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スイスフランが動意づく【フィスコ・コラム】

2022/6/12 9:00 FISCO
*09:00JST スイスフランが動意づく【フィスコ・コラム】 スイスフランが動意づいています。ウクライナ戦争を背景とした安全通貨買いはいったん収束したものの、スイスの金融引き締めへの思惑が広がり始めたためです。欧米中銀の金融正常化に翻ろうされながらも、目先は底堅い値動きが見込まれます。 6月2日に発表されたスイスの5月消費者物価指数(CPI)は前年比+2.9%と、予想の+2.6%と前月の+2.5%を上回り、2008年9月以来14年ぶりの高水準を記録しました。スイス国立銀行(中銀)の目標である0.0-2.0%を4カ月連続で上回っています。このCPIの結果を受け、中銀が今後の引き締め方向に舵を切るとの思惑からフランは強含み、主要通貨に対して大きく値を上げる場面がありました。 スイス中銀は2011年8月から3年あまりのゼロ金利政策をさらに緩和し、2015年1月からマイナス金利を導入。同時に、1ユーロ=1.2スイスフランに設定した為替上限を突如撤廃し、急激なフラン高を招きました。この7年あまりの間は政策金利を-0.75%に設定し、さらに為替介入でフラン高を抑止する通貨安政策を続けました。その効果もあり、2017-18年はユーロ高・フラン安に向かっていました。 ところが、2019年4月をピークに欧州経済の減速を受けて再びユーロ安・フラン高圧力が強まり始めました。そして、2020年の新型コロナウイルス、2022年のウクライナ戦争を背景に3月には1ユーロ=1フランのパリティ(等価)に下落(フランは上昇)。一方、アメリカのコロナ禍からの回復に伴うインフレ高進で米連邦準備制度理事会(FRB)がタカ派姿勢を強めたため、今年5月には1ドル=1フランに上昇(フランは下落)しています。 フランは円と同じ安全通貨として知られ、フラン・円は動意の乏しい通貨ペアの1つです。しかし、今年前半ですでに14円程度変動しており、ここ数年の間では2016年前半に次ぐ大きな値幅となっています。一方、日銀は黒田東彦総裁をはじめ当局者が繰り返し緩和政策の堅持を主張。足元は円売りがフランを押し上げており、137円台と2015年1月のフラン急進以来の高値に水準を切り上げています。 中銀のメクラー理事はインフレ率が中銀の目標範囲に収まらない場合、躊躇なく金融引き締めを進めると地元紙のインタビューに答えています。長年のマイナス金利と通貨安政策が浸透したスイスで金融引き締めといわれてもピンときませんが、いずれにしても金融政策は転機を迎えているようです。ECBは7月利上げの方針を固め、スイス中銀は6月16日開催の定例会でそれに追随するか、注目されます。 (吉池 威) ※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。 《YN》