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米中激突:ウイルス発生源「武漢研究所説」めぐり(1)【中国問題グローバル研究所】

2020/5/11 15:23 FISCO
*15:23JST 米中激突:ウイルス発生源「武漢研究所説」めぐり(1)【中国問題グローバル研究所】 【中国問題グローバル研究所】は、中国の国際関係や経済などの現状、今後の動向について研究するグローバルシンクタンク。中国研究の第一人者である筑波大学名誉教授の遠藤 誉所長を中心として、トランプ政権の ”Committee on the Present Danger: China” の創設メンバーであるアーサー・ウォルドロン教授、北京郵電大学の孫 啓明教授、アナリストのフレイザー・ハウイー氏などが研究員として在籍している。関係各国から研究員を募り、中国問題を調査分析してひとつのプラットフォームを形成。考察をオンライン上のホームページ「中国問題グローバル研究所」(※1)にて配信している。 ◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している遠藤 誉所長の考察を2回にわたってお届けする。 ——— トランプが「証拠を見た」として中国の責任を追及し中国が猛反発している中、CNNは「米同盟国諜報もトランプ説を否定」と報道し、BBCは武漢研究所へのアメリカの過去の資金提供を暴露した。米中激論のゆくえは? ◆危ない賭けに出たトランプとポンペオ アメリカのコロナ感染者数の爆発的な増加は目を覆うばかりだ。感染者数は122万人を超え(アメリカ東部時間5月6日時点で122万3419人)、死者数も7万2千人を超えている。心が痛むのはその増加率(増え方)が未だに大きいことだ(参照:外務省データ〔※2〕)。 1月31日のコラム<習近平とWHO事務局長の「仲」が人類に危機をもたらす>(※3)に書いたように、人類を破滅の危機に追いやっているのが習近平(国家主席)であり習近平に忖度をしたWHO事務局長のテドロスであることは論を俟(ま)たない。1月23日にWHOは習近平のために緊急事態宣言を延期し、1月30日になってようやく発布しても肝心の「中国への渡航と貿易を禁止する」という条件を付けないとして緊急事態宣言を骨抜きにした。その結果、ウイルスを持った中国人が全世界に散らばっていったのだから、その罪は償えないほどに重い。コロナが一段落したら、人類の全てが習近平の責任を問わなければならないのは明らかである。 この理由だけで十分なのに、トランプ(大統領)はウイルスの発生源が「武漢ウイルス研究所だ」と言い出し、ポンペオ(国務長官)も5月3日にテレビで「膨大な証拠がある」と断言したため、トランプもまた「証拠を見た」「証拠はたくさんある」と言ってしまった。 これだけの犠牲者を出せば、そう言いたくなる気持ちは分かる。人類すべてが怒っていると言っても過言ではない。 しかしそれでも中国の責任を追及するに当たり、ウイルスの発生源を持ち出してしまうのは危険だ。万一にも科学的に否定されてしまったらトランプ政権の敗けになる危険性を孕んでいる。アフターコロナでの米中のパワーバランスに影響をもたらすので、慎重に発言してほしかったと個人的には思う。 ◆トランプ説を否定する論拠を披露したCNN 懸念はつぎつぎと現実になりつつある。 5月4日、アメリカのCNNは“Intel shared among US allies indicates virus outbreak more likely came from market, not a Chinese lab”(※4)というタイトルの記事を発表した。日本語で書けば「アメリカの同盟国(ファイブアイズ)は、ウイルスのアウトブレーク(爆発的流行)は中国の研究室からではなく、市場(いちば)から来た可能性が高いという認識を共有した」となる。 ファイブアイズというのは「アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド」の5ヵ国による連盟で、高度の諜報(インテリジェンス)を秘密裏に共有している。そのファイブアイズのインテリジェンスが、「ウイルスの発生源は武漢ウイルス研究所ではなく、自然発生的に動物から(何らかの形で)人に感染するという経路をたどっている可能性が高い」と表明したのだから、トランプにとって有利なはずがない。 CNNの報道では、アメリカのコロナに関する免疫学の権威で、トランプのアドバイザーになっているファウチ博士も「ウイルスが研究室から発生したとは信じていない」と述べているという。 ◆BBCが武漢研究所へのアメリカの資金支援を暴露 一方、イギリスのBBCは4月29日、<アメリカはコロナウイルス研究資金援助を中止した このプロジェクトはこれまで武漢ウイルス研究所と協力していた>(※5)と報道している。 BBCニュースによれば、ニューヨークにあるEcoHealth Alliance(エコ・ヘルス連盟)は過去20年間に渡り、25ヶ国とウイルスに関する共同研究をしてきたが、2015年からは研究経費を「オバマ政権時代の国際医療研究協力の一環」として位置づけ、アメリカ政府が国立衛生研究所経由で370万ドルを支払ってきた。共同研究の相手には、なんと武漢ウイルス研究所も含まれており、研究テーマはこれもまた、なんと、「コロナウイルス」である。 つまり、武漢ウイルス研究所のコロナウイルス研究に関する資金の一部は、アメリカ政府から出ていたことになる。おまけに「アメリカとの共同研究」だ。 ポンペオが「膨大な証拠がある」と言うのも「むべなるかな」。 あれだけオバマ政権の施策を批判してきたトランプだが、これもまた、なんと、トランプ政権になってからもこの科研費を支払い続けており、最後の支払いは2019年7月となっている。 この件に関してトランプは今年4月17日の記者会見で質問されたが、その日の内にアメリカ国立衛生研究所がEcoHealth Allianceに連絡し、さらに4月24日になってアメリカ国立衛生研究所がEcoHealth Allianceに「武漢ウイルス研究所への資金提供を中止する」という指示を出した次第だ。 これら一連の経緯は、BBC中文サイト以外では英文版“Why The U.S. Government Stopped Funding A Research Project On Bats And Coronaviruses”(※6)でも報道されている。たとえBBCでも中文サイトでは信用できないと思われるかもしれない方のために、念のためご紹介しておこう。 (本論はYahooニュース個人からの転載である) 「米中激突:ウイルス発生源「武漢研究所説」めぐり(2)【中国問題グローバル研究所】」へ続く 写真:AP/アフロ ※1:https://grici.or.jp/ ※2:https://www.anzen.mofa.go.jp/covid19/country_count.html ※3:https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20200131-00161213/ ※4:https://edition.cnn.com/2020/05/04/politics/coronavirus-intelligence/index.html ※5:https://www.bbc.com/zhongwen/trad/world-52479296 ※6:https://www.npr.org/sections/goatsandsoda/2020/04/29/847948272/why-the-u-s-government-stopped-funding-a-research-project-on-bats-and-coronaviru 《SI》