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アップル Research Memo(5):成長戦略はタイをハブ拠点とした事業展開

2016/10/3 16:10 FISCO
*16:10JST アップル Research Memo(5):成長戦略はタイをハブ拠点とした事業展開 ■アップルインターナショナル<2788>の中期的な経営戦略 (4)タイの自動車市場 タイは、アジアのデトロイトと呼ばれている。完成車メーカーだけでなく自動車部品会社も数多く集積している。2015年の同国自動車生産台数は前年比1.8%増の191万3000台であった。国内販売台数が前年比9.3%減の79万9000台であったのに対し、輸出は同6.8%増の120万4000台と国内販売台数を大きく上回っており、自動車の輸出拠点となっている。 トヨタ自動車<7203>は、2002年に新興国をターゲットとした世界戦略車プロジェクトを発表した。グローバル戦略に基づき、日本で生産されていた車種を海外に移管するのではなく、アジア、中南米、アフリカなどの市場をターゲットに開発されたものを日本以外の地域で生産する。このIMVプロジェクトでは、1つの共有プラットフォームからピックアップトラック、ミニバン、SUVが作られ、さらにピックアップトラックは3つのバリュエーションに分かれる。「IMV」は、“Innovative International Multi-purpose Vehicle”の略であり、「革新的国際多目的車」を意味する。トヨタグループのアジアにおける仕向地販売台数と生産台数は、生産台数が販売台数を上回る逆転現象がみられる。 タイ発のピックアップトラックが国際戦略車となっている。トヨタの日本国内向けピックアップトラック「ハイラックス」は、2004年に6代目で終了した。7代目は、IMVプロジェクトにより新興国向けにパワーと低価格を重視したモデルが開発された。生産はタイで開始され、その後、アルゼンチン、南アフリカと増やした。マレーシアなど他の国では、ノックダウン生産をしている。2015年に市場に投入された8代目は、前モデルに比べ安全性と耐久性を大幅に向上させた。乗り心地を左右するサスペンションの仕様は、スタンダード、高積載に対応するヘビーデューティ、乗用車並みのコンフォートと3種類を用意した。 タイの自動車市場の特徴は、商用車の需要が乗用車よりも大きいことである。2015年の販売台数の構成比は、商用車が62.6%、乗用車が37.4%であった。1トンピックアップトラックは、商用車の77.7%、全体の48.6%を占めた。タイの新車市場では、1トンピックアップトラックが主役となっている。 トヨタは、タイでの販売シェア(Lexusを含む)が2位メーカーを大きく引き離し、33.3%を取っている。トヨタに次ぐいすゞ自動車<7202>は、乗用車の販売はしていない。2015年のメーカー別シェアでは、日本企業が1位から6位まで占めた。トップ10に入った7社のシェアは8割を超え、日本メーカーがタイ市場を席巻している。 総販売台数のうち1トンピックアップトラックが占める割合は、トヨタが55.2%、いすゞが89.7%であった。販売シェアトップ10に入った米系メーカーの同比率は、Fordが77.3%、GM(Chevrolet)が74.6%といずれも高い。 (5)同社のタイにおける経営戦略 タイを基軸にした同社の成長戦略は、タイからの自動車輸出の拡大とオートオークション事業の拡充になる。 タイが東南アジアの自動車産業のハブ拠点となっていることから、同国を軸に中古車輸出事業を展開する。AEC内の関税が撤廃されたため、タイから近隣諸国に売る。消費者のジャパン・クオリティへの評価は、“メイド・イン・ジャパン”だけでなく“メイド・バイ・ジャパン”でも確立してきたことから、日本メーカーのタイ製中古車の輸出を伸ばしていく。ピックアップトラックは、アフリカや南米でも一番の売れ筋商品である。タイからの輸出でアフリカや南米市場向けの販売ルートが築かれているため、そのチャネルを日本からの中古車輸出にも活用する。 (6)タイのオートオークション事業 タイでは、Apple Auto Auction (Thailand) Company Limitedがオートオークション事業を行っている。首都バンコクにメイン・オークション会場を置き、地方11ヶ所にサテライト会場を配し、合計12ヶ所でオートオークション会場を運営している。 タイにおける2015年のオークション総出荷台数は29万台であったが、Apple Auto Auctionが扱った6万5000台はトップの22.5%を占めた。オートオークションのやり方は日本と同じだが、1日当たりの出品台数は、日本の1万台超に対し、タイは約600台と少ない。通信網が完備されておらず、大半はスマートフォンを利用しての参加になる。現地の状況に合わせて、セリのスピードを遅くし、手セリも残している。通信インフラの整備が進み、オークション業務に慣れれば、セリのスピードを上げることが可能になろう。 Apple Auto Auctionの出荷台数における出品者別構成比は、金融機関が85.2%、レンタカー会社が11.4%、中古車ディーラーが1.4%、保険会社が1.3%、エンドユーザーが0.2%、その他0.5%であった。金融機関のウエイトが極めて高い。 Apple Auto Auction (Thailand) Company Limitedは、タナチャート銀行グループとの合弁会社になる。設立時の外資に対する出資制限を受け、同社の所有株比率は34.4%にとどまり、持分法適用会社になる。2年前に、パートナー企業から株式譲渡の合意を得て、100%子会社化の申請をしたものの、2014年5月に軍の暫定政権に変わり、凍結されたままになっている。 タイのオークション会社は、2015年12月期に邦貨換算(1THB=約3.3円)で売上高977百万円、営業利益261百万円、売上高営業利益率26.7%を計上した。2015年12月期の同社連結利益への寄与は持ち株比率の関係で1億円弱であった。 オークション会場の運営は、出品料、落札料、成約料を徴収するフィービジネスであるため、一定水準のボリュームを確保できれば、安定的に高収益を上げることができるビジネスモデルになる。同社は、タイでトップ企業を育て上げた。タイの役員会に使用される資料は78頁にも及び、詳細なデータ分析を行っている。今後は、インドネシアなど近隣諸国で、同様の事業展開を計画している。タイに構築したITシステムが活用できるため、初期コストを抑え、準備期間を短縮することが可能になろう。 (7)タイからの輸出 1トンピックアップトラックの新興国向け中古車輸出は、日本での商品手当てが難しく、タイからの輸出が適していることになる。タイが加盟しているASEAN(東南アジア諸国連合)は、2015年末にASEAN経済共同体(ASEAN Economic Community:AEC)を発足した。域内人口は欧州連合(EU)を上回る6億2,000万人、域内総生産は2兆5000億ドルに達する。シンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン、ブルネイの6ヶ国では、品目ベースで98%以上の域内関税が撤廃された。2018年には、自由貿易地域がCLMV(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)へ拡大する予定だ。2014年のAEC域内貿易額は6,083億ドルと、10年間で2.3倍に増えた。目下、鉄道や国際幹線道路などの輸送網に関するインフラ整備が進められている。 タイは、日本と同じ右ハンドルの国になる。AECの中で、他に右ハンドルの国は、インドネシア、シンガポール、ブルネイ、マレーシアがある。これらの国は、タイからの中古車輸出に適している。 (8)タイを先行モデルとして、アジアで事業展開 2014年末の右ハンドルの国別四輪車保有台数と人口比で見ると、インドの保有台数は3,810万台と多いものの、人口当たりの水準が低い。一方、車社会のオーストラリアの人口比率は70%と高いものの、保有台数はインドの半分もない。ただし、オーストラリアは、賃金が高いこともあり、2017年にはすべての自動車メーカーが組立を含む生産から撤退する。このため、輸出先としては向いている。タイの、保有台数は1,561万台で比率も20%を超える。新興国の中では水準が高く、成熟が進んでいる。 同社は、日本では買取専門店チェーンの本部及び海外輸出事業、タイでのオートオークション事業と中古車流通全般に広くかかわっている。今後、モータリゼーションが進むうえで、輸入中古車を含む中古車流通のインフラ構築が必要な国に、制度の整備やインフラ機能の一翼を担うビジネスモデルを検討している。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健) 《HN》
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2788 東証スタンダード
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時価総額 6,140百万円
中古車輸出事業、中古車買取・販売事業を展開。三重県四日市に本社。中古車輸出販売は東南アジア諸国が主要マーケット。時計などのブランド品買取事業を開始。中古車輸出事業では東南アジア中心に販路拡大図る。 記:2024/09/02
7202 東証プライム
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時価総額 1,510,006百万円
トラック・バスの製造・販売等を行う商用車メーカー。1916年創業。150以上の国・地域で販売。ディーゼルエンジンなどに強み。トヨタ自動車と資本提携。配当性向40%目安。商用車では新型車の拡販などに注力。 記:2024/08/20
7203 東証プライム
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自動車メーカー最大手。カローラ、クラウン、プリウスなど人気車種多数。ダイハツ工業、日野自動車等を傘下に持つ。海外販売台数比率は7割超。グローバル生産累計3億台超。ソフトウェア、AIなどへの投資を加速。 記:2024/08/01