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平和RE Research Memo(5):「着実な成長」と「持続可能な利益」により、投資口の流動性向上を推進(1)
2022/2/14 15:05
FISCO
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*15:05JST 平和RE Research Memo(5):「着実な成長」と「持続可能な利益」により、投資口の流動性向上を推進(1) ■中長期の成長戦略 1. 中長期目標「NEXT VISION」 平和不動産リート投資法人<
8966
>は2009年9月に平和不動産が単独スポンサーとなり、2019年11月期で10周年を迎えた。その間、2011年5月期までの「成長基盤の再構築」、2011年11月期から2013年5月期までの「再成長軌道への回帰」を経て、2013年11月期からは「安定成長軌道」の段階に入った。すなわち、安定した資金調達による本格的な成長フェーズであり、着実な外部成長及び内部成長によって分配金向上を目指してきた。この結果、2009年11月期の物件数46件、資産規模921億円、分配金734円/口から、2021年11月期には物件数114件、資産規模1,947億円、分配金2,890円/口へと大きな成長を遂げている。 そこで同REITでは、2021年11月期より「NEXT VISION」とする中長期目標を推進している。具体的には、今後5~10年で目指す姿を「投資口の流動性向上を推進するステージ」と位置付け、「Steady Growth & Sustainable Profit(着実な成長と持続可能な利益)」をスローガンに、従来からの分配金と資産規模に加えて、格付とESG(環境・社会・ガバナンス)を目標に加えた。数値目標としては、分配金3,300円/口(2021年5月期比500円増)、資産規模3,000億円(同1,159億円増)、AA格への格上げ、再生可能エネルギー電力の導入割合100%の達成を目指す。2021年11月期には分配金と資産規模が増加、格付けはA+(安定的)からA+(ポジティブ)に引き上げられたことに加え、再生可能エネルギー電力への移行100%を達成するなど、順調なスタートを切った。なお、分配金向上については、外部成長で+236円/口、内部成長で+99円/口、費用削減で+15円/口の成長余地を見込むが、潤沢な内部留保を活用することで+5,125円/口の支払余地があることが同REITの大きな強みと言えよう。 2. 外部成長戦略 外部成長戦略で分配金向上+236円/口を達成するために、「着実かつ健全な外部成長」「継続的な入替戦略の実施」「厳選された用途・エリア」を運用方針とする。「着実かつ健全な外部成長」としては、過熱したマーケットに振り回されずにポートフォリオの質と収益性の向上に資する物件に厳選投資し、スポンサーと協働することで開発など多様な手法による取得機会の拡大を図ることに加え、フリーキャッシュ及び借入余力を活用した機動的な物件取得を行う。具体的には、資産入替を含めて年間物件取得金額150~200億円を目指す。「継続的な入替戦略の実施」としては、低収益物件、小規模レジデンスを優良なオフィスやレジデンスに入替するなど、引き続きポートフォリオの収益力改善を図る。「厳選された用途・エリア」としては、優良なオフィス及びレジデンス双方への厳選投資や、東京都区部をメインエリアとしながらもスポンサー・サポートが得られる地方大都市にも厳選投資する方針だ。 スポンサー変更以降、資産の入替戦略を積極的に進めてポートフォリオの再構築を図るとともに、稼働率の上昇や賃料改定などにより収益力強化を図った結果、次第に含み益が拡大し、NOI利回りも上昇するなど、ポートフォリオの質が大幅に改善している。今後も同戦略を推進することで、ポートフォリオのさらなる改善を図る方針である。 また、同REITのスポンサーである平和不動産は、スポンサー・サポートを活用したレジデンス開発を積極的に展開している。2015年竣工のHF田端レジデンスを皮切りに合計8プロジェクトを立ち上げた。建設中のプロジェクトについても順調に進行しており、同REITの将来のパイプラインを支えることになる。2021年11月期には、ウエアハウジング(一定期間スポンサーが保有し、タイミングを計って同REITが取得する物件)2物件と第三者からの直接取得3物件の合計5物件がパイプラインに加わった。これに加え同REITでは、普通借地権を活用したパイプラインの構築に取り組んでいる。スポンサーである平和不動産との協業により、借地権のデメリットを克服し、メリットを最大限に享受できるスキームを構築できるのが強みである。また、共有物件・区分所有物件の追加取得によって、ポートフォリオ価値の向上にも取り組んでいる。 3. 内部成長戦略 内部成長戦略での分配金向上+99円/口を達成するために、「高稼働率の維持・向上」「賃料増額に向けた取り組み」「戦略的な資本投下」「付帯収入増加と費用削減」を運用方針とする。「高稼働率の維持・向上」としては、スポンサーやPM(プロパティ・マネジメント)会社と連携し適切かつタイムリーなリーシング施策の実施によるテナント需要の取り込み、良質な運営・管理、CS(顧客満足度)対応施策によるテナント退去の防止、ダウンタイム(空室期間)の短縮などを目指す。「賃料増額に向けた取り組み」としては、テナント入替時及び契約更改時における賃料増額や是正を推進する。「戦略的な資本投下」としては、物件競争力、収益性及びCS向上につながるバリューアップ工事を計画的に実施する計画だ。オフィス及びレジデンスともに稼働率は回復基調にあり、コロナ禍の影響は軽微にとどまっていると言えよう。 オフィスの平均稼働率は、コロナ禍の影響を大きく受けた2020年11月期を底に回復基調にあり、2021年11月期には98.8%と期を通じて安定的に推移している。水道使用料から推測されるテナント従業員の出社率は、緊急事態宣言下においても回復傾向を辿り、宣言解除直後となる2021年10月にはコロナ禍前の水準まで回復している。緊急事態宣言長期化の影響から賃料改定件数は減少したものの、宣言解除と同時に交渉も進展した。一部の物件で市場賃料が低下したが、依然として十分な賃料ギャップを残しており、十分な成長余地が残っている。また、物件売買の影響を排除したオフィス・ポートフォリオの賃料(2013年11月期を100とする契約賃料指数)は104.6に低下したが、エムズ原宿の店舗入替の影響を除くと105.5と前期より改善している。さらに、フリーレント(一定期間家賃が無料の契約形態)解消に伴い、時間の経過とともに損益計算書上の賃料単価は契約賃料単価に収斂することから、自律的な賃料収入拡大によって今後5期間で+11円/口の寄与を見込んでいる。コロナ禍で一時停滞していたテナントの動きが徐々に活発化してきており、特に同REITの主要顧客は中小事業者が中心であることから、テレワーク促進等による退去の動きは見られないようだ。今後はコロナ禍の収束に伴い、従来の状況に回復する可能性が高いと弊社では見ている。 また、レジデンスにおいても、2021年11月期は非繁忙期ながら平均稼働率は96.4%と、期初に取得した巡航稼働前の新築2物件を含めてもなお高水準な稼働率を維持した。コロナ禍の影響を大きく受けた2020年11月期(94.6%)からは大きく改善している。コロナ禍に伴い、一時都心部を中心に稼働率が低下し、リーシング期間が長期化したものの、リーシング施策(募集条件の緩和など)を実施したことで、期末稼働率は97.28%と過去3番目となる高い水準をつけており、2022年5月期からの繁忙期に臨む計画だ。新規契約時賃料改定率は-2.57%と、都心の一部物件でリーシング施策として弾力的な賃料設定を行ったことが影響したが、増額改定は+6.01%と強い伸びを見せている。また、更新時賃料改定率は+1.08%、改定金額+5.3百万円/期と引き続きコロナ禍前を上回っている。契約賃料指数(2013年11月期を100とする)は、都心部のリーシング施策として弾力的な賃料改定を行ったことから若干低下し101.9となったものの、施策の効果もあり、期末には全エリア及び全物件タイプでコロナ禍前の稼働水準を回復している。今後も、LED化、高効率な空調機器及び水回り設備の導入等による環境負荷の低減、無料インターネットの導入によるテナント満足度の向上など、リニューアル工事の実施によって、物件競争力強化と資産価値の維持向上を図ることで、賃料水準の改善と収益力の拡大を目指している。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希) 《YM》
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