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メキシコペソに売り圧力【フィスコ・コラム】

2024/3/10 9:00 FISCO
*09:00JST メキシコペソに売り圧力【フィスコ・コラム】 メキシコの引き締め的な金融政策で、ペソの底堅さが顕著になっています。ただ、3カ月後に同国大統領選・議会選を控え、今後の売り圧力として警戒感が浮上。一方、隣国アメリカの大統領選もリラ売り要因として意識せざるを得ず、国内外の政治情勢が注目されます。 ドル・メキシコペソは今年に入り17ペソを挟んでもみ合いが続き、同じ新興国の南アランドや中国人民元と比べても安定的な値動きが目を引きます。昨年10月に18.30リラ台まで下落後、年末にかけて持ち直しました。メキシコ中銀は引き締め的な政策姿勢を堅持しており、政策金利からインフレ率を差し引いた実質金利のプラス幅が拡大。投資妙味が増していることがペソを支える要因とみられます。 メキシコ中銀による2021年6月の4.00%から4.25%への利上げを皮切りに、15会合にわたる歴史的な引き締めサイクルで政策金利は23年3月には11.25%に。消費者物価指数(CPI)は2022年の秋口に8.7%まで上昇しましたが、それをピークにインフレは沈静化に向かいます。同中銀は23年5月から今年2月まで政策を維持していますが、CPIは小幅ながら再上昇し、手綱を緩めることはできません。 主要国は利下げに慎重ですが、メキシコも同様です。ロドリゲス総裁は最近公表した四半期報告書に関連し、目先の調整の可能性に言及したものの、その余地は緩やかとの見方を示しています。特にサービス部門のインフレが最も懸念されており、時期尚早の利下げは大きな過ちになると指摘。中銀内でのインフレに関する見方は一致しているもようで、中銀の政策がペソの底堅さを支える公算です。 ただ、同国の政治情勢はペソ売りの材料になりかねません。6月の大統領選・議会選に向け、今月から選挙戦に突入。女性候補どうしの一騎打ちが大きくクローズアップされる大統領選は、ロペスオブラドール大統領の腹心のシェインバウム前メキシコ市長が支持率でリードしています。このままいけば、与党の国家再生運動(MORENA)は左派寄りの政策を踏襲する方針で、ペソは積極的に買いづらいでしょう。 米大統領選も気がかりです。バイデン政権発足後にメキシコからアメリカへの不法越境者が急増しており、移民政策は大きな争点の1つ。実際、バイデン氏と共和党の有力候補、トランプ前大統領は先月末、南部テキサス州の国境沿いを視察しています。トランプ氏は2016年の大統領選からテキサス州の「国境の壁」建設を看板政策としており、メキシコへの厳しい対応は8年前のペソ急落を想起させます。 (吉池 威) ※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。 《TY》