マーケット
11/22 15:15
38,283.85
+257.68
44,296.51
+888.04
暗号資産
FISCO BTC Index
11/26 0:37:35
14,753,708
フィスコポイント
保有フィスコポイント数
  
今月フィスコポイント数
  

ワコム Research Memo(4):“テクノロジーカンパニー”の原点に立ち返り、3つの戦略を通じて成長を目指す

2019/6/6 16:34 FISCO
*16:34JST ワコム Research Memo(4):“テクノロジーカンパニー”の原点に立ち返り、3つの戦略を通じて成長を目指す ■中長期成長戦略の進捗状況 1. 4か年中計『Wacom Chapter 2』の概要 ワコム<6727>は2018年5月、井出信孝代表取締役社長兼CEOの就任に合わせて新中期経営計画『Wacom Chapter 2』(2019年3月期~2022年3月期)を発表した。新中計策定の背景や内容の詳細については2018年6月12日付レポートに詳しいが、概要は以下のようになっている。 新中計のテーマを簡潔に言うと、“テクノロジーカンパニー”であるという原点に立ち返って成長を目指すということになる。同社はペン入力デバイスのパイオニア企業であり、その市場に深くフォーカスして切り拓き、成長を遂げてきた。ペン入力デバイスの市場は本格拡大期にあり、競争も年々激しくなってきている。その中で同社は、長年積み重ねてきたペンとインクのデジタル技術を最大限に活かして顧客に寄り添ったデジタルインク体験の提供を通じ、同社自身の収益成長を実現することを目指している。目標の実現に向けては、1)Technology Leadership、2)Island & Ocean、3)Extreme Focus、の3つの全社戦略を掲げている。 中計の遂行にあたってはこの3つの全社戦略を中核に据え、その時々の状況に応じて重点取り組み事項を設定し、それらの着実な実行を通じて収益成長を目指すことになる。3つの全社戦略や主な重点取り組み事項の進捗状況については以下で詳述する。 業績面での目標として、4か年計画の最終年度にあたる2022年3月期において、連結営業利益率10%、連結売上高1,000億円(すなわち営業利益100億円)、連結ROE15~20%、の3つを掲げている。最終年度に至るまでの途中経過については、各年の業績予想を着実に達成して収益水準の底上げを図っていくことになる。 前述のように初年度の2019年3月期については、売上高及び営業利益以下の各利益項目について業績予想を達成することが出来た。ただし、これも前述のように、2つの事業部門では明暗が分かれた。また製品別サブセグメントについても、順調に回り始めているところと、課題が多いところが混在している。中計における全社取り組みや重点取り組み事項は、各製品の販売動向に姿を変え、最終的に業績として落とし込まれる。2019年3月期を終えたところでは、全体として及第点だが克服すべき課題も多く残されている、というのが妥当な評価ではないかと弊社では考えている。 パートナー企業とのアライアンスや技術開発への積極投資を着実に実行 2. 『Technology Leadership』の取り組みと進捗 Technology Leadership(テクノロジー・リーダーシップの推進)とは、ペンとインクのデジタル技術の領域において主導権を取り続けて行く強い意思を表明したテーマと言える。この実現に向けて同社は、CTOオフィスを新設して中長期的な技術ロードマップを明確にし、イノベーションを加速していく方針で臨んでいる。 2019年3月期は、VR(Virtual Reality、仮想現実)やMR(Mixed Reality、混合現実)などの次世代技術やデジタル文具、ディスプレイ、5Gといった先端技術の領域を中心に、パートナー企業とのアライアンス(協業)関係の構築・強化に取り組んだ。その具体例については2018年11月30日付レポートに詳しいが、具体的事例として、英Gravity Sketch社とのVR領域での協業、米Magic Leap社とのMR領域での協業などが挙げられる。 また、Technology Leadershipの実現のためには技術革新への積極的な投資が不可欠であることは言うまでもない。同社は2019年3月期においてほぼ前期並みの43億円の研究開発費を投じた。全社・全項目に渡って費用構造の見直しを進める中で研究開発費を前期並みの水準を維持したことは、技術開発を重視する同社の姿勢が凝縮されていると言えよう。また人材面でも、エンジニアリング領域の強化を狙って20名超を採用するなど、中長期を見据えた投資を着実に行っている。 “アイランド”、“オーシャン”それぞれの取り組みは着実に進捗。 最も重要な連携の強化とそれによる成果の実現は今後の課題 3. 『Island & Ocean』の取り組みと進捗 Island & Ocean(アイランド&オーシャンによる緊密な連携)とは、端的にはブランド製品事業とテクノロジーソリューション事業について、2つの事業間のあらゆる機能において連携を加速させ、イノベーションや新事業領域の開拓、持続的成長などへとつなげていくことを意味する。その前段として、ブランド事業については「島」に見立てて、創造性発揮のために最高体験を顧客に提供すべく技術を深耕していくとしている。一方、テクノロジー事業は「海」に見立てて、自社技術のデファクト・スタンダードの地位の確立を通じてペンとインクのデジタル技術を広く普及させていくとしている。 ブランド製品事業については、1)環境変化(消費者の消費行動やし好、あるいは流行など、同社の製品需要に影響を及ぼすあらゆる事業の変化を言う)を捉えた製品ポートフォリオのシフトと最適化や、2)ビジネスモデル、顧客への価値提供の改革 が重点取り組み事項となっている。2019年3月期の具体的な進捗としては、クリエイティブビジネスのなかにあるディスプレイ製品において、これまでにない6万円台のエントリーモデルを計画通り投入したことが挙げられる。ブランド製品事業セグメントの不振の主因となったペンタブレット製品の領域では、中低価格帯のカテゴリー内での他社との競合という側面もあるが、ユーザーのし好が黒板のようなペンタブレット製品から液晶画面に入力するディスプレイ製品へと移行している面も強く、他社もこれまでにない様な低価格のディスプレイ製品を市場に投入し始めている。同社はこれまでそうしたユーザー層のし好の変化を吸収する製品を有していなかったが、ディスプレイ製品のエントリーモデルの投入により、問題解決に向けて一歩踏み出したと言える。 ディスプレイ製品のエントリーモデルの投入(とその成功)から弊社では様々なインプリケーションを感じている。その中の1つは、これまでの製品開発では同社の価値観を市場やユーザーに押し付けていた面もあったがディスプレイのエントリーモデルは市場の変化に同社が柔軟に対応しようという姿勢の変化の産物だ、というものだ。今期から製品ポートフォリオの抜本的な組替えに着手するとのことであり、こうした弊社の理解が正しければ、次のヒット商品の開発も十分可能性が高いとみている。 テクノロジーソリューション事業では、技術のデファクト・スタンダード化や、ビジネスモデルについてソリューションモデルへの転換(売り切りからソリューション提案への転換)が取り組みテーマとなっている。業績動向が表すように、スマートフォンでデジタルペンを標準搭載するサムスン電子のGalaxy Noteシリーズには納入シェア100%で同社のペン・センサーシステムが搭載されている。また、タブレットやノートPCにおける標準搭載のデジタルペンにおいても、同社のアクティブES(AES)方式の電子ペンが広範囲に採用されており、ディスプレイのフォルダブル(折り畳み方式)化の動きに対する技術的な対応準備も着々と進めているとのことから、デファクト・スタンダード化に向けた取り組みは着実に進捗していると言える。 アイランドとオーシャンそれぞれが進捗しているのは上述したとおりだが、Island & Ocean戦略の本質は両者の連携によって効果を最大限に生かすことだ。この点についてはまだ緒に就いたばかりのようだ。2つの事業の連携は開発エンジニアリングやオペレーション(調達、生産管理等)など、幅広い領域に及ぶ。これらの努力は今現在も行われているのは疑いないが、まだ結果に結びついていないためだ。進捗度の測定には様々な方法があろうが、例えば、テクノロジーソリューション事業でのベストプラクティス(成功事例)をブランド製品事業に活用し、その結果同セグメントの業績が計画を上回ることができれば、Island & Ocean戦略が機能していると評価できるのではないかと弊社では考えている。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之) 《ST》
関連銘柄 1件
6727 東証プライム
704
11/25 15:30
-5(%)
時価総額 102,784百万円
ペン・センサーシステムの提供等を行うテクノロジーソリューション事業が主力。ディスプレイ製品、ペンタブレット製品なども。高いブランド力が強み。ブランド製品事業では商品ポートフォリオの刷新など構造改革図る。 記:2024/10/06