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選挙後も電力不足でランド売り【フィスコ・コラム】

2024/4/21 9:00 FISCO
*09:00JST 選挙後も電力不足でランド売り【フィスコ・コラム】 南アフリカで来月行われる総選挙に向け、通貨ランドに動意がみられます。政権与党のアフリカ民族会議(ANC)は結党30年で初の過半数割れが予想され、弱含む展開。ただ、選挙を通じても電力問題は解消されず、引き続きランドの下押し要因となりそうです。 足元のドル・ランド相場は堅調地合いを強め、18.40ランド付近から19ランド台前半に値を上げています(ランドは下落)。5月29日の総選挙に向けた直近の世論調査で、ラマポーザ政権の支持が一段と低下し、ANCの過半数割れが現実的になったためです。同党は1994年以来、国民政党として君臨してきたものの、汚職の蔓延や電力不足による低成長で、選挙のたびに議席を減らし続けています。 コロナ禍後の2021年に行われた統一地方選でANCの得票率は初めて50%を下回り、退潮傾向が鮮明になりました。今回の総選挙で過半数を割り込んだとしてもなお第1党を維持し、ラマポーザ政権も存続の見通しです。ただ、今後は他党との連立政権が避けられないでしょう。その際には政治の安定性が失われることで財政規律は緩慢になり、格下げにつながる可能性もあります。 一方、アメリカのインフレ再加速が鮮明になり、ドル選好地合いがランドを下押しするものの、ランドの下げは想定内とも言えます。南ア経済は減速している一方、商品やエネルギーの価格上昇でインフレ再燃の兆しがあるためです。南ア準備銀行(中銀)は利上げを一時休止しつつ、物価は上方シフトと認めています。中銀が今後の利上げを視野に置いているとの見方が、ランドを支えているようです。 金相場の堅調地合いもランド買い要因として見逃せません。南アの金生産は1990年代に比べればシェアを縮小しているものの、主要生産国であることに変わりはありません。中東情勢の混迷により金は足元で安全資産として保有されるほか、不透明な米インフレのリスクヘッジとして買いが入りやすく最高値を更新中。割安になったプラチナが連れ高すれば、ランドの底堅さが増すでしょう。 もっとも、選挙戦の争点になっている電力問題は長年にわたる課題でありながら、長期にわたり放置されてきました。ラマポーザ政権は電力担当相のポストを創設したものの、慢性的な停電は解消されず、成長を阻害する最大の要因。とはいえ、打開策は現時点で乏しいのが実情です。一部の野党はマニフェストに民営化を掲げるものの、実現は困難とみられます。電力不足がランドを圧迫する状況は続くとみられます。 (吉池 威) ※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。 《TY》