2024/12/24
飛島ホールディングス Research Memo(7):2027年度に売上高1,600億円、営業利益96億円を目指す
*11:07JST 飛島ホールディングス Research Memo(7):2027年度に売上高1,600億円、営業利益96億円を目指す
■飛島ホールディングス<256A>の今後の見通し
(3) 重要業績評価指標(KPI)と数値計画
1) 業績評価指標
既述のアクションプランに対して、様々なレベルにおいて「重要成功要因」と「業績評価指標(KPI)」を定めている。
2) 数値(定量的)目標
また具体的な業績の数値目標について、最終年度である2028年3月期に、売上高1,600億円(うち建設事業1,200億円、グロース事業370億円、イノベーション事業30億円)、営業利益96億円(うち建設事業50億円、グロース事業38億円、イノベーション事業8億円)、営業利益率6.0%、経常利益81億円、当期純利益55億円、ROE10.0%を目指す。この目標数値を見ると、最終年度(2028年3月期)に数値が急増する計画になっているが、これは当初の2年間は「投資先行」の時期であり、その成果が出てくるのが最終年度と見ているためだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
《HN》
2024/12/24
飛島ホールディングス Research Memo(6):中期経営計画の推進により企業価値の向上と持続的成長の実現を目指す
*11:06JST 飛島ホールディングス Research Memo(6):中期経営計画の推進により企業価値の向上と持続的成長の実現を目指す
■飛島ホールディングス<256A>の今後の見通し
4. 「中期経営計画(~2027)」:6つのアクションプランと数値目標
(1) 概要
同社では、既述の「Innovate the future plan」の推進・遂行に加えて、企業価値の向上と持続的成長の実現に向けた具体的なアクションプラン及び定量的目標を「中期経営計画(~2027)」として発表している。この計画は、収益基盤の拡充、株式市場から求められる資本コストや株価を意識した経営、その実現に向けて経営ガバナンスの強化等を図り、「Innovate the future plan」を実現していく。
「中期経営計画(~2027)」におけるアクションプランの実践にあたっては、ホールディングス機能を活用し、資本効率・事業成長・サステナビリティへの適合という3つの問いとその解の組み合わせで、事業ポートフォリオの不断の見直しを行い、企業価値の向上と持続的成長の実現を目指す。
(2) 企業価値向上へのアクションプラン
具体的なアクションプランとして、「収益基盤の拡充」「資本効率の向上」「サプライチェーンの再構築」「企業文化の変革と人財戦略の再構築」「ガバナンスの強化」「安定的な株主還元」を掲げている。それぞれのプランに対して、「施策」と「定量的な目標」を定めて実行していく方針だ。
1) 収益基盤の拡充
グループ全体の投下資本効率を向上させ、次世代型事業ポートフォリオの構築に向けた戦略投資により事業領域を拡充しつつ、事業規模の拡大を図る。
株主資本と期間収益を原資として、これを株主還元及び戦略投資に振り向ける。全体では550億円の投資を行う計画だ。投資の内訳としては、既存の建設事業、グロース事業、イノベーション事業への投資が350億円(既に実行済み)となっているが、加えて今後3年間で、新規グロース事業(インフラアンチエイジング)への戦略投資が150億円、新規イノベーション事業(建設リスキリング)への戦略投資が50億円となっている。これらの投資を行うことで、最終年度の事業規模(売上高)1,600億円を目指す。
2) 資本効率の向上:目標ROE10.0%(最終年度)
本計画では資本コストに基づく経営を実践していく。同社が行った金融機関等へのヒアリングによると、同社の株主資本コストは6~7%と推定され、エクイティスプレッドを3~4%と仮定すると最低限の期待収益率(ROE)は10.0%となる。そのため同社では、最終年度である2028年3月期のROEの目標を「10.0%」と定めた。
この目標を達成するために、資本効率向上を背景とした運用フローを再構築する。具体的には、既存事業は事業内容を勘案し資本構成を再構築する。事業ポートフォリオの不断の見直しを行い、子会社方式か事業部単位かなども含めて事業と資本構成を再検討する。さらに新規投資においては、ROE10%基準(案件によってはROIC基準)で判断し、各事業における投資判断もROE10.0%以上を基準とした決裁フローを明確化する。また保有資産の見直しも行い、これに基づいて政策保有株式も減少させる計画で、最終年度には「政策保有株式」をゼロ(2024年3月期末は約24億円)にすることを目指す。
3) サプライチェーンの再構築
同社では、現状のサプライチェーンとの関わりは必ずしもサステナビリティを意識したものではないと認識しており、「今後はサステナビリティを強く意識したマネジメント体系を構築・運用していくつもりだ」と述べている。そのため、次のような施策を実行し、「サプライチェーンの再構築」を目指す。
サステナブル経営のさらなる高度化を推進するためサステナビリティ推進部を新設し、グループ会社を一元的にマネジメントする。またサプライチェーンマネジメントとして、ESGテーマを含めた事業の持続性向上のためPDCAサイクルの運用を強化する。
またインフラアンチエイジングに向けた以下のサーキュラーエコノミーへの取り組みを強化する。
・既存構造物の有効活用(リニューアル)
・建設構造物の長寿命化・再利用可能な建設資材の開発
・建材再利用を前提とした設計技術の高度化の推進
これらは、「材料」「工法」「用途」「メンテナンス」等すべてに当てはまるものであり、スクラップ&ビルドよりは持続性が高いと考えられることから、「インフラアンチエイジング」への対応は、同社の重要な経営戦略として位置付けられている。
4) 企業文化の変革と人財戦略の再構築:人的資本経営の実践
グループ全体における人事施策の統合運用により、企業と従業員の持続的成長を両立させ相乗効果を最大化する。具体的には、採用の多様化やグループ内での人財交流・配置転換の活性化により、様々な事業分野・部門での経験を積ませ、個人のキャリア形成のニーズに対応する。
また、人財価値の高度化と企業戦略の持続性の実現に向けたタレントマネジメントを実践していく。人財価値の高度化については、従業員個々の専門性に基づく専門性ごとのゴール設定を明確化し育成投資を実施する。ゴールは企業と従業員それぞれの専門性の高度化を背景に設定する。一方、行動変容に資する教育・育成体制を並走し、マネジメントへの登用を見据えたサクセッションプランを運用、人財価値の向上と企業価値の向上をマッチングするグループ人事体系を構築する。
ホールディングス会社内で、採用の多様化・職種・エリアを共有し、人事交流を循環させる。タレントマネジメントについては、エグゼクティブマネージャーの育成を目指して「行動変容教育・育成プログラム」を作成、その中に「スペシャリスト育成プログラム」を置く。このスペシャリスト育成プログラムはさらに「エンジニア部門」と「コーポレート部門」に分けられ。それぞれに高い専門性を持った高度人財を育成していく。
エンジニア部門:シビルエンジニア、ビルディングエンジニア、フロンティアエンジニア
コーポレート部門:コーポレートスぺシャリスト(経理・財務・法務・営業)
5) ガバナンスの強化
ホールディングス化に伴い取締役体制を再構築し、監査等委員会設置会社とすることで、社外取締役が過半数を占める監査等委員会による監査機能の強化と意思決定の透明性を強化する。
またIR・SR活動を強化するため、以下の施策を実行する。
・IR推進部の新設・情報開示内容の充実(英文開示対応等)
・決算説明会の開催(2回/年)、対投資家ミーティング(10回/年)
6) 安定的な株主還元:2028年3月期にDOE4.0%以上
同社では、株主への利益還元を経営上の重要課題と位置付け、資本効率の向上と株主還元の充実を図ることが重要であると認識している。このため株主還元の基本方針を「企業価値向上のための成長投資や財務の健全性とのバランスを考慮し、安定的な株主還元を行う」としている。
この方針に沿って、株主還元の基本方針を「自己資本配当率(DOE)を指標とした還元方針」に転換した。これにより、具体的な目標を、2028年3月期に株主資本550億円(2023年度実績471億円)、DOE4.0%以上(同2.9%)としている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
《HN》
2024/12/24
飛島ホールディングス Research Memo(5):建設事業とグロース事業はインフラアンチエイジング産業へ
*11:05JST 飛島ホールディングス Research Memo(5):建設事業とグロース事業はインフラアンチエイジング産業へ
■飛島ホールディングス<256A>の今後の見通し
(1) 建設事業
a) 「短期」視点
建設事業の深耕を進める。今後は、高齢化が進み経済そのものも循環型へ移行すると同社では考えており、これに伴い新築需要よりもリニューアル需要が増加すると見ている。そのため、短期的にはリニューアルの比率を高めていく方針だ。
一方で、デジタル化技術を活用した業務見直しによる施工プロセスの省力化を推進する。さらに、この省力化で得られた技術やノウハウを、将来的にはイノベーション事業へと昇華させていく計画だ。この実例として、現在イノベーション事業において(株)ネクストフィールド(DXサポートサービスを担う日本電信電話<9432>(NTT)との合弁企業)が事業展開しており、そのサービスを同社グループの建設事業へ導入していく。一方で、これらの導入ノウハウをネクストフィールドへフィードバックし、さらなるサービス向上を図る。
b) バトンゾーン
循環型社会への移行を見据えてリニューアル市場への対応を強化する。長期的に目指している「インフラアンチエイジング事業」へ向けての「中間時期」との位置付けである。
・技術の高度化による競合との差別化を推進する
・リニューアル工事におけるコスト競争力を強化する
(2) グロース事業
a) 「短期」視点
既存の事業領域から、グロース事業の領域を拡充していく。具体的には、「既存事業領域」を、新規投資を行うことで「戦略領域」へ拡大していく。
b) バトンゾーン
さらにバトンゾーンにおいては、インフラアンチエイジング技術を有する企業※との連携(技術開発・人財育成・官民連携など)を推進し、新領域や技術開発を拡充する。
※ 建設関連においては、長寿命化技術やノウハウを保有する企業。環境領域においては、環境配慮技術・ノウハウ・商品などを保有する企業。防災・減災においては、防災技術・ノウハウ、また防災商品などを保有する企業。
イノベーション事業は建設リスキリング事業へ
(3) イノベーション事業
a) 「短期」視点
建設DXサービス事業を、既存領域から戦略領域(新規投資)へ拡充していく。具体的には、現在行っているDX化(人でやる部分をDX化)をさらに進歩させた高度なものを導入する。またサポートサービスにおいても、さらにより高度なものを提供していく。
b) バトンゾーン
地域建設業に向けた建設DXサポートサービスを活用した「経営バリューアップ支援サービス」を展開していく。
経営バリューアップ支援サービスとは、建設のみならず災害時の緊急対応など地域の安全・安心を守るために不可欠な機能を有する地域建設業を維持する目的で、後継者不在・人財不足等の問題を抱える企業へDXサービス・建設技術・人財・資金等を提供することで地域創生に貢献することである。具体的には、地方建設業支援のために、DXサポートシステムの導入、人財交流等による建設技術支援、資本提携、資金提供などを行う。
(4) 「長期」視点/トランスフォーメーションの姿
長期的な視点からは、各事業ともに「次世代型事業ポートフォリオの確立」によりトランスフォーメーションを実現していく。まず建設事業とグロース事業においては、循環型社会を見据えて「インフラアンチエイジング事業」へと昇華させる。イノベーション事業においては、「建設リスキリング事業」へと昇華させる。
≪インフラアンチエイジング事業≫:循環型社会への適応
「インフラアンチエイジング事業」とは、狭義の建設事業やインフラリニューアル事業の枠を超え、建設に関わる技術の提供だけでなく、「循環型社会」を背景としたインフラの安全性・信頼性の維持に関わる一連の建設関連サービスを提供する複合事業を指す。このような目標に向けて、建設事業は「総合建設領域」へ、グロース事業は「専門領域事業」へと拡大していく。対応領域としては、長寿命化、環境関連、防災・減災、リニューアルなどがあり、マーケットとしては、地域創生フィールド・海外フィールド/PPP(官民連携)フィールドなどがある。
≪建設リスキリング事業≫:未来のConstructionをつくる(非建設も視野)
将来予測される建設供給力ギャップを補うために、業界のデジタル化により生産プロセスと労働力の高度化を推進し、建設業の持続可能な成長を支える基盤(プラットフォーム)を提供する事業を展開する。したがって同社では、必ずしも現在の建設業にはこだわってはいない。対応領域としては、Digital Construction、経営バリューアップ支援などがある。マーケットは地域建設企業及び建設関連企業などである。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
《HN》