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ダイナムジャパンHD Research Memo(8):パチンコホール業界は大手資本による集約化が一段と進む可能性

2020/7/15 15:58 FISCO
*15:58JST ダイナムジャパンHD Research Memo(8):パチンコホール業界は大手資本による集約化が一段と進む可能性 ■ダイナムジャパンホールディングス<06889/HK>の今後の見通し 1. パチンコホール業界の状況と成長戦略 (1) 市場動向 パチンコ市場の長期縮小トレンドは現時点でも大きな変化はない。(公財)日本生産性本部がまとめた「レジャー白書2019」によれば、2018年はパチンコ・パチスロ参加人口が950万人と前年の900万人から50万人(5.6%)ほど盛り返したものの、パチンコホールの市場規模(貸玉収入の総額)は20.7兆円と前年から3.3%減少し、2005年のピークからは6割の水準まで縮小している。 こうした状況を反映して、パチンコ・パチスロホールの店舗数も減少傾向が続いており、2019年末の店舗数は前年末比4.2%減の9,639店とついに1万店舗の大台を割り込んだ(警察庁調べ)。また、設置台数についてもパチンコ機が前年末比3.0%減の2,557千台、パチスロ機が同1.6%減の1,637千台といずれも減少傾向が続いている。弊社では新型コロナウイルス感染症拡大による休業自粛要請による収益悪化に加えて、期限が1年延長されたとはいえ旧規則機から新規則機への移行に伴う投資負担増や客離れなどを懸念して、経営体力のない中小規模のホールの淘汰が一段と進む可能性があると見ている。 1店舗当たりのパチンコ・パチスロ機の設置台数を見ると、2019年末は435.3台とここ数年間は増加傾向にある。これは中小規模の店舗が減少していることを示しているものと見られる。一方で、1店舗当たり貸玉収入については20億円強と横ばい水準が続いている。貸玉収入については低貸玉店舗が増加していることも一因と見られるが、1店舗当たり収益については大型店といえども苦戦しているのが現状と言える。 ちなみに、同社グループの2020年3月期における1店舗当たりパチンコ・パチスロ機の設置台数は470台、貸玉収入は16億円強となっている。設置台数が業界平均を上回っているにも関わらず貸玉収入が少ないのは、低貸玉店舗の比率が60.9%と高いためと考えられる。前述したように、同社はパチンコを誰もが気軽に楽しめる日常の娯楽として位置付ており、低貸玉料でも収益力を確保できるローコストオペレーションに取り組んできた。このため、現在の射幸性に関する規制強化の影響は、相対的に軽微と弊社では認識している。 (2) 成長戦略 同社のパチンコホール事業における成長戦略は、「店舗数の拡大」と「既存店売上伸長」という2軸の掛け算によって成長を目指すというものである。店舗数の拡大については、自社出店(オーガニック出店)とM&Aによる拡大の2つが選択肢としてあるが、ローコストオペレーションに強みを有する同社にとっては、オーガニック出店のほうがより効率的で、M&Aについては案件ごとに精査した上で、明確なメリットが得られる場合に踏み切ることになると推測される。ただ、店舗数の拡大戦略については市場環境が厳しいことから当面は慎重なスタンスを継続していく方針で、市場環境と既存店舗の収益力が回復してから再開するものと弊社では見ている。 「既存店売上伸長」については、単価より客数の確保により力点を置いて臨んでいる。パチンコを時間消費型レジャーとして浸透させようという同社の取り組み姿勢とも整合性が取れるスタンスと言える。同社では個店ごとの特性を生かして、地域密着型の地道な集客努力を行っているが、業界全体を覆う逆風が強く、客数の伸長という点では一進一退が続いている状況だ。 パチンコ機については射幸性の抑えられた新規則機の稼働率が低く(集客力が弱い)、結果的に旧規則機から新規則機への移行が進まない要因ともなっていたが、警察庁生活安全局保安課が2020年1月に「技術上の規格解釈基準」を改正したことで、稼働率の回復が期待される。今回の改正では時短モードに関する規制が緩和され、その1つが「遊タイム」と呼ばれる機能が新たに付加されたことだ。具体的には、低確率中に一定の回転数に達した段階で、時短モードが作動するというもの。時短モードに入ることで、遊技者は保有玉をほぼ減らすことなく、一定回数分の大当たり抽選を行うことが可能となる。そのほかにも時短モードの作動回数の上限撤廃や、確変リミッター回数を2パターンまで搭載することが可能となるなど、技術的な規制が緩和されたことで遊技機メーカーは従来よりもゲーム性を高めた機種の開発が可能となり、遊技者にとってもより楽しめる機種が増えることになる。当初は4月から「遊タイム」機能付きの機種が各メーカーから投入される予定であったが、新型コロナウイルスの影響でやや遅れる格好となった。今後の稼働状況に注目したい。 一方、パチスロ機は高射幸性の機種が従来どおり2020年12月末までに完全撤去されることが決まっている。パチスロ機においても今後はよりゲーム性を高めた機種の開発が期待されるが、稼働率はパチンコ機以上に射幸性に依存する傾向があると見られ、2021年以降の客離れが懸念される。同社では稼働率を高める施策として、パチンコ機と同様、低貸メダルの営業強化を継続していく方針だ(通常営業で20円の貸メダル金額を10円としている)。なお、同社の1店舗当たりの遊技機設置台数に占めるパチスロ機の比率は2020年3月期で30.4%となっており、業界平均の39.0%よりも低水準となっている。このため、パチスロ機の比率を今後も高めていく可能性はあるが、稼働率と収益性を見て判断していくことになると思われる。 (3) 収益力回復に向けた取り組み 同社は店舗収益力の回復に向けた新たな取り組みとして、実験的に一部店舗で分業によって労働時間を削減する実験を進めている。具体的には、「店舗がホールサービスに集中」できる環境を確立するため、現場(店舗)と本部がそれぞれ担当する業務・機能の明確にし、現場にしかできない作業以外は本部・統括へ移管するというもの。これにより、現場における業務負担の軽減による生産性向上(=人件費率の低下)とサービスの充実による顧客満足度の向上(=集客力の向上)といった効果が期待される。 前述の実験効果が確認されれば全店舗に展開し、収益体質をより強固なものにしていく考えだ。また、適性に応じた多様な人材の活用(やりがい、働きがい、働き場所の創出)や、ダイバーシティ&インクルージョンの促進といった働き方改革にも取り組んでいく。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲) 《EY》