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鴻池運輸 Research Memo(7):通期大幅な増収増益見込みだが、期初予想を変えず保守的予想

2015/1/27 17:05 FISCO
*17:05JST 鴻池運輸 Research Memo(7):通期大幅な増収増益見込みだが、期初予想を変えず保守的予想 ■業績動向 (2)2015年3月通期の見通し 鴻池運輸<9025>では2015年3月期の業績を表のように、売上高243,700百万円(前期比5.3%増)、営業利益9,600百万円(同20.9%増)、経常利益9,400百万円(同17.4%増)、当期純利益5,400百万円(同23.6%増)と予想している。第2四半期累計の業績が期初予想を上回る結果であったにもかかわらず、この通期予想は期初予想と変わっておらず、かなり堅めの予想と言えそうだ。 同社を取り巻く環境には消費税増税後の景気回復の遅れ、新興国経済の下振れリスクなどが潜在するが、内需の回復による公共投資や設備投資の増加により国内鋼材需要は堅調に推移すると予想される。一方で、人材需給のひっ迫による傭車料の上昇や燃料価格の高止まりなどのコスト増が懸念される。これらのコストアップは、顧客への価格転嫁でカバーする予定で、既に一部では価格改訂が承認されている。 また後述するように、同社は全社的に「収益性重視」の方針を打ち出しており、これが少しずつだが末端の事業所などにも浸透しつつある。この効果によって利益率も改善しており、2015年3月期は営業利益で20%超の大幅増益を予想している。 ○セグメント別業績予想 セグメント別売上高は表のように、複合ソリューション事業159,100百万円(同7.3%増)、国内物流事業52,000百万円(同1.0%増)、国際物流事業32,500百万円(同2.4%増)を予想している。またセグメント利益は、複合ソリューション事業11,600百万円(同7.5%増)、国内物流事業1,600百万円(同54.1%増)、国際物流事業1,300百万円(同0.2%減)を見込んでいる。各セグメントでの増収に加え、販売管理費の節減、2014年3月期に足を引っ張った新物流センターの立ち上げによる経費増が改善されるほか、不採算事業からの撤退などにより利益率は大きく改善される見込みで、複合ソリューション事業と国内物流事業のセグメント利益は大幅増が予想されている。国際物流事業については、海外政情や為替の動向が不透明であることからセグメント利益は横ばいが予想されている。 ○分野別業績予想 分野別売上高では、鉄鋼関連54,400百万円(前期比6.3%増)、食品関連61,700百万円(同0.4%増)、生活関連76,700百万円(同11.5%増)、定温関連18,100百万円(同1.4%減)、海外関連32,500百万円(同2.4%増)を予想している。 生活関連の内訳では、生活業務16,900百万円(同5.7%増)、空港業務が10,500百万円(同8.1%増)、メディカル業務15,400百万円(同54.0%増)、流通・アパレル業務が33,800百万円(同2.1%増)を見込んでいる。 (鉄鋼関連) 主要取引先の合併に伴う合理化の影響もほぼ一巡し、全般的な粗鋼生産量の回復や東北地区の復興需要に関連する新規事業の獲得などがあったことから増収増益を予想している。 (食品関連) 主要食品メーカーの新規飲料製品拠点での保管・輸送量が増加する見込みであるものの、天候不順による上半期の落ち込みを完全にカバーするのは難しいことから、微増収、利益横ばいを予想している。 (生活関連) メディカル業務では、既存業務での取扱量増加、院内物流の増加、新規顧客獲得等に加えてM&Aによって2014年7月から連結に加わった子会社(九州産交運輸)の寄与(今期9ヶ月で約4,900百万円の見込み)などから大幅増収が見込まれる。流通・アパレル業務では一部で取扱量減少が見込まれるが、全体的には増収を維持すると予想している。一方、2014年3月期は中国便の減少によって影響を受けた空港業務も引き続き取扱便数の増加、機材の大型化が期待できることに加え、羽田での業務を本格的に開始したことの寄与もあって増収増益を予想している。 (定温関連) 業務全般、特に採算性を見直し中であり、その一環で不採算だった関東地区のコンビニエンスストア向け事業から撤退したことなどにより減収予想だが、利益率は大きく改善する見込みだ。 (海外関連) 国内拠点では、販促品や調理家電の輸入業務、米国向け食品用包装材の輸出業務の増加が見込まれる。海外現地法人では、ベトナムでの製造設備の輸送・搬送業務や定温物流業務の獲得、中国での新倉庫取扱量の増加などにより増収を予想している。 ○2015年3月期の重点方針:収益性の改善 上記のような予想利益を達成するにあたり、同社は2015年3月期の重点方針として「収益性の改善」を掲げ、この実行に取り組んでいる。これは以下のような方針に沿って、トップライン(売上高)を伸ばしつつ、一方でコスト削減を進めて、全体の利益率を改善するというものだ。 (既存分野での売上伸長) 同社の売上高は景気変動、新規顧客の獲得、顧客の事業方針などによって大きく左右されるが、現在同社が進めているのは、このような外部要因による売上高増ではなく、顧客への既存のサービスや事業の中からさらに追加的な受注を取っていこうというものだ。言い換えれば、既存事業の「深掘り」だ。 例えば、顧客企業とのコミュニケーションをさらに密にすることで、その顧客が求めているもの、あるいは必要としているものの中に、同社が手助けできる作業などを見つけることができるかもしれない。もしそれが実現可能であれば、同社としては新しい役務を提供することで売上高を伸ばすことが可能になる。さらに、そのようなサービスを横展開して他の顧客に提供することでも売上高伸長が可能になってくるだろう。 (収益性の改善) 同社が掲げているもう1つの重要な方針が「収益性=利益率」の改善である。これはすべての企業にとって重要なテーマだが、同社の場合、非上場の期間が長かったことから、「収益性=利益率」に対する意識はどちらかと言えばやや希薄であったようだ。 しかし2013年に株式を上場して以降は、全社的な方針として、経営陣や管理職は言うに及ばず、一般社員へも収益性に対する意識高揚を進めている。この1つの例が、前述の定温関連における不採算事業からの撤退である。以前であれば、顧客との関係や売上高維持のために容易に踏み切れなかったであろうが、今回は「収益性重視」の方針から取引中止を決断した。 このようなコスト意識は、少しずつだが末端の事業所や倉庫、配送センターなどにも浸透しつつある。同社ではトップダウンで「○○費用をXX億円削減」などの大きな目標を掲げるのではなく、収益性改善は各現場に任せている場合が多い。各現場がそれぞれに創意工夫をすることで、効率の改善や無駄な経費の削減が少しずつ進んでいるようだ。各現場での削減金額は少なくても、全社で積み上げれば大きな金額になる。最も重要なのは、各現場が主体的に取り組むことで「収益性に対する社員の意識改革が進むことだ」と同社は述べている。 当然だが、これらの重要方針は2015年3月期だけのものではなく、来期以降も続いていくものだ。中期経営目標を達成するためにも、その基点となる2015年3月期の予想利益を達成することは重要であり、今後の動向には大いに注目したい。 ○設備投資・減価償却予想 同社は、2015年3月期の設備投資額で7,657百万円(前期比807百万円減)、減価償却費で6,854百万円(同91百万円増)を計画している。通常の水準よりやや低いレベルであるが、2016年3月期には大きな投資を計画しているようだ。 主要な案件は子会社の関西陸運(株)での本社・営業新倉庫(高松流通センター)の建設費1,030百万円、中国子会社での定温物流センター建設費1,055百万円などである。その他は通常の更新投資などである。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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総合物流企業。1880年創業。食品、鉄鋼、化学など製造業向け請負、物流業務、流通加工業務、国際物流等を手掛ける。日本製鉄等が主要取引先。適正単価の収受、業務効率化進める。31.3期営業利益250億円目標。 記:2024/06/24