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カドカワ Research Memo(7):新サービス拡充やVR事業の取組み強化等で「niconico」の再成長を目指す

2018/12/12 15:07 FISCO
*15:07JST カドカワ Research Memo(7):新サービス拡充やVR事業の取組み強化等で「niconico」の再成長を目指す ■カドカワ<9468>の今後の見通し 2. 事業セグメント別見通し (1) Webサービス事業 Webサービス事業の売上高は前期比19.9%増の34,800百万円、営業利益は1,000百万円(前期は1,067百万円の損失)を見込んでいる。第2四半期累計売上高が13,828百万円だったため、下期はポータル事業で大幅な増収増益を見込んでいることになる。 「niconico」は新しい生放送サービス「nicocas(実験放送)」をリリースし、世界最先端のストリーミング技術を用いて、動画・生放送・双方向・映像合成を一体化したインターフェースを自社開発したほか、通信インフラの広帯域化による高画質化にも対応したことで、視聴者数が回復トレンドに転じている。プレミアム会員数についても今後、緩やかながら増加に転じ、2019年3月期末で201万人(前期末比6万人減、当第2四半期末比7万人増)まで回復することを想定している。また、下期はオリジナルゲームの投入や「nicocas」のギフト、並びに「カスタムキャスト」でのパーツ販売等による都度課金収益が拡大すると見ている。 今回投入するオリジナルゲームの中でも、特に期待度が高いタイトルとして2018年11月29日に配信を開始した「テクテクテクテク」が挙げられる。同ゲームは、位置情報を使って歩きながら街区(道に囲まれたエリア)を塗りつぶすと、その街区がファンタジー化され、宝箱やゴールド、モンスターが出現。モンスターを倒すことで経験値やアイテムを獲得し、主人公となるキャラクターを成長させながら全国各地の名所に出現する「ランクボス」を倒していくゲームとなる。また、カメラモードとしてAI技術「デプスAR」機能が使用されており、現実の風景とモンスターの大きさ、距離などをAIで判定し、リアルな大きさを感じながら登場するモンスターを撮影できる。キャラクターとして、映画「シン・ゴジラ」「ポプテピピック」「エヴァンゲリオン」「小林幸子」等とのコラボキャラが登場。今後のアップデートでは、仲間になったモンスターを育てる「牧場」や、みんなでデカボスと戦う「レイドバトル」を実装予定。ダウンロードは無料で、有力アイテム取得の際の都度課金で収益を獲得するビジネスモデルとなる。 12月に投入予定の「ARTILIFE」※は、仮想空間で自律的に動く“人工生命”の観察・育成ゲームとなる。AI技術によって自立学習することで“人工生命”が環境に適応しながら増殖・進化し、ユーザー同士で交換したり、配合して家系図を作成することも可能となっている。Webブラウザ版では生放送も行い、「nicocas」アプリで視聴も可能で、生放送の視聴者が参加することを前提としたゲームで、有料会員数の増加につながる可能性がある。ドワンゴの機械学習技術の開発・研究部門である「Dwango Media Village」が開発した。 ※2018年12月にWebブラウザ版、スマートフォン用iOS版を提供予定、スマートフォン用Android版は2019年初旬提供予定。 また、スマートフォンでレトロゲームをプレイできる「PicoPico」は、2019年初旬の投入を予定している。価格はiOS版で月額550円(税込)(Android版は540円(税込))を予定している。特徴としては、セーブやパスワード機能の無いゲームでも自由にセーブとダウンロードが可能なほか、セーブデータを投稿することで他ユーザーが続きを遊べることも可能となっている。その他、2019年4月にPCブラウザゲーム「エンゲージプリンセス」の、リリースを予定している。カドカワグループにおけるメディアミックス戦略の中で、エンターテインメント・ノベルレーベル「電撃文庫」の25周年記念として企画された作品で、ジャンルはラブコメRPGとなる。 VR市場の育成・発展に向けた取り組みにも注力していく方針となっており、VTuberに必要な要素をワンストップでユーザーに提供するサービスを、サブスクリプションモデルによって提供していく予定だ。現在は、複数のサービスを個々に提供している。例えば、VTuberの3Dアバタ—制作及び配信アプリとして2018年10月より提供を開始した「カスタムキャスト」は、プロモーション施策を打たずにリリース後11日間で100万ダウンロードを達成するなど前例のないほど注目を集めている。現在は、3Dアバタ—を制作し、その画像をTwitterなどのSNSに投稿するといった使われ方が多く、今後パーツ販売による都度課金収益を予定している。また、2014年より正式オープンした「ニコニ立体」は3Dモデル投稿UGCプラットフォームとして投稿数No.1の地位を確立しているほか、2018年4月には生放送等の配信サービスを介して、誰でも好きなバーチャルキャラクターになりきってVR空間上でコミュニケーションができる「バーチャルキャスト」のサービス提供を開始している。これらのサービスをVTuberになるためのツールとしてサブスクリプションモデルでサービス提供していくことを想定している。また、VTuberは「niconico」や「nicocas」で生放送を配信し、ギフト(投げ銭)によって視聴者から収益を獲得することが可能となる。 こうした取り組みによって、ポータル事業の収益モデルは従来の有料会員からの月額収入をベースとした定額制課金サービスモデル(2018年3月期の売上構成比78%)から、ゲームやギフト等による都度課金収入と月額課金収入で二分するハイブリッド型モデルに今後はシフトしていくものと予想される。 なお、サービス品質の改善に向けた取り組みとして、新バージョン(く)のサービス開始以降は生放送番組をHD画質(720p)で配信可能とし、また、今後の通信トラフィック量の増加に対応するため、ネットワーク帯域も従来の730Gbpsから1,400Gbpsと2倍弱に拡大している。これら施策によって動画を快適に視聴できるようになっている。同社では今後もサービス品質の改善に取り組むと同時に、インフラコストの削減も進めていく。情報システムの仮想化を進めることで障害発生率が低減し、トータルコストの削減につながると見ている。具体的には、通信費の削減等によりインフラコストは2018年3月期の50億円から、2019年3月期は42億円、2020年3月期は33億円まで低下する見込みとなっており、今後のポータル事業の収益性向上に寄与するものと考えられる。 ライブ事業についてはイベント開催を積極的に進めていく予定にしており、前期よりも赤字幅は若干拡大する可能性がある。また、モバイル事業は音楽配信サービスの会員数減少に伴い減収減益が続くが、コストコントロールを行うことで高収益性は維持する見通しだ。 (2) 出版事業 出版事業の売上高は前期比6.0%増の119,400百万円、営業利益は同6.7%増の6,400百万円となる見通し。下期は売上高で前年同期比10.3%増、対上期比で16.8%増とややハードルは高くなるが、電子書籍・電子雑誌の成長加速や海外市場での版権収入拡大等により達成は可能と見られる。電子書籍・電子雑誌に関しては自社配信プラットフォーム「BOOK☆WALKER」と「ニコニコ書籍」のアプリ統合を2018年9月に完了したことで、更なる事業効率の向上と売上の最大化が期待できる。また、外販事業も新規販路の獲得効果が下期も継続する見通しだ 書籍事業については、紙の出版市場が縮小するなかで、「カクヨム」等のネット上での原作発掘を強化するなど、強力なIPの創出に注力していくことで増収を目指していくほか、利益面でもクラウドでのコンテンツデータ管理による制作部門の効率化や、AIを活用した営業部門の効率化(重版決定の精度向上や返品率の低減)を進めることで、収益の最大化を目指していく。 なお、2020年4月からの本格稼働を予定している所沢プロジェクトの製造・物流一体の最新鋭システムについては、一部の文庫やライトノベルで商業生産を開始している。原版はクラウド管理しており、オンラインでつながっている倉庫に在庫があれば高速で荷合わせして出荷する体制を整備している。従来、出版業界のサプライチェーンでは書店が商品を発注してから受け取るまで7~10日かかっていたが、今回の新システムでは2~4日と大幅な納期短縮を実現している。受発注システムから製造、在庫管理まで全ての機能をIoTシステムで一元管理し、適時適量の生産・配送によって返品率の低下が実現可能となる。同社では現在30%台前半の返品率が将来的に20%台前半まで低減できると見ており、同業他社へのソリューションサービス(受託製造)拡大の可能性も考えれば、2021年3月期以降は所沢新工場の本格稼働によって、書籍事業の収益は拡大していくものと予想される (3) 映像・ゲーム事業 映像・ゲーム事業の売上高は前期比18.7%増の56,300百万円、営業利益は同143.6%増の7,000百万円となる見通し。下期の売上高で見ると前年同期比33.3%増、対上期比で36.5%増と大幅増収を見込んでいることになるが、ゲーム事業において、前述したオリジナルゲームが貢献する。また、映像事業では映画やアニメを中心にメディアミックス戦略を推進するとともに、海外市場におけるライセンス販売の拡大を見込んでいる。また、アニメ市場の拡大に対応するため、制作機能の強化も図っている。 ゲーム事業についてはオリジナルゲームの投入効果に加えて、フロム・ソフトウェアより2019年3月に新作ゲーム「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」の販売が予定されている。 (4) その他事業 その他事業の売上高は前期比16.2%増の24,200百万円、営業損失は2,200百万円(前期は1,356百万円の損失)を見込んでいる。教育事業については「N高等学校」(学校法人角川ドワンゴ学園)の生徒数増加により増収が続く見通し。同社の連結業績には、同学校に提供するオリジナル学習システムや学習アプリ「N予備校」の利用料等が計上されている。 また、新規事業として取り組んでいるインバウンド事業では、カドカワグループ内外のコンテンツを活用したイベント事業やグッズ販売等のビジネス機会の創出、高速バス会社のWILLER(株)と提携し、インバウンド顧客を中心にエンタテインメント性の高い旅行体験サービスの商品化にも取り組んでいる。ただ、現在は先行投資段階であり、収益化は2021年3月期以降になると見ている。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲) 《RF》
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旧KADOKAWAとドワンゴが経営統合。出版・IP創出事業が主力。アニメ・実写映像事業、ゲーム事業、通信制高校の運営等も。中計では28.3期売上高3400億円目標。出版IP数の拡大などに取り組む。 記:2024/06/13