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アウトソシング Research Memo(11):5ヶ年計画により、ビジネスモデルの変革に取り組む

2021/10/19 15:21 FISCO
*15:21JST アウトソシング Research Memo(11):5ヶ年計画により、ビジネスモデルの変革に取り組む ■今後の方向性 アウトソーシング<2427>は、2020年12月期より5ヶ年の中期経営計画「VISION2024」を推進している。タイトルに掲げる「Change the GAME」には、法律やKPIが変わるなかにおいて、人材ビジネスのgame changer(変革者)となり、プラットフォームの構築を通じてフィービジネス拡大に向けた事業体への変化を実現する方向性が示されている。派遣DX化の推進による成長戦略がさらに強く打ち出される可能性もありそうだ。 1. 計数目標 以下に掲げる5つの重点施策の推進によりビジネスモデルの更なる進化を図るとともに、環境変化を見据えた抜本的な変革にも取り組みながら、5つの事業をそれぞれ伸ばしていく計画である。最終年度となる2024年12月期の業績目標として、売上収益8,200億円(5年間の平均成長率17.8%)、営業利益650億円(同33.6%)を掲げている。なお、プラットフォーム(フィー)ビジネスは、売上収益へのインパクトは大きくないものの、利益率の向上には大きく貢献する収益モデルと言える。したがって、最終年度の営業利益率が大きく改善するのは、派遣DX化の推進による付加価値の向上に加え、収益性の高いプラットフォームの構築によるところが大きい。また、財務目標としてROE 25%以上、自己資本比率30%以上、配当性向30%以上を掲げており、成長投資と株主還元のバランスを図りながら、財務の健全性を維持しつつ、資本効率を高めていく方針である。 2. 今後の重点施策 (1) 海外就労者サポートサービスの拡大 国内労働人口の減少や、それに対する政府施策(新たな在留資格の創設など)に対応するため、テクノロジーを活用したサポートメニューの拡充を図り、これまでの技能実習生をターゲットにした戦略から、すべての在留外国人をターゲットとする戦略に転換している。それに伴って、対象市場規模が50万名(技能実習生)から310万名(すべての在留外国人)に拡大するため、同社のサポート人数の計画(2024年12月期)も10万名から30万名に修正するとともに、関連する営業利益60億円を目指していく。なお、拡充するサポートメニューには、海外送金、SIM、年金脱退一時金、航空券、口座開設、住居、生活関連等を予定している。PEOスキームによる拡大戦略からの転換を進める「国内製造系アウトソーシング事業」を始め、観光分野の強化に取り組む「国内サービス系アウトソーシング事業」、グローバルな人材流動化スキームを展開する「海外製造系及びサービス系事業」に関わる戦略軸の1つとして位置付けられる。特に、後述する「WBBプラットフォーム」の基盤(入口)になるものとして捉えることができる。 (2) エンジニアとテクノロジーを融合したモデル「派遣2.0」による効率化・省人化 既述のとおり、RPAやAI等の先端テクノロジーとエンジニアをセットで供給し、業務の効率化を運用までサポートする「派遣2.0」モデルを推進し、これまでの技術職派遣領域から、自動化傾向の高い一般派遣領域への進出により、事業拡大と収益性の向上を目指していく。また、先端技術の確保に向けては、他社とのアライアンス戦略を積極的に活用していく方針である。「国内技術系アウトソーシング事業」及び「海外技術系事業」に関わる戦略軸として位置付けられる。そのうち、「国内技術系アウトソーシング事業」では、既存事業の拡大に加え、「派遣2.0」による一般派遣領域への進出及び単価向上により、2024年12月期の売上収益2,600億円、営業利益260億円(営業利益率10%)を目指す計画である。2024年12月期における派遣の技術者数(外勤社員数)は38,500名(そのうち、「4,500稼働」)を予定している。 (3) 業績の平準化につながる米軍施設向け事業や政府公共系ビジネスの更なる拡大 これまで同様、景気の影響を受けない米軍施設向け事業の拡大のほか、景気の影響を受けにくい公共系事業や物流系eコマース関連事業をグローバルに拡大していく。特に、米軍施設向け事業については、進出済みの沖縄及びグアム基地に対して、IT等の技術領域へのサービス拡大を図るとともに、予算規模の大きい米国や欧州等、グローバルへの進出にも取り組む方針であり、2024年12月期の計画として売上収益500億円を目指している。また、公共系事業については、英国の債権回収スキームをグローバルに展開する考えである。「国内サービス系アウトソーシング事業」「海外製造系及びサービス系事業」「海外技術系事業」に関わる戦略軸として位置付けられる。 (4) 世界で増える人口をチャンスに変えるためのグローバル人材流動化ネットワークの確立 引き続き、労働力が逼迫する国の人口が減少し、労働力が豊富な国の人口が増加する労働力需給ギャップに着眼し、グローバル人材流動化ネットワークの確立を目指す。特に、欧州、アジア・南米、北米の3拠点を「ハブ」として、景気や環境の変化に対応していく方針である。2024年12月期のグループの全雇用人数計画167,000名に対して、流動化人材の雇用数26,500名(約16%)を計画している。グループ全体に関わる戦略軸として位置付けられる。 (5) 人材ストックビジネスからの脱却を目指したWBBプラットフォームの構築 同社を取り巻く事業環境の変化を見据えた人材ストック型成長戦略の見直し並びに世界の労働環境の変化に合わせたインフラの必要性を踏まえ、両課題の解決に向けたWBB※プラットフォームの構築とフィービジネスモデルの強化を目指す。すなわち、国をまたぐ雇用を希望する求職者及び求人者が「安心」かつ「安全」に利用できるプラットフォームを通じて、国際送金や旅券手配、言語教育、コールセンター、給与支払事務、生活サポートなどの各種サービスを提供していく計画だ。フィービジネスでの2024年12月期の営業利益60億円を目指す。売上収益へのインパクトよりも、収益性の高い事業として注目される。グループ全体に関わる戦略軸として位置付けられる。 ※「Working Beyond Borders」の略。「はたらく」に国境をなくすという意味が込められている。 3. 弊社の中長期的な注目点 弊社では、人材ビジネスにおける国内外の環境変化を勘案すれば、同社の中期経営計画(派遣DX化への取り組みやビジネスモデルの抜本的な変革に取り組む方向性)には合理性があると判断している。特に、中長期目線で注目すべきは、これまでの人材ビジネスを抜本的に変えることになる「WBBプラットフォーム」の構築である。他社との連携を含め、いかに規模の拡大を図り、プラットフォームの優位性を高めていくのかが成功のカギを握るだろう。その点では、グローバルな人材流動化に対応する拠点を構え、就職という生活の重要な転機をおさえている同社には大きなアドバンテージがあると考えられる。また、アウトソーシングテクノロジーのIPOについても、親子上場という課題はあるものの、成長資金の確保や他社とのアライアンスなどを積極的に進めるためには、迅速な意思決定や機動的な資本政策の実施が成否を決する要因となることから、理にかなった戦略であると評価している。言うまでもなく既存株主にとっては、派遣DX化という新たな成長領域を切り開くことにより、今回のIPOによる持ち分利益の社外流出分をカバーし、さらにそれを上回る利益成長を実現できるかどうかが最大の注目点と言えるだろう。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫) 《ST》
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製造業向け人材派遣・業務請負が柱。M&Aを活用して国内外で事業拡大。昨年12月に発表したMBOの一環として米投資ファンドのベインが1株1755円でTOB実施。今年3月にTOBが成立し、同社株は上場廃止へ。 記:2024/04/10