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アンジェス Research Memo(5):新型コロナウイルス感染症DNAワクチンは米アカデミアと共同研究を開始

2023/7/19 14:45 FISCO
*14:45JST アンジェス Research Memo(5):新型コロナウイルス感染症DNAワクチンは米アカデミアと共同研究を開始 ■主要開発パイプラインの動向 4. 新型コロナウイルス感染症予防DNAワクチン及び治療薬 (1) 新型コロナウイルス感染症予防DNAワクチン アンジェス<4563>は2022年9月7日付で新型コロナウイルス感染症(武漢型)向けDNAワクチンの開発中止と合わせて、変異株(オミクロンBA.5等)に対する改良型DNAワクチンの経鼻投与製剤について、米スタンフォード大学と共同研究契約を締結して開始することを発表した。これまでの研究開発の知見を生かして、プラスミド※の発現効率や導入効率の向上等、プラットフォームの見直しを行い、将来発生する可能性のある新たな変異株への対応も視野に入れ、安全でより効果の高い改良型DNAワクチンの経鼻投与製剤の研究開発を進める方針だ。 ※プラスミド(plasmid)とは、大腸菌などの細菌や酵母の核外に存在し、細胞分裂によって娘細胞へ引き継がれるDNA分子の総称。一般的に環状の2本鎖構造を取り、染色体のDNAからは独立して複製を行う。その独立した遺伝子複製機構から、遺伝子組み換え操作のベクターとして創薬などで利用されている。このプラスミドを大腸菌に導入し、大腸菌の大量培養により目的のDNAを増幅する。プラスミド製法では、HGF遺伝子治療用製品「コラテジェン(R)」が上市済みであり、製法そのものについての安全性は確認されている。 スタンフォード大学が開発した「Gold-Nanostar Octopod」技術を用いて作製した経鼻投与ワクチン(武漢型の遺伝子配列を持つプラスミドDNA)でマウス実験を実施したところ、ワクチン投与後に血清中の抗体(IgG、IgA、IgM)上昇が確認されたほか、β株等の変異株に対しても中和活性を示し、組織学的な検討によりリンパ節・脾臓においてスパイクタンパク質に対する細胞性免疫反応、液性免疫反応が確認された。また、経鼻投与によって感染経路となる鼻や喉などの気道部分に免疫を作ることで感染防止効果も高まることから、同技術を用いて研究開発を行う価値があると判断した。共同研究の期間としてはおおむね3年程度、研究費は約3百万米ドルを見込んでいる。コロナワクチンの主流となっているmRNAワクチンは保存温度の条件がマイナス70℃以下だが、DNAワクチンはマイナス20℃以下でよく、また凍結乾燥剤にすれば室温での保存も可能となる。このため、冷蔵設備や低温物流等のインフラが整備されていない発展途上国で需要があると同社では見ており、順調に開発が進めばライセンス契約も視野に入れ海外で臨床試験を行うことを想定している。 なお、今まで実施してきた新型コロナウイルス感染症(武漢型)向けワクチンの研究開発費用は国の補助金等で賄われており、入金された補助金は監査が完了した分を営業外収益として計上する。2022年12月期末に前受金として5,764百万円を計上しており、今後、開発プロジェクトの実績報告書について関係当局が監査・承認を行った段階で補助金等の金額が確定(補助金収入として計上)することになり、2023年12月期の営業外収益として計上する見込みとなっている。 (2) 新型コロナウイルス感染症治療薬「AV-001」の開発状況 カナダのVasomuneとの共同開発品である「AV-001」(Tie2受容体アゴニスト化合物)※は、もともと2018年より全世界を対象に急性呼吸不全など血管の不全を原因とする疾患を対象とした治療薬として共同開発を進めてきたものだが、中等度から重度の新型コロナウイルス感染症肺炎患者向けの治療薬としても効果があると判断し、2022年1月より米国で前期第2相臨床試験を実施している(目標症例数は約120例)。ただ、新型コロナウイルス感染症の変異株に関しては重篤な肺炎を発症する感染者が急減している状況を鑑み、現在は対象疾患をインフルエンザ等のウイルス性及び細菌性肺炎を含むARDSに拡大しており(FDA承認済み)、2023年内に目標症例数の登録完了を目指している。 ※同社は2018年7月にVasomuneと、急性呼吸不全など血管の不全を原因とする疾患を対象とした「AV-001」の全世界を対象とした共同開発契約を締結した。開発費用と将来の収益を折半し、また、同社がVasomuneに対して契約一時金及び開発の進捗に応じたマイルストーンを支払う契約となっている。ARDSの患者数は米国だけで26万人いる。 なお、「AV-001」の開発にあたっては、米国及びカナダの政府関係機関からVasomuneが助成金を獲得しており、開発費負担分に応じて同社もVasomuneから補助金の一部を受領している。2023年12月期第1四半期は32百万円(前年同期は84百万円)を受領し、補助金収入として営業外収益に計上した。 高血圧DNAワクチンはプラスミドDNAの発現量改善に向けた技術改良等の検討を進める 5. 高血圧DNAワクチン プラスミドDNA製法を用いたワクチンの1つとして、高血圧症を対象としたDNAワクチン(AGMG0201)の開発を進めている。同ワクチンは大阪大学の森下竜一(もりしたりゅういち)教授の研究チームにより基本技術が開発されたもので、血圧の昇圧作用を有する生理活性物質アンジオテンシンIIに対する抗体の産生を誘導し、アンジオテンシンIIの作用を減弱させることで長期間安定した降圧作用を発揮するワクチンとなる。 現在販売されている主な高血圧治療薬としてはARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬(経口薬))があるものの、毎日服用する必要があるため、長期的に見た患者1人当たりの治療コストは高くなる。同社が開発するDNAワクチンは既存薬よりも高薬価になると想定されるが、薬効の持続期間によってはトータルの治療コストが既存治療薬を下回る可能性もある。 同社がオーストラリアで2018年4月から実施した第1相/前期第2相臨床試験(症例数24例)の結果については、2021年10月17日付でHypertension Researchに論文として掲載された。要旨としては、安全性に問題がなく、DNAワクチンを投与した患者では、特に高用量群で抗アンジオテンシンII抗体の産生が多く認められ、全体として同ワクチンに対する忍容性は良好であるとの結果であった。ただ、被験者ごとに抗体価にバラつきがあるため、今後はプラスミドDNAの発現量を増やすための技術的な改善が必要であり、当面は技術改良に向けた検討を進めていく予定である。なお、高血圧DNAワクチンに関しては2020年6月に日本で、7月に米国でそれぞれ製剤特許及び用途特許を取得している。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲) 《SI》
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大阪大医学部発のバイオベンチャー。遺伝子医薬やDNAワクチンのバイオ医薬品を開発。受託数の順調増で手数料収入は伸長。研究開発費は減少。23.12期通期は損益改善。24.12期は大幅増収、損益改善計画。 記:2024/03/05