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NZドルの重すぎる上値【フィスコ・コラム】

2023/11/5 9:00 FISCO
*09:00JST NZドルの重すぎる上値【フィスコ・コラム】 NZドル・円は8年ぶりの高値圏に浮上したものの、節目の90円付近で上げ渋る展開。10月のニュージーランド総選挙で勝利した国民党による景気のテコ入れが期待され、NZドル買いが入りやすい地合いです。ただ、現状は下押し要因が目立ち目先も伸び悩みそうです。 NZドル・円にとって90円台は重要な節目の水準で、短期間定着した後に割り込むと、その後の数年間は低迷するといった特徴があります。2000年以降では2007年と2015年にこの水準を上抜け、今年9月29日にそれ以来となる90円17銭まで一時強含みました。しかし、それを高値に失速。10月以降も底堅さは維持されているものの、87-89円のレンジ相場で再び大台を目指す地合いにはなっていません。 重石となっているのは金融政策です。NZ準備銀行(中銀)は2021年10月から利上げサイクルに入り、今年5月まで12会合連続で政策金利を引き上げ、5.50%としました。その後7月に、景気減速とインフレ鈍化の兆候により利上げを停止。10月も政策の据え置きを決定しています。政策金利のターミナルレート(最終到達水準)との見解を維持したことで利上げ打ち止めの思惑からNZドル売りに振れました。 ドルや円の値動きもNZドルの下押し要因になります。米連邦準備制度理事会(FRB)の引き締め長期化観測によりNZドル・ドルはドル買い主導で弱含み、NZドル・円はそれに連れ安する場面がみられます。また、最近ではイスラエルとハマスによる中東での紛争で安全通貨としてドルや円が選好されるなか、NZドルへの売り圧力が強まっています。日本政府の円安けん制もやはりNZドルの重石になります。 逆に押し上げる材料もあります。NZドルは政治情勢に影響を受けにくい通貨として知られますが、10月14日の総選挙で勝利した中道右派、国民党の政策がNZドル高の手がかりになると注目されます。同党は2018年に労働党前政権が中銀の役割として追加した雇用目標を削除するとの公約を今後進める見通し。中銀が政策内容をインフレに絞り込むと、タカ派的になりやすいと市場はみています。 今回の総選挙は経済の再生が最大の争点でした。国民党党首で首相候補のラクソン氏は政策的に近いACT党と連立を組む方針で、右派寄りの連立政権は所得減税やインフラ整備をはじめ、景気対策を打ち出す見込み。財政の悪化は引き続き懸念材料ながら、経済立て直しへの期待が高まっており、新政権の本格稼働はNZドル買い材料になります。ただ、やはり節目付近で売りが強まり、上値の重さが意識されています。 (吉池 威) ※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。 《TY》