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中電工 Research Memo(4):豊富な資金を持続的成長のための投資と株主還元に振り向ける

2017/7/3 15:06 FISCO
*15:06JST 中電工 Research Memo(4):豊富な資金を持続的成長のための投資と株主還元に振り向ける ■事業概要 3. 電力系工事会社9社の財務指標 (1) 電力会社への売上高依存度 地域電力会社は、それぞれ系列の工事会社の筆頭株主になっている。出資比率が最も高いのは北海電気工事<1832>で、北海道電力<9509>の所有株比率は51.1%になる。北海電気工事の親会社への売上高依存度は、2017年3月期で77.5%になった。2番目のトーエネック<1946>は、中部電力<9502>の所有株比率が50.0%、売上高依存度は46.5%であった。中電工<1941>が進出している都市圏を地盤とする関電工<1942>は、所有株比率が46.1%、売上高依存度は39.1%、同様にきんでん<1944>はそれぞれ33.6%、19.3%、九電工<1959>は22.8%、15.4%であった。同社は、37.4%、30.6%となる。都市圏は、電力会社以外の電気工事が豊富にあることから、売上高依存度が低くなる傾向にある。同社は、都市圏の事業を積極的に拡大することを成長戦略の柱としている。 (2) 売上高と受注高・次期繰越高 2011年度以降、受注高が売上高を上回っており、次期繰越高が増加傾向にある。配電線工事は、期中受注、期中完工のため、受注残高がほとんどなく、次期繰越高は主に屋内電気工事、空調管工事、発送変電工事で生じる。2017年3月期の売上高を100として、同期の受注高と次期繰越高の金額を比較した。電力会社への売上高依存度が高い北海電気工事は、受注高が売上高を上回る114であったが、次期繰越高は44と小さい。一方、都市圏の関電工はそれぞれ116と84、きんでんが106と78、九電工が114と86となった。同社は、108と57であった。同社でさえも、人的リソースの制約から受注高を増加させることは困難としており、都市圏の電力系工事会社も同様な状況にあると思われる。 (3) ROE(自己資本当期純利益率) 同社の2017年3月期における経営総合指標となるROEは4.3%、ROA(総資産経常利益率)は4.5%であった。9社平均ROE(8.1%)とROA(6.5%)を下回った。同社の売上高経常利益率8.0%、売上高当期純利益率6.3%が平均(6.5%と4.5%)を上回っており、収益性は高い。一方、資産の効率を表す総資産回転率が0.56回(平均:1.03回)と財務レバレッジが1.22倍(同1.81倍)と低い。自己資本比率(財務レバレッジの逆数)が81.5%と財務の安全性が高いものの、これまで十分生かせていなかった。同社は、持続的成長のための投資と株主還元を積極的に行っている。昨年度は250万株の自社株買いと1株当たり72円の高配当を行った。総合還元性向が98.1%となり、株主還元にも積極的だ。 (4) DOE(連結株主資本配当率)、年間1株当たり配当金と配当性向 2017年3月期の電力系工事会社9社の平均DOEは1.8%であった。最も高い九電工が3.8%、それに同社の2.0%が続いた。1株当たり配当金は、同社の72円が最も高く、配当性向の44.9%も九電工の21.4%を大きく上回った。同社は、DOEの目処を2018年3月期から2.5%に引き上げ、1株当たり配当金を94円、配当性向を65.7%に高めることを公表している。 4. 労働者の雇用状況 厚生労働省の「労働経済動向調査」によると、労働者の過不足状況判断指数(D.I.)は2017年2月調査で38と甚だしい人手不足に陥っている。雇用は、経営の最重要課題となっている。「労働者過不足判断D.I.」とは、「不足」と回答した事業所の割合から「過剰」と回答した事業所の割合を差し引いた値である。リーマンショック前の2008年2月調査の正社員労働者の調査産業計のD.I.は27であったが、バブル崩壊後の2009年2月時点で△11(過剰)まで落ち込んだ。全体の推移(24→△11→38)に比べて、建設業のD.I.の推移は27→△8→47となり、現状は極めて不足感が強い。 同社の従業員数は、2008年3月末において個別が4,006人、連結で4,426人であった。2017年3月期末では、個別が2008年3月期比13.8%減の3,457人、連結が同5.9%減の4,167人となった。個別の減少幅が大きいのは、一部子会社への転籍などがあったためである。連結は、M&Aなどもあり、2015年3月期の4,063人をボトムに増加傾向にある。2017年4月の新卒入社は132人、昨年度の中途採用は10数人であった。今年度は、150人の新規採用を計画している。 一時は、従業員の年齢構成に大きな山があったが、近年は一定数の継続採用により世代間の断層が小さくなった。年齢別従業員構成比は、19~29歳が30%、30~39歳が16%、40~49歳が27%、50~59歳が11%、60歳以上が15%と40歳未満が半分弱を占めている。技術力・施工能力の向上のために、若手社員に資格取得を奨励し、会社として特に力を入れてサポートしている。それが提案営業につながり、高付加価値を生む好循環となっている。 女性の管理職や技術職への拡大を図る「女性活躍推進への取組み」に関する行動計画を作成し、女性社員比率の向上や女性管理職の登用拡大に取り組んでいる。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健) 《TN》
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