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南シナ海・東シナ海における米中戦略的競争(その1)【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】
2021/1/7 9:51
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*09:51JST 南シナ海・東シナ海における米中戦略的競争(その1)【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】 米国海軍協会(USNI:United States Naval Institute)は、毎月「Proceedings」という雑誌を発行している。1874年に協会の機関誌として創刊された同雑誌では、現役、退役軍人などによる軍事関連記事や著名な作家や研究者による問題提起の記事が掲載されており、「米国における最良かつ最も影響力のある軍事雑誌」としての評価を得ている。2020年12月17日号では「南シナ海・東シナ海における米中戦略的競争:その背景と米議会の課題」という報告書が掲載された。その中には、我が国の安全保障に影響する記述も含まれている。 「米国の戦略的競争の目標」:本報告書は、南シナ海(SCS:South China Sea)及び東シナ海(ECS:East China Sea)における米中戦略的競争に関する背景情報と議会に対する課題を提供するものである。近年、国際的な安全保障環境の中で、大国同士の競争が再燃していると言われている。中国のSCSでの行動により、米国とその同盟国とパートナー国にとって戦略的、政治的、経済的に重要な領域において支配権を獲得しつつあることへの懸念が強まっている。また、ECSでは、日本が管理する尖閣諸島における中国海警局船舶の行動も米国にとって懸念材料である。SCSとECSにおける米国の戦略的競争の目標は、この地域における、米国主導の安全保障構造のパワーバランスの維持である。 「米国の同盟国とパートナー国との地域安全保障構造」:ECS、黄海及びSCSは、日本、韓国、フィリピンの3つの条約同盟国と国境を接している。また、台湾はSCSおよびECSに面しており、台湾関係法(1979年4月10日法律第2479号)に基づき、米国は安全保障関連の一定の政策を有している。SCSは、さらにシンガポール、ベトナム、インドネシアなど米国のパートナー国と中国が国境を接している。中国は、米国と同盟国及びパートナー国とを引き裂くため、接近阻止・領域拒否(A2/AD)能力を高めようとしており、地域ヘゲモニーとしての広範な目標を達成しようとしている。中国は、中台間の危機、日本やフィリピンとの国防協定に基づく義務履行を困難にする可能性がある。中国はこのような紛争を利用して米国の同盟国やパートナー国の間で、米国の信頼性に疑念を抱かせ、そこに楔を打ち込み、米国主導の地域安全保障構造を弱体化させ、自らの影響力拡大を促進する戦略を描いているようだ。 「海洋の自由の原則」:第二次世界大戦以降、米国主導で運営されてきた国際秩序の一つの重要な要素は、「海洋の自由の原則」であり、国際法の下で世界の海を国際水域(グローバル・コモンズ)として扱い、活動の自由を維持してきた。海洋の自由の原則の起源は、約400年前の1600年代初頭に遡る。国防総省は、「歴史の中で、米国は海洋の自由を守るという重要な国益を主張してきた」と述べた。米国海軍の最初の任務の一つは、大西洋と地中海で海賊やその他の海洋上の脅威からアメリカの商業船を守ることだった。米国をはじめとする自由主義陣営の国々は、普遍的な原則として「海洋における絶対的な航行の自由」という価値観を共有している。 「中国の海洋法解釈」:中国の海洋法の解釈とSCSにおける中国の行動が、海洋の自由の原則に対する重大な挑戦となることを懸念する声がある。特に懸念される解釈は、(1)中国のSCSにおける九段線の設定、(2)中国の明らかに狭い航行の自由の定義、(3)排他的経済水域(EEZ:Economic Exclusive Zone)における外国軍の活動を規制する権利を有する、というものである。国際法は普遍的に適用されるものであり、世界のどの地域でも受入れられなければならない。「海洋の自由」の原則を弱めることは、世界の海を国際水域として扱ってきた約400年の法的伝統からの離脱・後退を意味するのである。 「中国の法解釈」:中国は、台湾、ベトナム、マレーシア、ブルネイ、フィリピンとの間で領有権問題を抱え、法的根拠のない領有権主張を繰り返している。また、EEZ内での外国による軍事活動の規制についてのこれを認めない解釈をしている。SCSやECSにおいて、中国が主権を主張する島嶼へのEEZ設定を認めると、中国が外国の軍事活動を制限するEEZ区域を拡大することになる。米国をはじめとする多くの国は、国際法のEEZに関する規定を定めた国連海洋法条約(UNCLOS)において、EEZ内での経済活動を規制する権利を沿岸国に与えているが、外国軍の活動を規制する権利は与えていない。この点において中国は、米国をはじめとする他の国々の解釈と異なった解釈を行っているのである。 サンタフェ総研上席研究員 將司 覚 防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。P-3C操縦士、飛行隊長、航空隊司令歴任、国連PKO訓練参加、カンボジアPKO参加、ソマリア沖・アデン湾における海賊対処行動教訓収集参加。米国海軍勲功章受賞。2011年退官後、大手自動車メーカー海外危機管理支援業務従事。2020年から現職。 提供:U.S. Navy/AP/アフロ 《RS》
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