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習近平緊急会議の背後に「武漢赤十字会の金銭癒着」(2)【中国問題グローバル研究所】

2020/2/12 15:53 FISCO
*15:53JST 習近平緊急会議の背後に「武漢赤十字会の金銭癒着」(2)【中国問題グローバル研究所】 【中国問題グローバル研究所】は、中国の国際関係や経済などの現状、今後の動向について研究するグローバルシンクタンク。筑波大学名誉教授の遠藤 誉所長を中心として、トランプ政権の ”Committee on the Present Danger: China” の創設メンバーであるアーサー・ウォルドロン教授、北京郵電大学の孫 啓明教授、アナリストのフレイザー・ハウイー氏などが研究員として在籍している。関係各国から研究員を募り、中国問題を調査分析してひとつのプラットフォームを形成。考察をオンライン上のホームページ「中国問題グローバル研究所」(※1)にて配信している。 ◇以下、遠藤 誉所長の考察『習近平緊急会議の背後に「武漢赤十字会の金銭癒着」(1)【中国問題グローバル研究所】』の続きとなる。 ——— また2月1日16:18には、協和医院の看護師が鳳凰網新聞センターの「正面FACE」に語った音声がウェイボー(微博、weibo)(※2)で発信された。鳳凰網による看護師への取材動画はこちら(※3)でも観ることができる。削除される可能性があるので、念のため複数ご紹介しておく。看護師が何を訴えたのかに関して、以下に概略を記す。 • 協和病院には医療用防護服が、もう1着もないのです。 • ニュースを見て、数万のN95マスクが武漢紅十字会(赤十字会)に届いていることを知りましたが、私たちのところ(協和病院)に届いたのは3000枚の普通のマスクでした。協和病院には8000人の職員がいるのに、3000個のマスクで足りるはずがありません。 • 看護師長によると、紅十字会に物資を取りに行くときは、協和病院だと言わないようにしないとなりません。協和医院だと言ったら、物資をくれないのです。なぜなのか、理由は分かりません。 • 協和病院は武漢で最初にコロナウイルス患者を受け入れる病院として指定されました。それなのに防護服がないので、協和病院西院ではゴミ袋で防護服を作って働く写真を見たということです。それが本当かどうかは分かりませんが。 これ以降、中国大陸のネットは炎上したのである。 ◆なぜこのようなことが起きているのか? 協和医院の看護師長でさえ、なぜだか分からないと言っているので、ここからは推測的な考察となる。 まず考えられるのは、1月24日付のコラム「新型コロナウイルス肺炎、習近平の指示はなぜ遅れたのか?」(※4)で以下のように書いた。 ——1月19日に中国政府のシンクタンクの一つ中国工程院院士(博士の上のアカデミックな称号)である鐘南山氏率いる「国家ハイレベル専門家グループ」が武漢市の現状視察にやって来た。そこで現状を把握した一行は、その日の内に北京に引き返し、中央に報告したという。こうして習近平の知るところとなり、20日に習近平が「重要指示」をやっと発布することになったわけだ。 この時に鐘南山院士が視察した先が武漢一の病院である協和医院だった。そこで「人‐人」感染があることを知ったのだ。 実は協和医院の脳神経外科が1月7日に趙軍実という患者の外科手術をした。このとき趙軍実氏は新型コロナウイルスに感染していたらしい。しかし武漢市はまだ新型コロナウイルス肺炎の事実を公けにしていないので、脳神経外科の医者たちは認識していなかったようだ。ところが1月11日になって、患者が原因不明の肺炎に罹り、15日になると、その病原菌が新型コロナウイルスだと診断された。この患者によって、手術や治療に当たった14人の医者・看護師が新型コロナウイルス肺炎に罹ってしまったという。 趙軍実の感染源は武漢市の海鮮市場である可能性が高いが、手術や治療に当たった医者や看護師たちは誰一人海鮮市場には行っていない。つまり野生動物に直接接触はしていないのである。全員、患者である趙軍実から感染したことになる。 医者たちなので、新型コロナウイルスは「人‐人」感染することを自ら確認した。 鐘南山はこの協和医院に視察に行ったのだから、武漢で流行している肺炎は「人‐人」感染をする重要な証拠をつかんで、「これはまずい!」というので北京にとんぼ返りし、習近平に重大事態だと報告したわけだ。 これにより習近平が「重要指示」を全国に出したので、武漢市政府と湖北省政府は、「協和医院」を恨んだということになる。これは勝手な推測ではなく、武漢市の周先旺市長自身が、協和医院の14名の医療関係者が感染したことに言及しているし、また大陸の少なからぬサイトがこのことを取り上げている。 たとえば1月21日に中央テレビ局CCTVの取材を受けた時に武漢市長はこのことに触れているし(※5)、また「財新」というサイト(※6)も、このことに触れている。 特に武漢市の市長がCCTVの取材の際に「協和病院の脳外科がこの患者に対して入院前に新型コロナウイルスに感染しているか否かを確認しなかったのがいけないのだ」(※7)と言っている。つまり、協和病院の脳神経外科の不注意がこの一連の感染の原因だと批判しているわけだ。武漢政府はそれまで「人‐人」感染はないとして、「十分にコントロールはできている」と偽装工作していたため、それがばれたので、協和医院のせいにしようとしているのである。 しかしCCTVの記者はひるまず、「それならあなたはなぜ1月19日に万家宴などという大宴会をやったのですか?」としつこく追い込んでいる。それに対して武漢市市長は、「いや、あれは、昔からある庶民の習慣なので…」などと弁解しているのである。 ◆仁愛医院と湖北省政府幹部との金銭的癒着 さらに一党支配体制を揺るがすようなことが起きていた。いつものことながら、ここまでの事態に立ってもなお、金銭癒着が背後でうごめいていたのである。 2月1日、独立真相調査報告「黒夜研究室」なるものが武漢赤十字会に関してさらなる真相を暴いた。その結果が多維新聞(※8)に出ている。それによれば「仁愛医院の大株主は湖北省政治協商会議の委員だ」ということである。 また仁愛医院は湖北省赤十字会や武漢赤十字会と2012年から2019年の間に何度も協力イベントを開催したことがある。 北京の新京報網(※9)によれば、このイベントは「不妊治療」に関するもので、湖北省赤十字会と、このたびマスク1.6万個(のちに1.8万個と訂正)が配られた武漢の仁愛医院および天祐医院は、湖北省の不妊治療イベントで多くの資金を提供したという。 おまけに湖北省赤十字会の会長は湖北省の副省長で、金にまみれた背後関係がうごめいている。湖北省政府と武漢政府は赤十字会を通して美容整形や不妊治療あるいは性病治療などの分野で仁愛医院と天祐医院の二つの民間医院と金でつながった関係にあった。そこにはさらに別のマスク製造民間企業との持ち株などに関する利害関係が複雑に絡んでいる。 ◆習近平が緊急会議! 武漢赤十字会の、あまりに驚くべき実態にネットが炎上しているため、北京にある中国赤十字会の代表団が2月1日、武漢を視察した。人民網(※10)やその傘下の環球時報の電子版である環球網(※11)などが伝えている。しかし、そのようなことで事態が収まるはずがない。 2月3日、習近平・中共中央総書記をトップとする「チャイナ・セブン」(中共中央政治局常務委員会委員7人)は会議を開催し(※12)、新型コロナウイルス肺炎に対する中央の領導小組(指導グループ)から事情を聴取し、現況に関する討議を行った。 その結果、習近平は厳しく現状を批判し、概ね次のように述べている。 ——このたびの感染は我が国の統治システムと能力に対する大きな試練だ。対応策の中で露呈した数々の弱点を改善しなければならない。経験から教訓を学び、一層の検証を行い改善せよ!*注記(文末) これに関して例えば「北京共同」が「初動対応の遅れに対する国民の強い不満を無視できなくなったとみられる」(※13)と書いているためなのか、日本メディアは一斉に、あたかも「習近平が謝罪した」ようなことを報道しているが、原文のどこに「初動の遅れ」や「謝罪」などと書いているだろうか。 この緊急会議は武漢赤十字会のスキャンダルに対して緊急開催されたものである。 だから日本の報道は「なぜか、突如」と、その理由が分からず「きっと初動対応が遅れたからなのだろう」と推測しているだけで、一つ一つのファクトの検証を行っていないように思われる。 そのようなことをしていたら、「習近平を国賓として招聘すること」同様、それが如何に間違った選択であるかを判断する力をも鈍化させる。注意を喚起したい。 *注記:長すぎるので控えたが、習近平は特に「中でも湖北省と武漢は重点中の重点だ」とも述べ、「医療防護物資の供給を保障せよ」と強調している。さらにまったく「謝罪」とは無関係である証拠に「今年の経済社会発展の目標達成に努力せよ」とも檄を飛ばしている。日本は一律「自分が見たい方向」にニュアンスを勝手に変えて報道している。「希望的観測」という主観で客観的事実を捻じ曲げると真実は見えなくなる。それは結果的に日本の国益を損ねる。 (本論はYahooニュース個人からの転載) 写真:新華社/アフロ ※1:https://grici.or.jp/ ※2:https://www.weibo.com/u/7200286002?is_hot=1 ※3:https://www.weibo.com/7200286002/IsbYV1l3o ※4:https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20200124-00160069/ ※5:https://cj.sina.com.cn/articles/view/6115560351/16c840b9f01900mxvn ※6:http://www.caixin.com/2020-01-22/101507157.html ※7:http://m.news.cctv.com/2020/01/22/ARTIpQRcFCgOa3B6daHrwYBI200122.shtml ※8:https://www.dwnews.com/%E4%B8%AD%E5%9B%BD/60166645/%E4%B8%8D%E6%AD%A2%E5%92%8C%E8%8E%86%E7%94%B0%E7%B3%BB%E5%8C%BB%E9%99%A2%E5%8B%BE%E5%85%91%E6%B9%96%E5%8C%97%E7%BA%A2%E5%8D%81%E5%AD%97%E4%BC%9A%E8%A2%AB%E8%B5%B7%E5%BA%95 ※9:http://www.bjnews.com.cn/finance/2020/02/01/682488.html ※10:http://society.people.com.cn/n1/2020/0201/c1008-31566710.html ※11:https://baijiahao.baidu.com/s?id=1657343619844632860&wfr=spider&for=pc ※12:http://www.mca.gov.cn/article/xw/tt/202002/20200200023944.shtml ※13:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200203-00000180-kyodonews-soci 《SI》