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米大統領選後の人民元【フィスコ・コラム】
2020/11/8 9:00
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*09:00JST 米大統領選後の人民元【フィスコ・コラム】 米大統領選の集計作業が注目されるなか、人民元は上昇基調を強めています。選挙終結後は米中覇権争いが本格化するとみられ、特に両国通貨の動向は重要視されそうです。中国政府は選挙結果を受け、どのように対応するのでしょうか。 人民元は米大統領選の投票前から思惑により動意づいています。共和党のトランプ大統領再選なら通商摩擦が警戒されドル高・元安に、逆に民主党のバイデン前副大統領の勝利なら摩擦解消の観測からドル安・元高に振れると予想されます。足元は開票作業を見極める展開ですが、バイデン氏優勢を受け元は1ドル=6.60元付近と2年超ぶりの高値圏に浮上。中国経済の回復は鮮明で、元への上昇圧力が強まっているためです。 中国の通貨当局はこうした事態を想定し、秋口から通貨高の抑制に着手。10月下旬には人民元のオンショア市場で国有銀行が深夜の時間帯を狙いドル買い・元売りを進めたほか、人民銀行は基準値を元安方向に設定するなど、6.65元付近を上限に元の一段の上昇を抑制してきました。ただ、景気の持ち直しを背景に元は一段高が見込まれ、政府は元高を止める新たな政策に迫られそうです。 一方、米連邦準備理事会(FRB)は11月4-5日に開かれた連邦公開市場委員会(FOMC)で、現行の緩和的な金融政策の据え置きを決定。7-9月期の米国内総生産(GDP)は前期比年率+33.1%と4-6月期の-31.4%から急激に持ち直し、失業率も10%以下に改善しました。ただ、新型コロナウイルスのまん延で一段の景気減速が懸念され、FRBは2023年まで実質ゼロ金利を維持する方針でドル売り基調に変わりはありません。 欧州中央銀行(ECB)や豪準備銀行、カナダ銀行など主要中銀が一段のハト派姿勢に前向きのため、欧州通貨やオセアニア通貨、資源国通貨は弱く、相対的にドルが押し上げられる場面もあります。ただ、やはり国内経済の回復度合いの違いから、ドルは対人民元で下押し圧力に晒されています。逆に人民元には押し上げ圧力が加わり、対ドルでの先高観は弱まっていません。 「バイデン政権」発足なら、両国関係と通貨の値動きはどのように変わるでしょうか。公約をみると、対中強硬政策を弱め、トランプ政権が発動した関税を修正する見通しです。また、トランプ政権が進めた台湾への武器輸出といった刺激的な姿勢を引っ込めれば、地政学リスクは弱まるとみられます。ただ、中国は人民解放軍の強化を打ち出しており、中国の大国意識への警戒が元高を阻止する可能性もあります。 バイデン氏の経済政策もドル安要因が目立ちます。向こう10年間の大幅な増税で歳入は増える半面、大型投資により財政赤字の拡大が見込まれ、ドル売りを強める要因となります。大型投資への期待感で株高に振れればドルを下押しする展開も続くとみられ、やはり中国の政策対応は避けられないでしょう。デジタル人民元の開発も含め、両国の通貨をめぐるせめぎ合いは今後ますます白熱化しそうです。 ※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。 (吉池 威) 《YN》
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