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筑波精工 Research Memo(1):主力事業は高度な電界技術を使った静電チャック。電気自動車の普及は追い風

2023/6/15 12:01 FISCO
*12:01JST 筑波精工 Research Memo(1):主力事業は高度な電界技術を使った静電チャック。電気自動車の普及は追い風 ■要約 筑波精工<6596>の主力事業は、電界による吸着保持技術を生かした静電吸着システム「静電チャック(E-Chuck)」(以下、静電チャック)である。国際特許を保有している高度な技術でありながら、過去においてはあまり多くの需要が期待されていなかった。しかしここ数年で同社を取り巻く環境は変わりつつある。自動車の電気化(EV化)が急速に進み、これに搭載されるパワー半導体の薄型化が重要となってきたからだ。薄型半導体を製造するプロセスで使用されることになる同社の静電チャックに注目が集まっている。現在の売上高はまだ少額だが、自動車のEV化が急速に進むと言われている2024年以降の動向が注目される。 1. 会社の沿革と主な事業内容 同社は、電気機械器具の製造販売並びに電気機械器具の検査、測定、治工具及び金型の販売を目的として、 1985年に栃木県真岡市熊倉町で設立した。設立当初は三洋電機(株)の半導体の後工程関係の設備を設計・販売していたが、並行して社内で開発を進めてきた静電チャックの開発に目途が付いたことから、2002年からは静電チャックの研究開発と静電チャック関連製品の販売に絞った事業展開を進めてきた。 2. 2023年3月期の業績(実績) 2023年3月期の業績は、売上高は218百万円(前期比1.3%増)、営業損失は82百万円(前期は74百万円の損失)、経常損失は82百万円(同73百万円の損失)、当期純損失は91百万円(同113百万円の損失)となった。当期純損失を計上したが、手元の現金及び預金は398百万円と売上げ規模に比べて比較的豊富であり、財務上の不安はない。 当初の予想は売上高372百万円、営業利益7百万円であったが、大手顧客からの発注がずれ込んだことから2023年2月中旬に下方修正を行い、ほぼこの修正値どおりの結果となった。営業損失となったが、案件が消失した結果ではなく、期ずれによるものなので懸念される内容ではない。注目すべきは、2023年2月に海外大手ファウンドリのパワー半導体製造ライン用に同社のCarrier型静電チャック「Supporter(R)(サポーター。以下、Supporter)」が採用され、初の大型受注(約127百万円)を獲得したことだ。2023年3月期には35百万円が計上され、残りの金額は最終納期である2023年9月までに計上される予定だ。この受注自体の金額はさほど大きくはないが、今後の展開の可能性を残すものである。 3. 2024年3月期の業績予想 2024年3月期の業績は、売上高は250百万円(前期比14.6%増)、営業損失84百万円(前期は82百万円の損失)、経常損失85百万円(同82百万円の損失)、当期純損失90百万円(同91百万円の損失)と予想している。上記の大型案件の残りの金額が計上されること、この大型案件の追加や横展開が期待できること、ユーザーの12インチへの本格展開が期待できることなどから、この予想数値を上回る可能性は高いと思われるが、同社は2023年3月期の経緯もあって、かなり控え目に見ている。今後は12インチ向けに需要が一気に高まる可能性があり、同社の「Supporter」の動向は注視する必要がある。 4. 中長期の展望:自動車EV化による本格的な立ち上がりは2024年以降 同社の今後の成長マップは、自動車のEV化の進展→IGBT※1等のパワー半導体の需要の高まり→薄型ウエハでの生産の必要性→「Supporter」への需要増となる。現在までの業績は低迷しているが、今後は自動車のEV化に伴うパワー半導体のさらなる生産増が見込まれ、将来は明るいと言える。今回、海外大手ファウンドリから初受注したが、これは顧客の8インチ生産ラインの一部であり、また「Supporter」を必要とされる工程(4工程)のうち1工程でしかなかった。この点だけでも成長余地があるが、顧客側は12インチプロセスの増強を進めており、今のところ12インチの静電チャックとしては、同社製品以外に競合は見当たらない。そのため、12インチウエハによるパワー半導体の生産が本格化すれば、同社製品への需要が急増する可能性はある。またEV自動車用の需要以外にも、携帯電話向けや自動車向けの高速バッテリーチャージャーの需要も増加しており、この高速バッテリーチャージャーの必須部品であるMOSFET※2半導体の生産工程においても同社製品が使われる可能性も高い。自動車向けを筆頭に、パワー半導体の本格的な立ち上がりは、同社によると2024年以降になると見られており、今後の同社の動向を注視したい。 ※1 IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラートランジスタ)は、パワー半導体(より高い電圧、より大きな電流のコントロールを可能にする)の一種である。用途としては、“電気で動き、パワーの強弱を調整できるもの”で、電車や自動車(ハイブリッド車(HEV)やEV)、IHをはじめとする家庭調理機器やエアコン、冷蔵庫、洗濯機などがある。 ※2 MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor:絶縁ゲート電界効果トランジスタ)は、スイッチデバイスの一種。スイッチデバイスは電源を入れることで様々な機能を動かすための装置へ電力を供給する。その際に、入力電圧を各所出力電圧へ電圧変換して電力供給することが必要である。例えば、パソコンであれば、液晶パネル、CPU、メモリやオーディオアンプ、USBコネクタなどを動かすために、MOSFETが入力電圧を変換し、電力を供給する。スイッチデバイスの中でもMOSFETは、電力を高効率に流し、低消費電力に優れ、製品の小型軽量化を可能にするものである。 ■Key Points ・静電界を用いた吸着システム静電チャックが主力事業。自動車のEV化で要注目 ・足元の業績はまだ低迷中だが、採用は進みつつある。業績の立ち上がりは2024年からの見込み ・中長期の展望は楽しみだが、自動車EV化によって本格的に恩恵を受けるのは2025年以降 (執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇) 《SI》
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静電チャックの製造・販売に特化。SupporterシステムやESCステージのほか、コードレスホルダー、静電ベルト等を手掛ける。量産化案件の成功で海外半導体業界への認知度が向上。営業体制の最適化に取り組む。 記:2024/07/28