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巴川紙 Research Memo(7):静電チャック、高性能ヒートシンクを中心に拡大を推進

2022/3/22 16:07 FISCO
*16:07JST 巴川紙 Research Memo(7):静電チャック、高性能ヒートシンクを中心に拡大を推進 ■中長期の成長戦略 巴川製紙所<3878>は2021年5月に新中期経営計画を策定し、2026年3月期の目標数値として、売上高36,000百万円以上、営業利益2,000百万円、新製品売上比率を16%以上へ高めることを掲げた。5GやDXを支える事業の展開、SDGsに資する製品の展開、構造改革・体質改善による経営効率アップにより企業価値向上を図り、新たな成長と企業体質変革の同時実現を目指していく。具体的には以下の5項目を明確化し具体的な施策を挙げている。 (1) 半導体市場成長とのリンケージ深化 昨今の半導体市場の活況は、同社の電子材料事業においても大いに追い風となっており、同社は高シェアを有する半導体用「リードフレーム固定テープ」やシリコンウェハー固定用「静電チャック」など、半導体分野における活動を積極的に展開している。さらに、半導体生産工程での利用に加えて、半導体製造装置における特殊材料としての採用が見込める状況から、熱コントロール材料の開発を進め、さらなる拡大を見込む。 1) 静電チャック 同社は半導体市場拡大に伴い、競争力ある部材の提供を強化していく方針で、具体的には新中期経営計画における2026年3月期売上高36,000百万円のなかで電子材料事業の売上比を現在の18.3%から24.3%、金額にして5,621百万円を約56%増の8,750百万円まで拡大する方針となっている。なかでも期待が高いのが新型静電チャックである。同社は1987年にプラズマドライエッチング用ポリイミド静電チャックの開発に着手し、1991年に生産体制を確立して同分野に参入した背景がある。 こうしたなかで、同社は大幅に性能向上した新型静電チャックを開発中で、足元では高容量半導体メモリ向け等に新型静電チャックの試作売上がある。半導体業界の動きとして、2023年3月期はキオクシア(株)の3DNAND(フラッシュメモリの一種)が162層の積層数となり、iPhoneの2022年モデルにも採用の方向で進んでいると言う。このため積層化に合わせてドライエッチング装置のマルチチャンバー化が進むことからエッチング装置台数以上に静電チャックが必要となる見通しで、今後に大きな伸びが期待される。ちなみに半導体事業環境について同社は、世界半導体市場統計(WSTS)2021春季予測及び日本半導体製造装置協会「2022年1月発表 半導体・FPD 製造装置 需要予測(2021年度~2023年度)」(2021年1月13日)をもとに新中期経営計画を策定した。WSTSによると2022年に6,010億米ドル(8.8%増)と、同社想定の2026年5,000億米ドル超を既に上回る数字となっている。また日本半導体製造装置協会も半導体市場は2022年度に3兆5,500億円、2023年度3兆7,000億円に拡大すると発表しており、同社は2026年3月期で2兆8,000億円程度という前提をおいているが、その数字を2022年度に27%も上回る事になる。 2) フレキシブルヒータと高性能ヒートシンク 金属繊維シートを利用した「フレキシブルヒータ」と金属繊維シートを活用した「高性能ヒートシンク」 も注目したい製品である。同社は1980年代より、ステンレスやセラミックスといった金属、無機材料を繊維化、シート化する技術開発を行ってきた。そのなかで小型の特殊抄紙機を導入してステンレス繊維シートを開発し、1998年にはノートPC用電磁波シールド材としてステンレス繊維シートを新製品として立ち上げた。また銅を自社技術で繊維化、2016年に銅繊維のシート化に成功した。同社によると世界で初めてのことだと言う。そして、これらの金属繊維シートを半導体製造装置に利用する計画も進んでいる。具体的には、金属繊維シートを用いたフレキシブルヒータとして利用するもので、金属繊維シートが熱を通すと瞬時に500℃まで加熱が可能となる。しかも製造装置部材の表面に密着することで熱を効率的に利用できることから、省エネ効果が高い点でも利用価値があるとしている。また前述の銅繊維シートの表面積の大きさを利用して、高性能ヒートシンク材として利用していく方針である。放熱効率が従来品の2~3倍も得られることから製造装置のコンパクト化に役立つだけでなく、水冷から空冷化も可能なことから装置の設計自由度が上がり、省エネ効果があることも大きなポイントとなっている。どちらの製品も本格採用となれば大きな製品に育つと見られる。 事業構造改革、コスト構造改革、生産体制改革により、事業体質の転換を図る (2) 基盤事業における構造改革の仕上げ 祖業の洋紙事業については、需要減少と設備老朽化に対し抜本的対策が不可避であると同社は考えている。また電子材料事業でもディスプレイ関連の塗工関連事業は、スマートフォンなどの需要の見通しが立てにくく、安定的な収益力確保が大きな課題となっている。さらにグローバルで事業展開するプリンター用トナー事業は、ロックダウン等によるオフィス・学校での需要の減少、リモートワーク、在宅授業など生活スタイルの変更など、逆風が続いている。これらの課題に対し事業ポートフォリオの見直し、生産・営業拠点の集約・設備休止といった構造改革をこれまで進めたが、さらにグループ企業間での設備共有やさらなる設備統合の動きを加速させていく。そしてこれらの施策により、固定費を中心に費用削減を行い、売上高営業利益率 5%以上を継続的に稼ぎ出す体制を構築するとしている。 実際には、事業構造改革、コスト構造改革、生産体制改革の3つの改革により、持続的成長を果たせる事業体質への転換を図る計画となっている。洋紙事業については最大能力を有する9号抄紙機の停機を決め、今後は小型抄紙機をフル稼働させ、洋紙においても収支均衡を目指す。またトナー事業では米国生産の撤退で白黒トナー生産能力の20%が削減され、現状は日中の工場がフル稼働の状況にある。しかも日本においては同業の三菱ケミカル(株)が同部門から撤退、プリンタメーカー以外でのトナー調達は同社に多くを頼るしかない状況となっており、今後の需要減退に対しシェアアップで収益を守っていく方向にある。なお、カラートナーについては途上国でのニーズがまだ拡大しており、収益を稼げる事業であると同社は判断している。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘) 《EY》
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1914年創業の高機能性材料メーカー。電気絶縁紙を初めて国産化。現在はトナーや半導体実装用テープ、光学フィルム、カード製造等を手掛ける。半導体製造装置向け新製品「フレキシブル面状ヒーター」は引き合い多い。 記:2024/06/25