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アウトソシング Research Memo(2):景気変動の影響を受けにくい事業構造への変革を推進

2019/4/1 15:02 FISCO
*15:02JST アウトソシング Research Memo(2):景気変動の影響を受けにくい事業構造への変革を推進 ■会社概要 1. 事業内容 アウトソーシング<2427>は、メーカーの製造ライン向けに人材派遣及び業務請負を行う「国内製造系アウトソーシング事業」や、メーカーの研究開発部門及びIT、土木建築系向けに技術者派遣等を行う「国内技術系アウトソーシング事業」を展開するほか、米軍施設向け事業や海外展開にも積極的に取り組んでいる。元来、自動車関連業界に強い顧客基盤を有しており、メーカーの生産効率向上や技術革新に貢献するとともに、M&Aを含めた効果的な人材の獲得が同社の成長を支えてきた。現在は、景気変動の影響を受けやすい事業特性からの脱却や様々な環境変化を自らの成長に結び付けるため、事業構造の変革と事業領域の拡大を進めている。海外を含めた人材提供数(外勤社員数)は7.7万人超に上り、技術・製造系では国内において業界最大の規模を誇っている(2018年12月末現在)。 事業セグメントは、「国内技術系アウトソーシング事業」、「国内製造系アウトソーシング事業」、「国内サービス系アウトソーシング事業」に加えて、海外における「海外技術系事業」、「海外製造系及びサービス系事業」の5つに区分される※。事業別売上収益構成比では、主力の「国内技術系アウトソーシング事業」が23.3%、「国内製造系アウトソーシング事業」が20.0%となっているが、最近では、積極的なM&Aにより海外事業が大きく伸びており、売上収益全体の50%を超えている。また、景気変動の影響を受けにくい各国公共機関向けや米軍施設向けが大きく伸びており、同社の目指す方向性(将来を見据えた事業構造の変革や事業領域の拡大等)に沿って順調に進展していると言っていいだろう。 ※2018年12月期より、「国内管理系アウトソーシング事業」及び「国内人材紹介事業」は「国内製造系アウトソーシング事業」に統合され、5つの事業セグメント区分となった。 各事業の概要は以下のとおりである。 (1)「国内技術系アウトソーシング事業」は、輸送用機器や電気機器、金属・建材、医薬品等の幅広い分野のメーカーにおける研究開発部門への技術者派遣等のほか、IT及び土木建築系企業に対する技術者派遣等を行っている。特に、市場規模が大きく、更なる成長が見込めるIT及び土木建築分野のほか、医薬品分野の強化にも取り組んでおり、同社グループのKENスクールやアドバンテック(株)が各分野の企業(通信キャリアや大手ゼネコン、医薬品メーカー等)と共同開発した人材育成カリキュラム(未経験・異分野からのキャリアチェンジを含む)の推進により、既に約13,000名の技術者を擁する国内有数の技術系アウトソーシング事業集団となっている。新卒採用についても2018年4月には1,050名が入社しており、後発ながらこの分野におけるプレゼンス向上が顕著である。 (2)「国内製造系アウトソーシング事業」は、創業来の主力事業である、1)製造ラインへの人材派遣や業務請負(輸送用機器や電気機器などのメーカーの製造工程の外注化ニーズに対応し、生産技術、管理ノウハウを提供することで生産効率の向上を実現するサービス)のほか、旧セグメントにあたる2)管理業務受託(メーカーが直接雇用する期間社員及び実習生等の採用後の労務管理や社宅管理等にかかる管理業務受託事業及び期間満了者の再就職支援までを行う一括受託サービス)、3)期間工の有料職業紹介(メーカーが直接雇用する期間社員の採用代行サービス)も含まれる。 1)製造ラインへの人材派遣や業務請負については、堅調な国内生産を背景として業界環境は追い風であるが、景気変動(生産変動)の影響を受けやすい上、中長期的には国内市場の縮小が予想されている。同社では独自のPEOスキーム(詳細は後述)を活用することで、景気変動の影響が少ない長期事業領域での人材ニーズの創出と顧客の囲い込みにより、日本の安定雇用の役割を担うとともに持続的な成長を目指す方針である。 また、2)管理業務受託については、労働契約法や労働者派遣法の改正により派遣活用の利便性が高まるなかで、メーカー直接雇用による期間社員活用ニーズは縮小する一方、メーカーが直接受け入れる外国人技能実習生※1に対する管理業務は拡大しており、今後も成長余地が大きい。新たに開始される在留資格制度※2も今後の事業拡大に向けて明るい材料と言える。同社にとって雇用リスクがないことや営業利益率が高いことなどメリット※3が大きく、今後の注力分野とひとつとなっている。 ※1 外国人技能実習生とは、法に基づき、日本の現場で最長5年間実習し、帰国後に習得技能を活用する外国人技能実習制度により来日した外国人。国内の人手不足に伴い需要が高まっている。ただ、メーカーは、社宅契約・管理や生活管理等にノウハウを持たないため、実績が豊富な同社の管理業務受託が拡大する方向にある。実習期間は通常3年間(試験合格で最長5年間可)であるため、その期間の売上・利益が見込める上、コンスタントに期間満了に伴う入れ替えのニーズも期待できる。 ※2 入管法の改正により、2019年4月1日より新しい在留資格である「特定技能」が新設される予定である。これに伴って、これまでは一部の例外を除いて外国人が働くことのできなかった、建設業界や造船業界、宿泊業界、外食産業などで、外国人が働くことができるようになるため、外国人の活用ニーズがさらに高まることが期待されている。 ※3 外国人労働者の管理業務受託における同社メリットには、1)同社に雇用リスクがない、2)技能実習生は最長5年間、特定技能の来日者は試験合格等の条件合致によって無期限で受託可能、3)管理受託の1名あたり売上額は製造派遣より低いが原価率・販管費率がさらに低いため、営業利益率が高い、4)技能実習生・日系人の帰国後は現地で、留学生の卒業後は技能習熟者として、同社グループで活用可能などがあげられる。 一方、3)期間工の有料職業紹介については、足元では既存顧客メーカーの増産に伴うニーズが堅調に推移しているが、労働契約法や労働者派遣法の改正により、中長期的には市場全体のニーズは縮小する方向にある。 (3)「国内サービス系アウトソーシング事業」は、米軍施設等官公庁向けサービス及びコンビニエンスストア向けサービス等を提供している。米軍施設向け(沖縄等)は、参入障壁が高い上、景気変動の影響を受けにくい分野であり、米軍基地内福利厚生施設への派遣や請負のほか、新たに滑走路や格納庫等の軍事設備の改修・メンテナンス業務の請負も開始している。今後は環太平洋(グアム、ハワイ、アラスカ等)へも展開する計画である。 (4)「海外技術系事業」は、在外子会社にて、欧州及び豪州を中心にITエンジニアや金融系専門家の派遣サービス等を提供している。特に、先進国で拡がりつつあり、安定的である公的サービスの民間委託市場に注力しており、英国での政府系BPO事業(公的債権回収など)や豪州での公共機関向けICT技術者等のアウトソーシングなどを手掛けている。 (5)「海外製造系及びサービス系事業」は、在外子会社にて、アジア、南米、欧州等において製造系生産アウトソーシングへの人材サービス及び事務系・サービス系人材の派遣・紹介事業や給与計算代行事業を提供している。また、欧米、豪州において公共機関向けのBPOサービスや人材派遣、欧州やアジアにて国境を越えた雇用サービスも展開している。特に、海外製造系ではヨーロッパ大陸での国境を超えた人材流動化への対応を図るとともに、海外サービス系では民間への委託が進む公共関連事業(刑務所や空港等の公共施設での各種アウトソーシングなど)を手掛けている。 2. 企業グループの状況 同社グループは、同社や連結子会社等の182社(国内38社、海外144社)によって構成されている(2018年12月末現在)。相次ぐM&Aの実施や新しい産業への進出等によりグループ企業数も大きく増加してきた。同社は、景気の影響を受けにくい公共事業関係のアウトソーシング等を中心にグローバル展開し、グループシナジーの最大化を追求する戦略である。 3. 沿革 同社は、現 代表取締役会長兼社長の土井春彦(どいはるひこ)氏が、1997年に生産工程の業務請負事業を目的として静岡県に設立した。 トヨタ自動車<7203>グループを始めとする自動車関連業界に強い顧客基盤を確立するとともに、全国の生産拠点における生産アウトソーシング需要に対応することで業容を拡大してきた。2004年にジャスダック証券取引所(現 東京証券取引所JASDAQ(スタンダード))に上場。その後、円高進行等を背景として国内メーカーによる海外への生産移管が加速されると、同社も2010年の中国進出を皮切りに、2011年に東南アジア・オセアニア地域5ヶ国、2013年にマレーシア、2014年にインド、2015年にはカンボジアに相次いで進出するなど、積極的な海外展開を図ることで業績を伸ばしてきた。その一方で、リーマンショックや東日本大震災などが原因の景気変動による影響を受けやすい事業特性からの脱却や今後の環境変化(生産の海外移管、国内人口の減少、産業構造のシフト等)への対応を図るため、積極的なM&Aや採用投資により、成長性や付加価値の高いIT及び土木建築分野などを中心とした「技術系アウトソーシング事業」の強化にも注力してきた。2011年以降は海外事業やIT関連分野が同社の成長をけん引しており、2012年には東証2部へ上場、2013年3月に東証1部指定となった。 2015年12月期は、豪州のIT及び金融システム分野に強い人材サービス会社や、英国及びベルギーを地盤としてOracle<ORCL>製品に特化したITコンサルタントを提供する専門会社のほか、チリの大手人材サービス企業グループを相次いで子会社化した。また、コンビニ業界や事業拡大の余地が大きい米軍施設内アウトソーシング事業(沖縄等)の受注を獲得するなど、同社の重点戦略であるIT関連分野の強化や新たな産業への進出、海外事業の拡大に取り組んだ。 2016年12月期は、先進国各国で拡大している公的サービスの民間委託市場への進出を加速するため、豪州及び英国で大型M&Aを実施するなど、景気変動による影響を受けない事業構造への変革を進めながら、大幅な事業拡大を実現している。 2017年12月期以降においても、Orizonグループの連結化によるドイツへの進出、アメリカンエンジニアコーポレイション(以下、AEC)の連結化による米軍施設向けサービスの拡大を図ったほか、2018年5月には、オランダ・ポーランドを中心とした欧州に人材採用ネットワークを持つOTTO Holding B.V.(以下、OTTO)を連結化し、グローバル規模での人材流動化スキームの基盤を確立した。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫) 《HN》
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製造業向け人材派遣・業務請負が柱。M&Aを活用して国内外で事業拡大。昨年12月に発表したMBOの一環として米投資ファンドのベインが1株1755円でTOB実施。今年3月にTOBが成立し、同社株は上場廃止へ。 記:2024/04/10
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