価値の一層の向上を目指す方針である。定量計画として、ROE(3年平均)10%以上、総還元性向(3年平均)50%以上を掲げている。
基本方針と重点施策は以下のとおりである。
(1) 不動産アセットマネジメントを中心とするビジネス領域の拡充
a) 受託資産残高(AUM)と安定収益の拡大につながる多様な投資機会の創出
b) 国内外における顧客投資家層の拡大と投資家リレーションの深化
c) 投資案件の組成力と運用力を向上させる運用体制の強化
d) アセットマネジメントの付加価値を高める関連サービスの強化
e) ビジネス領域の拡充に資する戦略的M&A や事業提携の模索
(2) 機動的かつ戦略的な投資の推進
a) 顧客投資家との共同投資の推進
b) 当社グループ運用ファンドの成長につなげる機動的な投資の実行
c) 海外や成長分野でのビジネス拡大に資する戦略的な投資の実行
d) 分散と規律の保たれた投資ポートフォリオの維持とモニタリング体制の強化
e) 財務の健全性と透明性の堅持
(3) 時代の変化を捉えた新たな成長分野の開拓
a) アジア市場における事業の拡大
b) 米国市場でのアウトバウンド投資ビジネスの推進
c) ホテル、民泊、サービスアパート等の滞在型施設運営ビジネスの推進
d)「不動産×金融×テクノロジー」に焦点を当てた新ビジネスの立ち上げ
(4) 持続的成長と社会的責任の両立に向けた経営基盤の強化
a) 組織と個人の生産性を高める社内インフラの進化
b) ケネディクスモデルの礎となる多様な人材の確保・育成
c) 社会の変化に応じた柔軟な働き方の追求
d) ESG(環境、社会、ガバナンス)への取り組み推進
弊社でも、景気循環や不動産市況等の影響をある程度受けながらも、「ケネディクスモデル」を確立してきた同社にとっては、好調な外部環境(投資対象としての不動産への注目度の高まり等)を追い風としながら、持続的な成長を実現することは可能であると評価している。注目すべきは、「ケネディクスモデル」をさらに発展させるための具体的な施策とその成果にある。その意味では、潤沢なキャッシュポジションを生かした戦略的M&Aや事業提携の方向性はもちろん、新たな成長分野への取り組み(アジア市場への展開、民泊やサービスアパートメントを含めた滞在型施設運営ビジネスの推進、不動産を対象とするクラウドファンディング等)など、社会の構造変化や技術革新をいかに自らの成長や「ケネディクスモデル」の発展に結び付けられるかがカギを握ると言えるだろう。また、それらが同社の成長性や収益性がどのような影響を及ぼすのかについても今後の動向を見守る必要がある。独自のポジショニングやビジネスモデルを展開する同社ならではの価値創造に期待したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
《NB》