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【フィスコ・コラム】:「トランプVSメディア」の仁義なき戦い

2017/5/21 13:26 FISCO
*13:26JST 【フィスコ・コラム】:「トランプVSメディア」の仁義なき戦い 昨年11月のアメリカ大統領選で筆者がトランプ氏の勝利を喜んだのは、メディアが権力の監視という本来の役割に目覚めると考えたからです。大統領を退陣に追い込んだ「ウォーターゲート事件」の再現を期待したのです。しかし、そのタイミングがこれほど早く訪れるとは思いませんでした。 アメリカのメディアでは、大統領就任前からトランプ陣営とロシアとの「共謀」疑惑が取り沙汰されてきましたが、今月9日のコミー前連邦捜査局(FBI)長官の突然の解任を機に、報道は一段とヒートアップしています。ここへきて、トランプ大統領が解任前のコミー氏に対しマイケル・フリン前大統領補佐官(国家安全保障担当)への捜査中止を要求した疑惑も出てきました。 フリン氏は大統領の側近として、就任前の昨年12月に対ロシア制裁の取り扱いをめぐりロシア当局者と協議。これが民間人の外交政策関与を禁ずる法律に抵触したとされ、2月に辞任しています。下院監視・政府改革委員会による公聴会での内容とその後の進展次第では、トランプ大統領の弾劾裁判につながる可能性もあります。 そうした事態に発展すれば、1974年8月のニクソンのケース以来となります。「ウォーターゲート事件」は、1972年の大統領選を控え、当時野党だった民主党の本部に盗聴器を仕掛けようとして侵入した犯人グループの逮捕をきっかけに再選を狙っていたニクソン政権の関与が明らかになった政治スキャンダルです。事件の発覚でホワイトハウスが司法妨害や隠ぺい工作に直接関わったことが次々に暴かれ、ニクソンは2期目の任期途中での辞任を余儀なくされました。 当初は単なる侵入・窃盗事件として扱われたものの、ワシントン・ポストの若手記者2人は取材の過程で犯人グループが大統領選に関連している事実をつかみ、さらに取材を進めます。「ディープ・スロート」と呼ばれた取材源(当時FBI副長官を務めた人物と後に判明)からたびたび情報を得て内幕を暴露し、世論を動かしました。メディアが糾弾して大統領を退陣に追い込んだことは、世界中のジャーナリストに影響を与えました。日本では当時の田中角栄首相が金脈問題を雑誌に暴かれ、その後に辞任しています。 しかし、それから40年以上も経過した現在、アメリカのメディアはすっかり変質しました。特に「メーンストリーム・メディア」と呼ばれる大手の報道機関は先の大統領選でも、エスタブリッシュメント支配の既成政治を体現するクリントン氏を当選させようと、露骨なまでに肩入れしていました。クリントン氏が当選していたら、当然のようにメディアは権力と渾然一体化していったでしょう。 ところが、まさかのトランプ政権が現実となり、メディアによる権力の監視という構図が鮮明になっているのは皮肉です。特に、メーンストリーム・メディアはトランプ政権への敵意をむき出しにて、どうにかこの異質な大統領を引きずり降ろそうとしています。ただ、動機はどうあれジャーナリズムが復活するのであれば結構なことです。 トランプ大統領とアメリカのメディアによる仁義なき戦いには、メディアの影響力を測るという別の視点もあります。「ウォーターゲート事件」当時と比べると、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の台頭により既存メディアの信頼性や影響力は低下しています。クリントン氏の敗北にメディアがショックを受けたのはまさにこのためだと思われます。トランプ大統領を辞任に追い込んだとなれば影響力に関する自信を取り戻せことができるでしょうが、逆に退陣に追い込めなければさらに衰退しかねません。メディアにとって「ロシアゲート」は最終決戦の場でもあるのです。 (吉池 威) 《MT》