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OPECプラス、日量1,000万バレル減産の暫定合意に至ったサウジアラビアの役割

2020/4/13 9:41 FISCO
*09:41JST OPECプラス、日量1,000万バレル減産の暫定合意に至ったサウジアラビアの役割 2017年から継続していた中東の石油輸出機構(OPEC)とロシアなど非加盟産油国による協調減産体制が3月31日で期限を迎えた。減産を行わないアメリカに不満を募らせていたロシアは、減産体制の維持を拒否、シェア拡大を目指すこととした。これに対しサウジアラビアは、4月以降、日産1,000万バレルを大きく超える水準までの増産を表明し、原油の「価格戦争」が展開されることとなった。原油の過剰供給と新型コロナウイルス感染の影響による需要減少により、年初と比較し、原油価格は50%以下に下落し、4月1日には米国の中堅シェール企業「ホワイティング・ペトロリアム」が経営破綻に追い込まれている。OPECプラスは4月9日、メキシコ以外の参加国が日量1,000万バレルの減産に暫定合意した。この暫定合意にはサウジアラビアが大きな役割を果たしている。 サウジアラビアの財政状況は、決して余裕のある状況でない。生産コストが10ドルを大きく下回る(Rystad Energy2016年資料)サウジアラビアであっても、2014年以降、国家財政収支がマイナスに転じている。その要因の1つは、世界第3位の軍事費支出(令和元年(2019年)防衛白書によると670億ドル)である。イエメン内戦への軍事介入やイランとの対立激化が大きく影響している。また、サウジアラビアの歳入における石油分野の比率は68%(2019年財務省の資料)を占めており、石油輸出に大きく依存する経済となっている。サウジアラビアを率いるムハンマド皇太子は、サウジ経済を多様化するため「サウジビジョン2030」を掲げており、この実現のための予算も確保しなければならない。 このように極めて苦しい財政状況であるが、サウジアラビアはこれまで、OPECを率いて石油市場の「需給統制役」としての地位を自負してきた。サウジアラビアが3月に増産を決意した背景には、一時的に苦しい財政状況こそあろうが、将来的にOPEC及びOPEC非加盟産油国を含めた新たな組織づくりを行い、再び「石油市場の需給統制役としてサウジアラビアを軸とした石油市場の秩序の再構築(OPEC加盟14カ国、非加盟10カ国の24ヶ国でOPECプラスを形成しているが、アメリカ、カナダ、ノルウェーなど多くの産油国をOPECプラスに取り込んだ秩序の再構築)」を選んだのではなかろうか。サウジアラビアは4月9日の会合の開催を各国に働きかけ、協調減産の暫定合意まで取り付けた。メキシコの態度硬化により、減産合意は未承認のまま、調整の結論が不透明となっている模様である。しかしながら、今回の協調減産の調整において、サウジアラビアのイニシアティブはある程度高く評価されるのであろう。なお、減産の評価は別途とする。 《SI》