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萩原工業 Research Memo(4):合成樹脂加工製品事業と機械製品事業の2本を柱とする(2)
2016/7/14 15:13
FISCO
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*15:13JST 萩原工業 Research Memo(4):合成樹脂加工製品事業と機械製品事業の2本を柱とする(2) ■会社概要 「バルチップ」はリオ五輪関連需要も享受 c)戦略製品群 トップシェア、高い収益性、成長性などの観点から、戦略製品を選定する。現在は、「バルチップ」「粘着テープ原反」「その他高機能化製品」「フィルムスリッター」が相当する。全社の売上総利益率は26.5%(2015年10月期)だが、戦略製品群は30%超となり、萩原工業<
7856
>の「金の成る木」(cash cow)になる。 2015年10月期の戦略製品群の売上高は全体の46.2%を占めた。総売上高は前期比1.6%増であったが、戦略製品群の6.4%増が非戦略製品の2.2%減を補った。全体の売上総利益率は26.5%と前期比0.9ポイント上昇した。2016年10月期は、総売上高の伸び率6.5%に対し、戦略製品群の売上高は8.1%の増加が見込まれ、売上高構成比が前期比0.6ポイントアップの46.8%を想定している。 戦略製品群は、市場や競合などの事業環境の変化により、入れ替わる。大きな展開のポテンシャルを有する新製品に「メルタッククロス」がある。同製品は、野菜・果実用の袋であるプロデュースバッグに使用される。昨年、全米最大の食品包装材メーカーに採用された。長期契約のため、継続的なビジネスが見込まれる。 d)バルチップ−海外の社会インフラ投資と外環道で拡大中 「バルチップ」(BarChip)は、期待の戦略製品だ。同社が長年培ってきたプラスチック繊維延伸・製造技術から開発された、セメントコンクリート用ポリプロピレン補強繊維である。 当初はアスベストの代替品として誕生し、1995年の発売以来、瓦、外壁材などの補強材として建築分野で実績を上げ、高い評価を得ている。製品の特徴は、少ない量で補強効果が得られる、はく離・はく落防止、曲げタフネスの向上、耐食性に優れるなどである。 使用例としては、オーストラリアの鉱山と日本の関東地方の外環道路が知られている。オーストラリアの鉱山向けは、中国経済の成長率鈍化や資源価格の下落により、需要が減少傾向にある。一方、用途開発が進んでおり、民間建築や社会インフラ整備にも使用されるようになったため、全体としては拡大傾向にある。現在好調なのは、中南米の鉱山や社会インフラ整備投資関連からの需要だ。建築用途では、バルチップが土間床用コンクリートに使用されることで、鉄筋・金網が省略でき、施工性が向上し、工期短縮が図れることが評価されている。リオ五輪に関連した需要も取り込んでいる。今後、東京オリンピック関連でも、需要が期待される。土木用では、鉄道の軌道用として枕木の高さ調整コンクリートの補強、コンクリート道路の補強、トンネル覆工用モルタル・コンクリートの剥落防止・ひび割れ抑制補強に使用されている。 日本では施工と施工後の開放時間が短い、排水性と静音性が良いなどの理由から、アスファルト舗装が圧倒的に多いが、コンクリート舗装は長寿命が利点で、中南米では普及しつつある。コンクリートのひび割れ抑制に、バルチップが使われる。 1997年に、大成建設<
1801
>、ブイ・エス・エル・ジャパン(株)、日豊商事(株)と同社の4社は、ポリプロピレン繊維混入の吹付けコンクリートを共同で開発し、特許を出願した。販売窓口は、同社が担当しており、1998年に発売した。 大手ゼネコンの実証試験によると、従来品のスチールファイバーに比べ重量が11.5%で済み、コストも35%低下させることができた。使用方法は、一般のレディミクスコンクリート工場で製造したコンクリートに、現場で投入する。繊維投入時には投入機を用いるため、煩雑な作業を軽減できる。また、ミキサー車に直接投入することも可能だ。繊維をコンクリートに添加する時間が3~5分間程度で済むため、工程への影響は小さい。繊維の添加率は、コンクリートの容積当たりで1%と小さい。比重が軽いため、材料搬入や混入作業負荷が軽減される。吹き付け作業時に、スチールファイバーと違い、繊維を踏み抜く恐れがない。ミキサーやコンクリートポンプ車の損傷が極めて少ない。 プラスチックのため錆びず、耐硫酸性、耐腐食性及び耐アルカリ性に優れ、火災時も有毒ガス(ダイオキシン類、塩化水素ガス)の発生がない。グレーに着色しているため、美観が良い。トンネルなどのコンクリートの骨材には海砂が使われており、スチール製品は錆びるので不向きだ。 2003年に、NEXCO(旧日本道路公団)の「トンネル施工管理要領」においてトンネル覆工コンクリート用補強繊維「パルチップJK」の使用が可能になった。コンクリートに添加した繊維の架橋効果により、コンクリート片の落下を防止し、第三者被害の予防に寄与することが確認された。 東京外環道路を始め首都圏を中心に交通プロジェクトが目白押しとなっており、バルチップの需要が旺盛だ。東京外環道路でのバルチップの使用は始まったばかりで、今年度に本格化する。2016年10月期の業績予想に反映されている。 のり面補強工事は、従来工法のラス金網による補強とスチールファイバーを使用した工法、そして有機繊維(バルチップ)を使用した工法がある。金網は、のり面にある浮石の落下や吹付けたモルタルのダレを防ぐ。人手による金網の設置作業は、地山状態が悪いと危険作業になる。スチールファイバー(鋼繊維)は、モルタルに補強用スチールファイバーを混入して吹き付ける。有機繊維に比べると質量が重く、作業員への負担が大きい。また、経年劣化で錆が生じる。バルチップを使用する工法は、有機繊維を混入したモルタルをのり面に吹き付ける。金網を省略でき、吹付け厚を軽減できる。モルタルのダレが抑えられ、作業性が改善する。金網を用いる従来工法と同等以上の曲げ強度を実現し、モルタルのひび割れ防止、ひび割れ進展の抑制、はく離・はく落が抑制され、耐久性が向上し、美観が保持され、第三者被害が防止される。 新しい用途として、沖縄の浮桟橋土台の強化に使用された。土台は発泡スチロールをコンクリートで覆ったものでできており、コンクリートにバルチップを混入することで薄く覆っても強度が得られる。土台が海水につかるため、バルチップの軽量で錆びない特性も向いている。 同社がバルチップを発売して20年近く経過したことから、参入者が出てきた。サプライヤーが増えることは、市場拡大を加速させるメリットがある。補強繊維市場では、同社が約7~8割の圧倒的なシェアを持つ。同社の強みは、コストアドバンテージ、太さの違うファイバーを持つ品揃えと用途開発などトータルメリットにある。 新製品「メルタッククロス」に大きなポテンシャル e)メルタッククロス − 全米最大のプロデュースバッグメーカーが採用 3年前に海外市場で発売し、昨年、全米最大のプロデュースバッグメーカーとの長期契約締結に成功した。EUの大手食品用包装材会社とは、まだスポット注文にとどまっているが拡販予定である。 欧米では一般的に使用されているプロデュースバッグは、フィルムとネットのコンボバッグで、通気性があることから、野菜や果実の新鮮さを保つのに適している。同社が提供するネットは、加工性能に優れるうえ、糸が細く、軽く柔らかいものの、強度が強く、糸目がずれないという特長を有する。また、豊富な色を揃えているため、中身の野菜や果実に応じてネット部の色を選ぶことができる。従来品は、同社製品と比べ、糸が太く、硬く、重い。同社製品は、特にオレンジやアボカドなどの表面に傷が付くことを嫌う果実に適している。 メルタッククロスは、延伸強化された複合ヤーンをタテヨコに使っており、タテ糸とヨコ糸が熱融着されているためズレやほつれが起こりにくい。同社の独自製造技術を使用していることから、まったく同じものを他社がつくることは難しい。売価は、競合先と同等レベルを提示した。まだ、量産を開始したばかりだが、今後、用途拡大を図り、生産量の拡大によりコストダウンを進める。 同製品は、日常生活で大量に消費されるものに使用されることから、大きなポテンシャルがある。当然、事業拡大にまい進するが、一方、特定用途と顧客に大きく依存した場合のリスクも考慮して経営を行う方針でいる。 f)機械製品事業 フラットヤーン製造技術を応用して、幅広い用途向けにスリッター(裁断機)を開発、製造・販売している。レジ用紙ロールのスリッター、偏光フィルムを裁断するスリッター、タッチパネル用フィルムのスリッターなどでトップシェアを持つ。リチウムイオン電池(LiB)のセパレータ用のスリッターも手掛ける。大気汚染に悩む中国は、プラグイン・ハイブリッドカー(PHV)や電気自動車(EV)などのエコカー普及のために補助金政策をとっており、同国内におけるリチウムイオン電池の生産増加、ひいてはセパレータ用スリッターの需要拡大が見込まれる。 超音波を活用したスリッターは、切りくずがでないため食品事業者に向いている。不織布や織物製品は、裁断に刃物や高温熱を使うとほつれが出やすいが、超音波であれば対象物を0.1ミリメートルの精度で裁断できる。ティーバッグ用不織布の裁断に使用されている。 g)プラスチック再生機「HuSS再生ペレット製造装置」 プラスチックの再生機とは、廃プラスチックを粉砕し、熱を加えて溶解した後、不純物を取り除いてペレット状にする機械になる。食品トレーなどは、水にぬれていても乾燥しながら再生する機能を備えている。同社は、台湾のプラスチック加工メーカーと業務提携をして海外生産を行うことでコストダウンを図っている。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健) 《TN》
関連銘柄 2件
1801 東証プライム
大成建設
6,648
11/26 15:30
+64(0.97%)
時価総額 1,217,688百万円
1873年創業の大手ゼネコン。建築事業の売上比率が高い。新国立競技場などで施工実績。クアラルンプール国際空港など海外でも実績多数。リニューアル、エンジニアリング事業関連プロジェクトなどに経営資源を配分。 記:2024/08/09
7856 東証プライム
萩原工業
1,390
11/26 15:30
-12(-0.86%)
時価総額 20,708百万円
合成樹脂加工製品事業を展開。国産ブルーシートでトップシェア。防音シート、スノーテックス、土のう等のほか、スリッターなどの機械製品事業も。岡山県倉敷市に本社。原材料見直し等による原価低減に取り組む。 記:2024/10/07
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萩原工業 Research Memo(1):戦略製品群により新規市場を開拓