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シンバイオ製薬 Research Memo(3):「トレアキシン(R)」は売上成長ポテンシャルが約2倍に拡大(1)

2021/12/23 15:23 FISCO
*15:23JST シンバイオ製薬 Research Memo(3):「トレアキシン(R)」は売上成長ポテンシャルが約2倍に拡大(1) ■シンバイオ製薬<4582>の開発パイプラインの動向 1. 「トレアキシン(R)」(一般名:ベンダムスチン塩酸塩) 「トレアキシン(R)」は悪性リンパ腫向けの抗がん剤となる。悪性リンパ腫とは白血球の一種であるリンパ球ががん化(腫瘍化)し、リンパ節や臓器にかたまり(腫瘤)ができる病気で、全身に分布するリンパ節やリンパ節以外の臓器(胃、腸、甲状腺、脊髄、肺、肝臓、皮膚、眼など)からも発生する。血液がんの中でも最も多い疾患で、国内における年間発生数は10万人に約10人と言われている。悪性リンパ腫は主にホジキンリンパ腫(HL)と非ホジキンリンパ腫(NHL)に分かれており、日本では約90%がNHLで占められる。また、症状の進行速度によって低悪性度、中悪性度、高悪性度に分類され、様々な病型がある。 (1) 適応症の拡大 同社は「トレアキシン(R)」の販売戦略として、段階的に適応症の拡大に取り組んできた。2010年10月に再発・難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫(NHL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)の販売承認を得たのを皮切りに、2016年8月に慢性リンパ性白血病(CLL)、同年12月に未治療(初回治療)の低悪性度NHL/MCLの販売承認を取得した。また、2018年7月には日本血液学会が発行した造血器腫瘍診療ガイドラインに「トレアキシン(R)」と「リツキシマブ」の併用療法(BR療法)が新たに収載され、既承認のすべての適応症において標準的治療の選択肢として推奨されることになり、名実ともに「トレアキシン(R)」が悪性リンパ腫における標準療法として位置付けられることとなった。 そのほか、低悪性度NHLの代表的な組織型であるCD20陽性の濾胞性リンパ腫(FL)に対して、「リツキシマブ」のみならず新規の抗CD20抗体製剤との併用に係る一部変更承認を2018年7月に取得し、「オビヌツズマブ※1」との併用療法が治療選択肢として加わったほか、腫瘍特異的T細胞輸注療法※2の前処置に関する一部変更承認を2019年3月に取得し、国内初のCAR-T療法※3「キムリア(R)点滴静注※4」の前処置として「トレアキシン(R)」の使用が可能となるなど、悪性リンパ腫の標準療法としての位置づけがさらに盤石なものとなっている。 ※1 オビヌツズマブ(「ガザイバ(R)」:販売元 中外製薬):NHLの治療薬として国内外の治療ガイドラインで推奨されている「リツキシマブ」と同様、幹細胞や形質細胞以外のB細胞上に発現するタンパク質であるCD20に結合する、糖鎖改変型タイプII抗CD20モノクローナル抗体で、標的となるB細胞を直接、及び体内の免疫系とともに攻撃し、破壊する。 ※2 腫瘍特異的T細胞輸注療法:がん患者自身のT細胞(リンパ球の一種)に、体外で人工的にがん特異性を付与し、増幅させた後に患者に投与する療法。 ※3 CAR-T療法(キメラ抗原受容体T細胞療法):腫瘍特異的T細胞輸注療法の中でも、腫瘍細胞上の膜抗原を認識する抗体の抗原結合部位とT細胞受容体の細胞内ドメインを組み合わせたキメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor; CAR)をコードする遺伝子をT細胞に導入して増幅・輸注する療法。 ※4 キムリア(R)点滴静注(一般名 チサゲンレクルユーセル:販売元 ノバルティスファーマ(株)):国内で初めて承認されたCAR-T療法で、再発・難治性のCD19陽性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)及び再発・難治性のCD19陽性のDLBCLを適応症として2019年3月に製造販売承認を取得した。 そして2021年3月23日には、対象患者数が既適応症と同規模あるとされる再発・難治性DLBCLに関する販売承認を得たことを発表した※1。同社が開発を進めてきたリツキシマブとの併用療法(BR療法)に加えて、中外製薬<4519>が開発を進めていた「ポラツズマブ ベトチン※2」とBR療法の併用療法(P-BR療法)が承認された。今回の販売承認によって対象患者数が従来の約2倍に増加することとなり、「トレアキシン(R)」の市場価値が大きく上昇したことになる。実際の販売は2021年12月期第2四半期から開始している。 ※1 未治療のDLBCLに対する標準治療は「リツキシマブ」と化学療法の併用療法が実施されているが、約40%の患者が再発している。また、再発・難治性のDLBCLに対する治療法の1つとして、自家造血幹細胞移植(ASCT: autologous stem cell transplantation)の実施が推奨されているが、その約半数はASCT実施前の救援化学療法が奏効せず、ASCTが実施できていない。さらに、年齢や合併症等でASCTの適応とならない患者も多く、標準治療はまだ確立されていない。 ※2 ポラツズマブ ベドチン:シアトルジェネティクス社のADC(Antibody-Drug Conjugate:抗体薬物複合体)技術を使用してRocheが開発した、ヒト化抗CD79bモノクローナル抗体とチューブリン重合阻害剤をリンカーで結合させた抗CD79b抗体薬物複合体。CD79bタンパクは多くのB細胞で特異的に発現しており、新たな治療法を開発する上で有望なターゲットとなっている。ポラツズマブ ベドチンは正常細胞への影響を抑えつつCD79bに結合し、送達された化学療法剤によりB細胞を破壊すると考えられている。 同社が発表した再発・難治性 DLBCLを対象としたBR併用療法による第3相臨床試験の結果によれば、完全奏効率で47.4%、奏効率全体では76.3%と良好な結果が得られている。特に、76歳以上で完全奏効率36.4%という水準は専門医にも驚きをもって受け止められた。再発・難治性DLBCLについては、現在有効な治療法がなく、救援化学療法として複数の抗がん剤(3~6種類)を組み合わせた多剤併用療法が行われているが副作用が強い。このため、副作用が少なく有効性の高い新たな治療薬や治療法の開発が望まれていた。今回、BR療法やP-BR療法が承認されたことで、これらの療法が標準療法として浸透していく可能性が高い。患者団体並びに関係学会からもBR療法を早期に使えるようにしてほしいとの要望書が出ていることから、今後は多剤併用療法を採用している医療機関でBR療法またはP-BR療法が浸透し、「トレアキシン(R)」の売上高も一段と拡大していくものと予想される。なお、BR療法とP-BR療法のどちらを選択するかは、患者の症状や遺伝子のタイプ等によって医師が判断していくことになる※。 ※BR療法では、「トレアキシン(R)」120mg/m2(体表面積)を1日1回、2日連続で投与し、19日間休薬する。これを1サイクルとして、患者の状態を見ながら最大6サイクル投与を繰り返す。P-BR療法ではこれが90mg/m2となる。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲) 《ST》
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