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トランプ・リスクを避けるには【フィスコ・コラム】
2019/9/1 8:00
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*08:00JST トランプ・リスクを避けるには【フィスコ・コラム】 アメリカのトランプ大統領の言動がすべて悪いとは思いませんが、対中貿易政策に関しては明らかに度を越しており、横暴さに拍車がかかっているように見えます。世界経済は、なおトランプ政権の軛(くびき)から逃れられないのでしょうか。 今年のジャクソンホールでのシンポジウムで、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が大きく注目されました。同議長は追加利下げに直接言及しませんでしたが、個人消費のけん引により国内経済は良好としながらも、成長持続に向けた「適切な行動」を強調。今後の継続的な利下げに含みを持たせました。目先の金融市場の方向性を示唆するとみられていたとはいえ、市場は想定を大きく上回って反応しました。 その日はFRB議長の講演に先立ち、中国側が先に米国製品への制裁関税を打ち出します。トランプ大統領はそれにすぐさま反応し、9月1日発動の「第4弾」をはじめ、税率引き上げをツイッターで表明し、米中貿易戦争の激化による世界経済の一層の減速懸念が広がっていました。それにパウエル議長のハト派的な講演が加わり、ドル・円は105円台に急落。そして、26日には年初来安値を割り込みました。 この米中貿易摩擦関連の「トランプ砲」で市場が沈滞ムードに陥るのは、一体何度目でしょう。トランプ大統領は中国に対する態度を和らげたかと思うと周期的に怒り出し、その都度混乱を引き起こしています。外為市場は安全通貨買い、株式市場は売り一辺倒。そして、債券市場には過剰に資金が流入し、ドイツ国債はすべての年限でマイナスになる異常事態となっています。 ジャクソンホールでパウエル議長と同じ日に講演に臨んだカーニー英中銀総裁は、ドル支配の市場が世界経済の安定性を損なっていると警鐘を鳴らしました。同総裁は、ドルが変動相場制に移行した時代と現在に変わりはないとし、「ドルの優位性は超低金利に伴う流動性の罠や低成長のリスクを増大させた」と指摘。ドル中心のためアメリカ経済の影響を受けやすい現状に対し、代替通貨を確立する必要性を訴えています。 もともとヨーロッパはアメリカの影響を抑えるため地域通貨の創設を考案し、ユーロを流通させた経緯があります。ユーロなどが、例えば石油取引の決済に使用されるなど代替通貨としてのプレゼンスを高められれば、ドルの影響力、さらに言えばトランプ支配を弱められるかもしれません。しかし、ドルに代わる通貨として期待されたユーロは、実質実効為替レートをみても、代替通貨になりえていない状況です。 ユーロ加盟国が初心に戻り結束して信用力を取り戻そうとしても、トランプ大統領の退陣には間に合わないでしょう。カーニー総裁の発言は、グローバルな仮想通貨がドルに代わる準備通貨になりうるとの趣旨とされています。それも1つの考え方です。いずれにしても、一人の人間によって金融市場が右往左往させられる状況はおかしい、との考えが根底にあるのでしょう。 (吉池 威) ※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。 《SK》
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