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日本の衛星測位システムの現状と展望【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】
2020/11/17 15:48
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*15:48JST 日本の衛星測位システムの現状と展望【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】 文部科学省、総務省、経済産業省、国土交通省の連携により、2006年に準天頂衛星測位システム「みちびき」(QZSS:Quasi-Zenith Satellite System)の導入が決定した。準天頂衛星システム「みちびき」は、日本、アジア及び太平洋地域をカバーする衛星測位システムである(ここで言う「準天頂軌道衛星測位システム」とは、日本列島のほぼ直上を飛行する軌道にある衛星から測位信号を配信するシステムのことである)。それまで衛星測位情報の配信体制は主に米国のGPSに頼ってきたが、それを補完する衛星測位システムとなる。 2010年9月11日に初号機(設計寿命:10年)が打ち上げられ、2017年には3機(設計寿命:15年)が追加で打上げられた。2018年11月から、3機の準天頂軌道を周回する衛星と1機の赤道上の静止衛星からなる準天頂測位衛星システムの運用が開始されている。みちびき初号機の開発、打上げ、運用には約400億円、2~4号機には合計約2,000億円の国費が投入されたという。 内閣府宇宙開発戦略推進事務局は、2020年に初号機の後継1号機と2023年に新たに3機を追加し7機体制での運用を計画しており、日本独自の精密測位が可能となる見込みである。世界では、これまでに米国のGPS(30機体制)、ロシアのGLONAS(24機体制)、欧州のGALILEO(30機体制)、中国の北斗(32機体制)、インドのIRNSS(7機体制)などが運用されている。 それぞれの大国や国家群が、独自の衛星測位情報システムを保有、運用するのは、他国に依存するには大きなリスクを伴う重要な国家インフラだからなのであろう。衛星所有国の都合による信号配信の停止や、意図的な妨害も可能であり、安定使用が担保されない可能性がある。さらに精密誘導兵器や大陸間弾道ミサイルの運用など国家安全保障に直接関わることも考えられる。国家としては、自国の意思に基づきコントロールできるシステムを保有する方が望ましいという考え方だろう。 日本では、2018年の運用開始以後、各府省が衛星測位システムを活用した各種実証実験などを実施しており、新たなサービスや商品の開発が進められている。農業分野では、IT技術も駆使し、労働不足を補うための遠隔監視や、自動走行の無人農機による精密農業システムの実験が行われている。物流分野では、センチメーター級信号をドローンの自律飛行制御に活用したピンポイント配送の実証実験が開始されている。その他、自動走行技術による車両制御、高密度都市情報配信による渋滞緩和、安否確認システムや災害時の危機管理情報配信サービスなど、活用分野、利用範囲は多岐に渡る。 内閣府宇宙開発戦略推進事務局は今後、測位精度、サービス稼働率、機器信頼性、機能継続性や抗たん性の向上、システム維持・更新の容易性や運用コストの低減を目指していくとのことだ。内閣府や民間市場調査会社によると衛星測位システムの経済効果は2兆円にものぼるとの試算もあり、今後、民生分野における宇宙利用の更なる推進が期待される。 サンタフェ総研上席研究員 將司 覚 防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。P-3C操縦士、飛行隊長、航空隊司令歴任、国連PKO訓練参加、カンボジアPKO参加、ソマリア沖・アデン湾における海賊対処行動教訓収集参加。米国海軍勲功章受賞。2011年退官後、大手自動車メーカー海外危機管理支援業務従事。2020年から現職。 《RS》
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