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アンジェス Research Memo(3):HGF遺伝子治療用製品は国内で19年9月販売開始、米国でも臨床試験開始

2020/3/19 17:09 FISCO
*17:09JST アンジェス Research Memo(3):HGF遺伝子治療用製品は国内で19年9月販売開始、米国でも臨床試験開始 ■主要開発パイプラインの動向 アンジェス<4563>の主要開発パイプラインは、HGF遺伝子治療用製品、NF-κBデコイオリゴ、DNA治療ワクチン等がある。各パイプラインの概要と進捗状況、今後の開発方針は以下のとおり。 1. HGF遺伝子治療用製品 HGF遺伝子治療用製品は、血管新生作用の効果を活用して閉塞性動脈硬化症の中でも、症状が進行した重症下肢虚血向け治療薬として開発が進められてきた。重症下肢虚血とは、血管が閉塞することによって血流が止まり、組織が潰瘍・壊疽を起こすことによって最終的に下肢切断を余儀なくされることもある重篤な疾患となる。治療法としてはカテーテル治療や血管バイパス手術などが行われているが、手術ができない状態になっているケースも多く、新たな治療法の開発が望まれていた。 HGF遺伝子治療用製品は、血管が詰まっている部位周辺に注射投与することによって新たな血管を作り出し、血管新生による血流回復によって潰瘍の改善や安静時疼痛の緩和といった症状の改善を図るというもの。国内では2019年3月に、「標準的な薬物治療の効果が不十分で、血行再建術の施行が困難な慢性動脈閉塞症における潰瘍の改善」を効能、効果または性能として、条件及び期限付販売承認を取得し※、同年9月より「コラテジェン®筋注用4mg」として提携先の田辺三菱製薬を通じて販売を開始している。用法は、虚血部位に対して筋肉内投与を4週間間隔で2回行い(4mg/回)、また、症状が残存する場合には4週間後に3回目の投与を行うことも可能となっている。 ※本承認の条件は、承認日から5年以内に、1)重症化した慢性動脈閉塞症に関する十分な知識・治療経験を持つ医師のもとで、創傷管理を複数診療科で連携して実施している施設で本品を使用すること、2)条件及び期限付き承認後に改めて行う本品の製造販売承認申請までの期間中は、本品を使用する症例全例を対象として製造販売後承認条件評価を行うこと、の2項となる。 また、今回は条件及び期限付承認となっているため、製造販売後承認条件評価を行うことになっており、5年以内に120症例のデータを収集し、非投与群80症例との比較を行い、同結果を持って本承認の申請を行う予定にしている。本承認されれば薬価も見直される可能性がある。実施医療施設数は78施設を予定しており、このうち2020年1月までに41施設で契約を完了している。確実に本承認を得るために質の高い患者の登録活動を進め、2020年は年間30症例の実施を目標としている。徐々に医療施設を広げながらスピードアップし、目標としては3年程度で終了し、5年目での本承認を目指している。年換算だと40例ペースとなり、平均2.5回投与したとすると薬価ベースで年間60百万円の売上となる。症例データの収集・解析や治療後のフォローアップなどを含めて、製造販売後承認条件評価にかかるコストは合計で5億円超規模になると予想される。 同社は「コラテジェン®」の対象領域を広げるため、重症下肢虚血での安静時疼痛の改善を目的とした第3相臨床試験も2019年10月より開始している。予定症例数は約40例(うち、プラセボ群18例)で試験費用として数億円程度を見込んでいる。こちらも2~3年程度の期間で臨床試験を終了させ、承認申請を目指すことになる。なお、国内で対象となる重症虚血肢の患者数は千人規模と厚生労働省では見ている。 一方、米国でも2020年2月より第2b相臨床試験がスタートしている。閉塞性動脈硬化症のうち、包括的高度慢性下肢虚血についてグローバルな治療指針※が2019年6月に公表されており、同治療指針を踏まえて下肢切断リスクの低いステージ1-2の患者を対象に、臨床試験を進めていく予定にしている。主要評価項目は、「潰瘍の改善」と「血流の改善」としており、治験プロトコルはHGF遺伝子治療用製品またはプラセボを2週間の間隔を置いて2回投与するというもの。4mg/回、8mg/回、プラセボの3群に分けて各20症例のデータを収集する(観察期間は12ヶ月間)。今後17施設で臨床試験を実施していく予定で、順調に進めば3年程度で完了するものと予想される。 ※グローバル治療指針(Global Vascular Guideline;GVG):包括的高度慢性下肢虚血(CLTI:Chronic limb-threatening ischemia:これまでの重症下肢虚血の新たな呼称)の初期段階から適切な治療マネージメントを提供することで患者のQOLの向上を図ることを推奨している。本ガイドラインでは臨床ステージを4段階(clinical stage 1~4)に分け、それぞれのステージにおける治療方針が示されており、今回の試験では下肢切断リスクの低いclinical stage 1と2を対象としている。このステージの患者には、まず潰瘍の治療を考慮することがガイドラインで推奨されており、該当する患者は全体の約60%と専門家は指摘している。 同社では第2b相試験の結果が良ければ、RMAT※指定制度を用いて早期の上市を目指したい考えだ。RMAT指定品目となればブレークスルー・セラピー制度と同等の扱いとなり、第3相試験に進むことなく販売承認が得られる可能性がある。第3相試験まで進むことを前提とした臨床試験費用は約37億円を見込んでおり、上市予定時期は2026年頃となるが、RMAT指定品目として承認され、第2b相試験だけで承認申請が可能になれば臨床試験費用は約10億円程度、上市時期は最短で2023〜2024年頃になると予想される。 ※RMAT(Regenerative Medicine Advanced Therapy):重篤な疾患を開発対象とした再生医療の先端治療法で、臨床試験で一定の効果を示したものに対する指定制度。RMAT指定を受けた品目は優先審査と迅速承認の機会を得ることができる。 米国における閉塞性動脈硬化症の患者数は日本と比べて格段に多いだけに、今後の開発動向が注目される。なお、米国でのマイルストーン収益が得られるタイミングは販売承認申請時と承認時となり、合わせて数十億円規模になると推定される。 そのほか、2019年2月にはイスラエルのKamadaとイスラエルを対象国とした導出(独占的販売権許諾)に関する基本合意書を締結しており、今後、イスラエルでも当局からの販売承認が得られ次第、Kamadaを通じて販売を開始することになる。イスラエルでは日本などの先進国で薬事承認された医療用医薬品については、同国での追加臨床試験を行うことなく承認される可能性が高く、早ければ2020年の発売を見込んでいる。今回の基本合意により、イスラエルで薬事承認及び保険償還が承認された場合に、同社は一時金として最大125万ドルを受領し、また発売後の累積売上及び年間売上に応じた一時金として最大285万ドル及び製品供給による売上を得ることになる。さらに、Kamadaの主力製品であるα-1アンチトリプシン(AAT)製剤「Glassia®」※の国内での製造販売権を同社に導出するための協議を誠実に行うことに合意している。同社はその他にもアジア地域においてライセンス交渉を進めており、2020年内の契約締結を目指している。 ※日本で難病指定となっているα1-アンチトリプシン(AAT)欠乏症の進行を抑える医薬品。AAT欠乏症になると、若年性に慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:COPD)を発症する。主な症状は、労作時呼吸困難、慢性の咳嗽・喀痰等で、症状が進行すると酸素吸入、人工呼吸管理が必要となる。 なお、HGF遺伝子治療用製品の販売承認を条件付きながらも国内で得られたことで、国内初の遺伝子治療用製品となっただけでなく、世界初のプラスミド(DNA分子)製品、及びHGF実用化製品、末梢血管を新生する治療用製品、循環器医療領域での治療用製品となり、遺伝子医薬のグローバルリーダーを目指す同社にとっては大きな第一歩を踏み出したものと評価される。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲) 《SF》
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時価総額 8,217百万円
大阪大医学部発のバイオベンチャー。遺伝子医薬やDNAワクチンのバイオ医薬品を開発。受託数の順調増で手数料収入は伸長。研究開発費は減少。23.12期通期は損益改善。24.12期は大幅増収、損益改善計画。 記:2024/03/05