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ソーバル Research Memo(2):身近なデジタル製品に欠かすことのできない技術で事業展開

2017/4/19 15:01 FISCO
*15:01JST ソーバル Research Memo(2):身近なデジタル製品に欠かすことのできない技術で事業展開 ■会社・事業概要 1. 会社概要 ソーバル<2186>は「技術で社会に貢献する」を企業理念に掲げ、1983年に創業した国内有数の独立系組み込みシステム開発企業。エンジニアリング事業の単一セグメントで、主にデジタル製品メーカーに対し、ファームウエア、ソフトウエア、ハードウエアの開発を支援するサービスを提供している。なかでも、ファームウエアの開発は得意。近年では、業務システムやウェブシステム開発にも注力しており、マルチレイヤーのシステム開発をワンストップ受注できる体制を確立した。ソーバル株式会社のほかに、連結子会社の(株)コアード、アンドールシステムサポート(株)もエンジニアリング事業を営む。 2. 事業内容と開発実績 同社が得意としているファームウエアとは、組込みソフトウエアとも呼ばれ、デジタルカメラのICチップなどに書き込まれており、露出補正や顔認識などの高度な制御を行う。具体的には、プリンタにおける両面印刷や1面に2ページを印刷するなどの機能を、モータの回転方向や用紙の送り方等を制御することで可能にする。デジタルカメラでは、部屋の明るさを判定し自動でストロボを発光することや、手ぶれを補正して正しい画像の保存をするなどの機能を付加しており、誰もが手にするデジタル製品の中に搭載されている機能のための技術を提供している。 ソフトウエアでは、デジタル製品のアプリケーションツールやドライバの開発のみならず、業務系及びWeb系のアプリケーション開発にも携わる。ハードウエアにおいては、LSIやDSPの設計・開発、周辺回路設計、さらに、構造設計や機構設計の研究・試作・量産設計を開発範囲としている。 ソフトウエア開発、ハードウエア開発のみならず、第三者検証までワンストップで提供できることが同社の強みだ。各メーカーによりやり方が異なっており明確な技術優位性の比較は難しいが、参入障壁があると言える。 開発実績には、デジタルカメラ・ビデオ、デジタルテレビ、デジタルサイネージ、各種レコーダー、スキャナ、プリンタ・複合機、携帯電話・Android端末、スマートフォンアプリ、液晶プロジェクタ、ハンディターミナル、通信・サービスシステム、官公庁向けシステム、流通・製造システム、医療系システム、各種社内システム、コンシューマ向けECサイト、各種シミュレータなど幅広く、身近な商品に同社の技術が使われていることが分かる。 3. 主要顧客の売上高構成比 2017年2月期における顧客別連結売上高の割合は、キヤノングループ52.2%、ソニー<6758>グループ12.7%、富士通<6702>グループ8.5%、NTT<9432>グループ2.8%、その他23.8%。2011年2月期にはキヤノングループが79.1%と大部分を占めていたが、近年は事業リスク分散の観点からその構成比を戦略的に低下させてきた。 4. 課題と取り組み 同社は、人材採用、エンジニア育成、販路拡大、多角的な収益構造を課題として認識している。 人材採用では、労働力不足を背景とした労働市況のひっ迫で中途採用によるエンジニアの確保は難しいことから、同社は新卒採用及びその人材育成に重点を置く方針である。1年で60名弱を採用するが、採用数への拘り以上に採用条件を守ることで質を落とさずに増員を図っている。また、社内教育ももちろんだがOJTも行い、個々のスキルにもよるが早ければ入社3ヶ月後から、一般的な新卒社員であれば1年弱で売上に貢献するエンジニアに成長する。 エンジニア育成も欠かすことのできない課題で、新規案件の仕様策定や交渉能力を備えた人材の育成、プロジェクトの管理能力を備えた人材の育成を図っている。中長期観点からのスキルの向上も必要で、そのために、同社は受託開発(請負業務)へのシフトを重点施策に置いている。技術提供業務の場合、スキルはその業務に携わったエンジニアのみに蓄積される傾向にあるが、受託開発業務になるとスキルが会社に蓄積されることになり中長期的にはエンジニア育成に資するため。2018年2月期中に技術提供業務と受託開発業務の比率を5:5まで引き上げる目標を掲げている。従来は受託開発業務の比率は4割程度であったが、2017年2月期には52%程度まで上昇しているもよう。前述の顧客別売上高構成比においてキヤノングループの売上高比率が減少している一方で、ソニーグループが拡大している理由は、前者では技術提供業務が多いが、後者ではアプリケーション関連の業務が多く機密性の観点からハードルが低く受託開発業務を受注しやすいという背景事情がある。なお、キヤノングループとの契約を技術提供業務から業務請負に切り替えることはキヤノングループから受注している業務性質に係る機密上、難しいようだが検討を進め、様々な角度からアプローチをしているようだ。 特定顧客依存からの脱却を図る一方で、販路拡大にも取り組んでいる。販路拡大には、既存顧客にアプローチして新規案件を受注する方法が最も多いようだ。近年の新しい取り組みであるSIerとの連携も強化しており、足元でも最も受注が伸びているもよう。大手SIerとの連携で、単独では獲得しにくい案件への参画が可能となった。顧客側にとってもメリットが多いことはもちろんのこと、同社が狙っている受託開発案件が多いのも拡大の背景となっている。また、M&Aなどで販路も拡大しているようで、後述するがIoT事業の売上高貢献も見込めるようだ。 多角的収益構造では、新事業である自動運転に戦略的に人員を配置しているほか、その他の分野についても拡大に注力している。自動車、医療、航空・宇宙、金融サービス、介護・災害向けのロボットで開拓分野と位置付けている。これらの開拓分野では新規の顧客開拓のみならず、業務提携やM&Aなども積極的に検討している。実際に、2011年3月に業務範囲の拡大を目的としてコアードを、2012年9月に株式会社MCTEC(2016年5月に同社に吸収合併)、2015年5月にアンドールシステムサポートを連結子会社化した。アンドールシステムサポートは車載システムや生産ライン・物流搬送設備の制御システムなどの開発に優位性があり技術の補完による事業の拡大に貢献したほか、コアードの連結子会社化により富士通グループの受注が急拡大、新規顧客の獲得などの効果もある。また、エンジニア配置の調整など連携が多くできており副次的な効果も得られたようだ。直近では、4月1日付でユビキタス<3858>からIoT事業を譲受しており、IoTプラットフォームに関連するソフトウエア、サービス及び技術を譲り受けた。ユビキタス傘下では、アプリケーション開発ができずにIoT事業が保有する技術が発揮しきれなかったけれども、同社では様々な案件ができるようで、また同社にとっても補完する技術の獲得や販路の拡大というメリットも見込める。 (執筆:フィスコアナリスト 清水 さくら) 《HN》
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