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日経平均は小幅続落、インフレと金融政策巡る論争、どちらに分があるか

2022/7/26 12:09 FISCO
*12:09JST 日経平均は小幅続落、インフレと金融政策巡る論争、どちらに分があるか  日経平均は小幅続落。17.52円安の27681.73円(出来高概算4億4605万株)で前場の取引を終えている。  25日の米株式市場でダウ平均は90.75ドル高(+0.28%)と反発。6月シカゴ連銀全米活動指数や7月ダラス連銀製造業活動指数が予想を下回り2カ月連続のマイナスに落ち込んだことで、景気後退懸念が強まるなか寄り付き後下落。連邦公開市場委員会(FOMC)の結果を28日午前3時頃と直前に控えるなか、終日持ち高調整の売り買いが交錯。方向感に欠けるなかダウ平均はプラス圏を維持したが、ハイテク株は主要企業決算の発表を控えた警戒感から売られ、ナスダック総合指数は-0.43%と続落。ダウ平均先物が軟調な中、日経平均は17.05円安からスタート。小売の米ウォルマートが業績予想の下方修正を発表し、時間外取引で売られていたことが影響した。前半は売り優勢が続き、朝方に一時27538.39円まで下げた。ただ、心理的な節目を手前に下げ渋ると、前引けかけては前日終値近くまで戻した。  個別では、郵船<9101>や川崎汽船<9107>、商船三井<9104>が大きく下落。任天堂<7974>、リクルートHD<6098>、エムスリー<2413>のグロース(成長)株も冴えない。ほか、オムロン<6645>、テルモ<4543>、ニトリHD<9843>が軟調。日本電産<6594>は決算発表後に4日続落。米国民事訴訟での和解金として特別損失の計上を発表した日本ケミコン<6997>、第1四半期経常利益が2ケタ減となったコーエーテクモ<3635>は大きく下落。  一方、中国アリババグループが香港取引所でのプライマリー上場を申請すると発表したことを受けてソフトバンクG<9984>が大幅高。ロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプラインの稼働率が低下したことなどを背景に原油先物相場が上昇したことで、INPEX<1605>、石油資源開発<1662>が大きく上昇し、大阪チタ<5726>、東邦チタニウム<5727>、大平洋金属<5541>など資源関連が全般強い動き。米長期金利の上昇を背景に第一生命HD<8750>、三菱UFJ<8306>など金融が堅調で、月次販売動向を手掛かりに神戸物産<3038>が大幅に上昇。好決算や業績予想の上方修正を発表したKOA<6999>、ダブル・スコープ<6619>、インソース<6200>が急伸し、東証プライム市場の値上がり率上位に並んでいる。  セクターでは海運、その他製品、精密機器が下落率上位となった一方、鉱業、石油・石炭、保険が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体34%、対して値上がり銘柄は60%となっている。  ウォルマートの業績下方修正を背景としたダウ平均先物の軟化を受けて、前場の日経平均は一時150円超下落したが、その後は前日終値近くまで戻し、200日移動平均線線上での底堅い動きを維持している。先週までの短期間での上昇幅や飛び込んできたウォルマートのネガティブな報道から、神経質に反応することを想定していたため、個人的にはかなり底堅い印象を抱く。  一方、28日未明に控える米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果公表に加え、今晩のアルファベットとマイクロソフトを皮切りに始まるGAFAMの大型テック決算など、今週に集中する注目イベントを前に持ち高を大きく動かしたくない表れとも捉えられる。  実際、日経平均は13日から先週末まで7日続伸し、この間の上げ幅は1500円を超えたが、東証プライム市場の売買代金は一度も3兆円を超える日がなく、2兆円台半ば前後にとどまっていた。前日にいたっては、かろうじて2兆円台に乗せる程度で商いはかなり薄く、本日も前引け時点での売買代金は1兆1000億円程度だ。溜まっているエネルギーが各種イベント通過後に大きく動きだす可能性を考慮すると、今週後半の相場のボラティリティーは大きくなりそうだ。  一方、気掛かりなのは米国の景況感の悪化ペースだ。2~3カ月程前から経済指標の下振れが目立ち始めたが、足元では悪化ペースが加速している。直近の指標を確認すると、まず7月フィラデルフィア連銀製造業景況指数は-12.3と予想(+1.5)を大幅に下回った。下振れは4カ月連続で下振れ幅も拡大傾向にある。6月、7月分にいたっては2カ月連続で予想のプラスに反してのマイナスだった。その前に発表されていた7月NY連銀製造業景気指数は+11.1と予想(-2)を上回ったが、6カ月先の景況指数は前月から20pt余りも低下し、-6.2と急低下した。  さらに、米国の製造業・サービス業合わせた7月総合購買担当者指数(PMI)速報値は前月比4.8pt低下の47.5だった。拡大と縮小の境界値である50を約2年ぶりに下回り、新型コロナパンデミックの発生直後である2020年5月以来の低水準となった。前日に発表された6月シカゴ連銀全米活動指数、7月ダラス連銀製造業活動指数も予想を下回って2カ月連続のマイナスに落ち込んでおり、経済指標の悪化ペースや下振れ傾向が強まっている印象が否めない。  こうした中、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペースを巡っての市場関係者の見方が分かれている。モルガン・スタンレーのストラテジストは景気後退懸念が強まるなかでも、FRBが金融引き締めをやめると想定するのは時期尚早だと指摘している一方、JPモルガン・チェースのストラテジストはインフレがピークに達したとの見方から、FRBは政策転換に踏み切り、株式市場の状況も今年後半には改善すると分析している。  さらに、市場では、早ければ今年12月には利上げが打ち止められるとの期待まで織り込まれつつあるようだ。しかし、筆者としては、JPモルガンの今年後半における市場環境の改善には一部賛同しつつも、12月の利上げ打ち止めはさすがに時期尚早で、個人的にはモルガン・スタンレー側の見方に近い考えだ。  今週末に発表される米6月個人消費支出(PCE)コアデフレータは前年比+4.7%が予想されているが、これはFRBの目標である+2.0%を依然として大幅に上回っている。仮に目標値を3%に引き上げたとしても、乖離幅はやはり大きい。物価指標の伸びはピークアウトしつつあるとはいえ、FRBが、インフレが目標値を上回っているなか利上げ停止を示唆するとは考えにくい。  雇用統計での平均賃金の伸びは最新6月分時点でもまだ前年比+5.1%と高い水準にある。12月時点で利上げ打ち止めに踏み切れるほどに、ここから大幅な物価指標の伸びの減速が期待できるとは考えにくく、FRBの目標値までインフレが低下するにはかなり時間がかかると推察される。  足元では日米ともに株価指数の底入れ期待が強まりつつ。実際、今週の大型イベントをすべて無難に通過できるのであれば、こうした見方はより一層強まるのだろう。しかし、インフレとFRBの金融政策を巡るやや楽観に傾いた見方は、来月の物価指標が発表されるタイミングなど、どこかで再び修正を迫られる可能性があると意識しておきたい。  後場の日経平均は前日終値を挟んだもみ合いが続きそうだ。アジア市況は堅調だが、ウォルマートの業績下方修正を受けた今晩の米株市場の反応を確認したいほか、スナップチャットやツイッターの決算を機に警戒感が高まっている、明日未明に発表予定のアルファベットの決算を見極めたいとの思惑が強く、積極的な売買は手控えられよう。(仲村幸浩) 《AK》
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