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ドイツ議会選にらみのユーロ【フィスコ・コラム】

2021/7/11 9:00 FISCO
*09:00JST ドイツ議会選にらみのユーロ【フィスコ・コラム】 9月に行われるドイツ連邦議会選に向け、早くも政党間の主導権争いが激化しています。ヨーロッパの結束を強めた「メルケル路線」の後継が焦点です。大躍進が期待された「緑の党」の失速は、ユーロにどのような影響を与えるのか注目されます。 昨年7月に欧州連合(EU)加盟国による復興基金の創設を受け、ユーロは堅調地合いに振れました。が、新型コロナウイルスの断続的な再拡大で、伸び悩む展開も目立っています。今年1月には2018年以来3年ぶりとなる高値圏に浮上したものの、その後は感染第3波の影響で減速。6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での予想外のタカ派姿勢により、ユーロ・ドルは目先も上げ渋ると予想されます。 ユーロ圏の1-3月期域内総生産(GDP)は前期比-0.3%とマイナスに落ち込みましたが、春先以降に持ち直し、経済指標にもそれが反映され始めました。4-6月期はプラスへの再浮上が観測されます。ただ、インフレ圧力は弱く、欧州中央銀行(ECB)当局者の間でも緩和縮小の主張は一部にとどまっています。それでもユーロが持ちこたえているのは、足元で堅調な経済指標が目立つせいかもしれません。 目先のユーロに関し、コロナ再拡大とドイツ議会選がリスク要因として警戒されそうです。欧州委員会は7月7日に成長率を上方修正していますが、仮にコロナ・デルタ株がイギリスから波及した場合は再び大都市の制限措置が見込まれ、逆戻りすることになります。アメリカは回復ペースを速めているため、ヨーロッパからアメリカへのマネー流入は避けられません。 他方、9月26日投開票の連邦議会選(定数598議席)は、長年にわたり「ヨーロッパの顔」を務めたメルケル首相の後任を決める選挙として注目されます。急速に支持を集めた「緑の党」の40歳の女性党首、ベーアボック氏は経歴詐称疑惑などで信頼が大きく揺らぎ、ここへきて逆風にさらされています。逆に、メルケル氏が所属している第1党のキリスト教民主同盟(CDU)が息を吹き返したもようです。 ただ、投票まで2カ月あり、情勢は予断を許しません。「緑の党」はシュレーダー政権では社会民主党(SPD)との連立に参加し、構造改革路線を進めた実績を持ちます。その後は野党に甘んじたものの、最近では地球温暖化の問題で若年層を中心に支持を広げ、春先には支持率で一時トップに躍り出ました。最低賃金の引き上げや高所得者への増税を打ち出し、域内の連帯を強化して「強いヨーロッパ」を進める方針です。 CDU・CSUの与党連合が議席を守っても過半数には届かないため、「緑の党」が連立に参加する可能性もあります。その際には財政規律が焦点とみられ、CDUのラシェット党首はメルケル路線の踏襲を打ち出し他党をけん制。「緑の党」の足元の失速でドイツの金利高は抑制されていますが、選挙に向け財政拡張への警戒感が広がれば長期金利を押し上げる要因となり、ユーロの動向にも影響しそうです。 (吉池 威) ※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。 《YN》