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フェローテク Research Memo(9):中期経営計画は全面的に見直し。今後は投資と財務基盤のバランスが重要課題

2020/8/24 15:49 FISCO
*15:49JST フェローテク Research Memo(9):中期経営計画は全面的に見直し。今後は投資と財務基盤のバランスが重要課題 ■中長期の成長戦略 1. 中期経営目標の概要 フェローテックホールディングス<6890>では、今後の中期的成長を達成するために2022年3月期を最終年度とする中期経営目標を発表し、その定量的目標(2022年3月期)は、売上高:1,200~1,300億円、営業利益:120~130億円、営業利益率10%超、ROE10%超、ROIC6%超、自己資本比率40%超を掲げていた。しかし、半導体業界の失速やコロナの影響で、世界的に景気の先行きが不透明となっていることから、この計画目標を一旦白紙とし、改めて新計画を発表することとした。 2. 戦略製品の近況と見通し (1) 石英製品 石英製品はマテリアル群の中でも特に順調に売上を伸ばしていく見通し(消耗品需要の底堅さ)である。半導体需要の直近ピークであった2018年をしのぐ需要となる見通しである。そのため、中国の浙江省杭州・常山、江蘇省東台、日本の山形市に工場を配置し、増産体制を構築する。 (2) セラミックスとCVD-SiC セラミックスとCVD-SiCは、日本における「材料、加工、コーティング技術」の開発優位性が強みである。中国の浙江省杭州工場では、需要が旺盛なファインセラミックスの生産能力の増強を計画している。 (3) 半導体ウエーハ 2020年3月期は、パワーデバイスや自動車向け需要などの市況軟化もあり、下期は販売も弱含みとなった。6インチについては、足元での需要は旺盛でフル生産を行っている。2021年3月期下期で月産46万枚体制を目標(6万枚増)とする。8インチは自社での直販体制を強化している。杭州新工場での顧客認定を推進しており、2021年3月期中に月産10万枚→20万枚への体制構築を目標とする。12インチについては現在中国の半導体メーカー数社への認定が進行中である。このため、2021年3月期下期に量産を開始する見通しである。杭州ウエーハ工場の8インチ、12インチ新規顧客獲得に向けた認定取得と量産拡大にも注力している。 (4) 新規事業:再生ウエーハ事業へ参入 中国半導体国産化の加速により、モニターウエーハ(量産開始前用途)の再生需要が急増している。そのため、同社は再生ウエーハ事業への参入を決定した。今後のスケジュールとしては、2020年11月工場竣工、2021年1月試作開始、同4月量産開始の予定である。 ウエーハ事業のリソース、洗浄事業のノウハウを転用し、被膜除去プロセスは、パートナーと技術提携する。同社子会社と中国の安徽省銅陵市政府の投資ファンドによる共同出資で、持株比率は7:3、投資額は約7,650百万円(第1期)、目標月産数量は10万枚程度だが、最終的には、月産20万枚程度を想定(時期未定)している。 (5) 部品洗浄 中国国内に特化した事業である。半導体及びFPD(有機EL、液晶)顧客の生産拡大に連動して毎年順調に事業規模を拡大している。半導体マテリアル製品と同様に、顧客の生産稼働に連動する「ストック型」事業であるため、安定した売上の確保がしやすい(今後も事業拡大が堅調に続く見通し)。現在、5拠点6工場を整備し、増産対応を継続していることから、中国国内での同社シェアは60%に迫る。半導体顧客へのきめ細かい営業、サービス対応で、今後は共通の顧客に再生ウェーハ(新規事業)の供給をすべく、横展開を図っていく。安徽省銅陵の政府系ファンドも出資先に加わり、今後事業拡大となるプロジェクト受注を目指す。中国半導体、FPD顧客の新規プロジェクトが相次ぐ環境であることから、銅陵での生産能力増強を予定している。 (6) サーモモジュール 同社のコア技術であり、用途は豊富である。特に5Gの通信機器用が拡大する見通しである(中国では、2020年末までに60万ヶ所の5G用通信基地局設置の計画あり)。そのほか、民生用(ウェアラブル)やIoT・家電関連など、社会のデジタル化に伴い用途・需要が拡大している。足元ではコロナへのPCR検査に用いられる装置への用途も増加している。 (7) パワー半導体基板 世界的な消費電力削減のトレンドの波に乗り、順調に拡大している。パワー半導体市場は、同社資料によると2030年に4.2兆円規模に達すると予想されている。貿易摩擦の影響などもあり、中国内でのシェアが拡大している。グローバルメーカーからの認定取得数も増加している。現在の顧客は、主に欧州、日本、中国となっている。 今後、自動車分野でも需要が増加すると予測される。DCB(Direct Copper Bonding)基板に加え、新たにAMB(Active Metal Brazing)基板も投入予定である。江蘇省東台のパワー半導体基板工場は生産能力を拡大中で、2022年3月期以降も増収の見通しとなっている。月産能力(2020年内)は、上海・東台工場合わせてDCB基板60万枚、AMB基板10万枚の計画である。 3. 今後の課題:投資と財務基盤のバランス 同社は2016年3月期から2020年3月期までの5年間、中国での半導体関連を中心に高水準の設備投資を行ってきた。これらの投資のかなりの部分を外部資金で賄ってきた。この間に有利子負債も2016年3月期末の167億円から2020年3月期には784億円へ大きく膨らんだ。この結果、自己資本比率は2016年3月期末の49.1%から2020年3月期末には25.5%と30%を割り込む水準まで低下した。 同社によれば、設備投資額は2020年3月期がピークとしているが、2021年3月以降もそれなりの高水準が続く見込みである。その一方で、財務の健全性を考えれば、これ以上有利子負債を増やすことは難しい。今後は、成長に向けた投資を継続すると同時に、資金調達の多様化等により財務体質の改善を図ることが大きな経営課題となるだろう。特に、ウエーハ事業は投資額が多額に上っているものの、回収が遅れている。そのため、事業パートナーを探すと同時に、場合によっては一部事業の売却も視野に入れる段階にあると思われる。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇) 《EY》
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時価総額 115,863百万円
真空シール、石英製品、セラミックス製品等の製造・販売を行う半導体等装置関連事業が主力。サーモモジュール、パワー半導体用基板等の電子デバイス事業も。デジタル化・自動化の推進などで生産効率の向上を図る。 記:2024/10/06