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アイエスビー Research Memo(5):3つの重点戦略の推進で年率10%台の利益成長を目指す(1)

2022/3/29 15:15 FISCO
*15:15JST アイエスビー Research Memo(5):3つの重点戦略の推進で年率10%台の利益成長を目指す(1) ■アイ・エス・ビー<9702>の今後の見通し 1. 中期経営計画の進捗状況 (1) 中期経営計画の概要 2021年12月期からスタートした「ISBグループ中期経営計画2023」では、方針として「新しい一歩~move up further~」を掲げた。「新たなグループ価値の創出」に向け、今までの50年間の進化と新たな領域への挑戦により、より多くの顧客にソリューションを提供できる企業を目指していく。 業績目標については、後述する3つの重点戦略を推進することによって2023年12月期に売上高300億円、営業利益24億円、営業利益率8.0%を目指す。2020年12月期からの年平均成長率は売上高で7.1%、営業利益で13.1%となる。事業環境の前提として、コロナ禍の影響で企業のIT投資意欲は短期的に弱含むものの、5Gやモビリティサービス、DX関連の領域では投資意欲が旺盛で、分野によって強弱感が出てくるものと見ている。このため、業界全体では1ケタ台前半の成長率で推移したとしても、同社はそれを上回る成長を目指していく。なお、M&Aについても引き続き成長戦略の1つとして考えているが、今回の業績計画の中には織り込んでいない。初年度となる2021年12月期については、一部課題が浮かび上がったものの売上高、営業利益ともに計画を上回り、順調な滑り出しを切ったと言える。弊社では、5Gやモビリティサービスなど今後の成長領域においては、同社の高い技術開発力やノウハウが生かされるものと考えており、市場環境が前提よりも悪化しなければ業績目標値は十分達成可能な水準だと見ている。 (2) 重点戦略の成果・課題と2022年12月期の取り組み 同社は中期経営計画の重点戦略として、「顧客開拓、有望分野の拡大」「ソリューション事業の創出」「グループ経営強化」の3点を掲げ、その取り組みを推進している。2021年12月期における成果や課題、2022年12月期の取り組み方針については以下のとおり。 a) 顧客開拓、有望分野の拡大 同社は新規顧客の開拓と有望分野での受注拡大を重点戦略とし、新規顧客からの売上高を最終年度の2023年12月期に75億円とし、有望分野(5G関連、車載、モビリティサービス、医療、業務サービス)の売上比率を30%にすることを目標に掲げた。目標達成に向けた施策として、2021年12月期は顧客の課題を解決するソリューションを提案する新組織となるソリューション営業統括部を新設したほか、FAE(技術営業)※の増員による営業活動の強化、ビジネス・マッチングサービスの活用やWebサイトの充実、インバウンドセールスなどによる受注機会の拡大に取り組んでいる。なお、営業体制としては営業部とソリューション営業統括部が併設された格好となっているが、営業部では新規顧客の獲得やイベント企画・プロモーションなどを主に行い、ソリューション営業統括部では顧客ニーズや市場動向の分析、顧客課題解決のための提案を行っていくなど役割を明確に分けている。 ※FAE(Field Application Engineer)とは、技術の専門知識を生かして営業をサポートする職種。担当営業と同行して、製品やソリューションの紹介、提案、技術面における顧客の要望をヒアリングするなど技術面での営業支援を行う。 こうした取り組みにより、2021年12月期の新規顧客からの売上高は13億円となったが、会社計画の17億円には届かなかった。一方、有望分野の売上比率については20%と計画通りの進捗となった。新規顧客の開拓が計画を下回った要因として、プライム案件で多くの引き合いがあったものの、顧客の多様なニーズに応えるだけの高度なスキルを持つ技術者のリソースが不足し、受注機会ロスのあったことを挙げている。 2022年12月期はこうした課題を解消すべく、営業体制を再編しソリューション営業担当やFAEの増員、並びに事業部門と連携した営業活動の推進、営業ツールのさらなる活用に取り組んでいく。また、有望分野においても5G関連や車載などの分野では高度なスキルが必要となってきており、対応できる技術者の採用・育成を推進していくほか、ビジネスパートナーも積極的に活用していくことで、受注を拡大していく方針だ。 b) ソリューション事業の創出 ソリューション事業の創出に向けては、ソリューション提供の積極化によるプライム案件の受注拡大に加えて、プロダクトソリューション分野では他社との製品・サービスの連携や共同開発による機能追加・改善によってさらなる成長を目指していく方針を打ち出している。 2021年12月期は、DX推進など顧客ニーズを捉えた提案営業によりプライム案件の受注が増加したほか、開発業務の上流工程から受注することで収益率の改善にもつながるなど一定の成果を見せた。また、ソリューション売上高比率も20%となり、会社計画の18%を上回る結果となった。 ただ、一部のプライム案件で開発を中止するなど不採算案件が発生したことも課題点として浮かび上がった。同社では不採算案件の発生リスク低減に向けた取り組みとして、2022年12月期はプロセス改善推進室を新設し、受注見積もり段階からの精査を行っていくことにしている。プライム事業の拡大を目指していくためには、不採算案件の発生リスクをいかに低減していくかが重要となる。また、顧客ニーズを捉えた提案営業をさらに強化すべく、FAEの増員による技術提案営業を積極的に進めていくほか、ITコンサルティング企業などソリューションパートナーとの協業・提案などにも取り組んでいく方針だ。 プロダクトソリューション分野のうち、クラウド型入退室管理システム「ALLIGATE」については、勤怠管理システムや人事労務管理システムなど他社製品・サービスとの連携拡大や共同開発などの推進により売上成長を目指す。売上規模はまだ小さいものの、ストック型ビジネスモデルですでに黒字化しており、今後顧客数の積み上げにより収益も拡大していく見通しだ。 なお、JR東日本メカトロニクス(株)との共同開発により、JR東日本<9020>が発行する「Suica」などの交通系ICカードを入退室の鍵として利用できる「Suicaスマートロック」を2021年8月に発表している。「Suicaスマートロック」では、アートが提供するクラウド型入退室管理システム「ALLIGATE」と、JR東日本メカトロニクスが提供する各種IDを連携するシステム「ID-PORT」を接続することで、「Suica」や「モバイルSuica」のID番号により入退室認証を実現する仕組みとなっている。ID番号を読み取るための専用装置が不要で、汎用のリーダー・ライターや鍵装置を活用できるため導入が容易なほか、入退室ログの管理などもクラウドサービスを活用するため、事業者にとってコスト低減メリットが大きく、利用者にとっても利便性の向上につながるサービスとなる。JR東日本グループのオフィスやホテル、商業・スポーツ施設、駐車場、ロッカー等での導入が期待されている。実際に引き合いも出てきているが、半導体不足(主にマイコン)で電子錠の生産制限を受けていることもあり、導入が本格的に増え始めるのは2022年12月期下期以降となる見通しだ。 一方、MDM事業についてはアルテリア・ネットワークス<4423>との販売代理店契約が2022年3月末で終了することになったため、専門の営業組織を新設し自社販売を開始するほか代理店の開拓も行っていくことにしている。また、機能の拡充なども継続して行い、契約ID数の積み上げを図っていく方針だ。2023年12月期のソリューション売上高比率は20%を目標としているが、これらの取り組みを推進していくことで、構成比はさらに上昇する可能性があると弊社では見ている。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲) 《ST》
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